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【人外の詩】 ヴィジョンについて

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なあ君よ 私の生徒よ。
夢を見よう 私と共に夢を見よう。


例えば そう例えば それは戦争の夢。
血生臭い風が吹く平原で 誰かが誰かの命を奪う。
胸に赤い花が咲き乱れて 誰かの顔が苦痛に歪む。
その手は雪よりも冷たく 誰かは己の運命を知る。
どれほど月日が経とうと 誰かは元には戻れない。

例えば そう例えば それは憩いの夢。
心地よい風が吹く学園で 誰かは勉学に精を出す。
鮮やかな花が咲く温室で 誰かは友と絆を深める。
ちらほら雪が降る中庭で 誰かは己を戒め鍛える。
青白い満月が照らす塔で 誰かは誰かへ愛を囁く。

誰かが誰で 誰かが誰か 私は全てを知っている。


さあ君よ 私の生徒よ。
夢を見よう 私と共に夢を見よう。

教師の私と 夢を見よう。

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価値を失くした紙が舞い
路地裏のジャンキーの姿を隠す
詐欺師に乗っ取られた賭場は盛況で
ルーレットには髑髏が弾み
口座は輪姦された跡のよう

食えるか?食えないか?
食うか?食われるか?
要るか?要らないか?
敵か?味方か?
勝利か?敗北か?
善か?悪か?
損か?得か?
有罪か?無罪か?
寝たか?覚めたか?
大人か?子供か?
好きか?嫌いか?

今日もルーレットは容赦なく廻り
手持ちのカードを組み合わせ
残された命を必死にレイズ

今日の女神は誰と寝る?
今日の死神は誰を刈る?
乗るか?反るか?
凶か?吉か?
夢か?現か?
はいか?いいえか?

高速で回る虹から
色が抜け落ちるのを見た
眼球の虹彩を写し取り
空色に染まる灰を見た
不思議な夢の
不思議な記憶
奇妙な喪失と
奇妙な充足
その寝覚め

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「ああ、夢か…」
固く冷たいベッドから 気怠い身体を引きずり出す

あれは確か…いい夢だったような…?

そうだ 勝った 賭けに勝った夢をみた
あの人が 体を賭けたから 私は命を懸けたんだ 
あの人の 体は極上だった 天にも昇る心地だった
あの人の 体に朱が差した 命を懸けた甲斐があった

いや待った…悪い夢だったような…?

そうか 負けた 賭けに負けた夢を見た
あの人は 命を懸けていた 私も命を懸けていた 
あの人の 命は輝いていた 天にも縋る思いだった
あの人の 体に朱が差した 命を懸けても無駄だった

「まあ、夢は夢、か…」
重い戸棚に手を掛けて くたびれた制服に袖を通し

その手をあの人に掴まれて 私はベッドへ逆戻り
そうだ 忘れた 忘れてた 夢じゃないのを忘れてた
あの人 悪魔か?死神か? それとも女神か?人間か?

呆ける私の顔を見て あの人は三度 囁いた
「やあ君よ 私の生徒よ。」
「夢を見よう 私と共に夢を見よう。」

「教師の私と 夢を見よう。」

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リアル 欲しいのかいリアルなそれ
風景 食べたいのかい気体であるそれ
霧散 したいのかい成就でないそれ
青春 信じるのかい青ければ尚よい春

でも終わった祭り
後のそれ

朱い夏
青い春の次の朱い夏
朱夏

誰もが前線に立つ
生命力みなぎるピーカン混じりの暑い二楽章
後方勤務を目指して春を見送った彼ら
前線の修羅を知らず春を謳歌した君ら
生きるべき道から逸れ
愚かであれと広告する風
もうそれは風邪
誰もかも心の中に醜い太陽さ

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カーストを維持するための英雄
カーストを維持するための犠牲
学校によって昨日も社会は維持され
企業によって今日も生命は維持され
家族によって明日も構造は維持される

しかしクライシスは常に隣の森にいて
街に持ち込まれる日を待っている
おかげで
夏の魔物は暇を持て余し
言葉と画像に潜む悪意は
相も変わらず我らを突つき
リアルティーショーが孕み
三権が育てた魔王は隙をついて大暴れ

我らを魅了する力の数々
我らを維持する力の数々
その美しさと強さに深く平伏しながら
その美しさと強さを鋭く監視せよ
その発生から収束までの変容を丹念に眺めよ

この監視の技は誰が編んだのか?
カーストを維持するための教育に
初めから組み込まれていたコムニタスの夢とは?

 モーセの神は嫉妬の神
 自分以外を信じるものを許さず
 一族を一枚岩にし、荒野の旅を成し遂げた

 キリストは神の裁きによって
 死者の谷に隔離された感染者を言葉で許し生き返らせた
(その罪で磔(はりつけ)られた)

 オリンポスの神々は神託を受け入れる心を学ばせ
 アスクレピオスは外科と内科のデータを集めた

 大乗仏教の龍樹は
「仏教を知りたくば仏教以外を知れ」と説き

 諭吉は「天は人の上に人を造らない。
 しかし、人間は人の下に人を造るので、
 勉強して上を目指せ。
 自身が自立せねば自国も自立しない」と説いた

なぜ人の身でありながら天が要るのか?
なぜ生きるのにパン以外が要るのか?
なぜモーセはエジプトを出た?
なぜキリストはユダヤ教を出た?
なぜニーチェはキリスト教を出た?
なぜ小乗仏教と大乗仏教は別れた?
地獄とは何だ?
天国とは何だ?
カーストとは?
コムニタスとは?
秩序とは?
混沌とは?
西洋とは?
東洋とは?
全体性とは?
その中にあって「間違い」とは?
我らの周囲と身の内に渦巻くクライシスを
いかにして見つけ、
いかにして飼い殺し合い、
いかにして共に生きる?

(Welcome トゥ 混沌)
(子らよ 個らよ 蛹の中で競い)
(子らよ 個らよ 蝶となり戯れよ)

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まだ待て 若人
水面下を開拓するのだ 若人
シェルターの下にユートピアを築くことは
剣林弾雨を忍んできた祖先への冒涜である

街は今日も賑やかで 満ち足りてる
目を閉じれば
酸の雨と汚された大地がただひたすら広がる
その暗澹たる光景でのみ
世界と繋がった実感を得られる
地下はユートピア?
ユートピアとは何か?

すでにそこにあるものじゃないか?
夕食の野菜カレーを前にしてビールをそそぐ
この食卓のこと?

この世界は素晴らしい
あらかじめ素晴らしい
この世界はつまらない
新しい価値を産み出さなければ

愛するか?否を突きつけるか?
掲げた槍の鋭さに応じて
応える炎の熱さも変わる

何時間が過ぎ、何歩歩いたことだろう
今は熱気の中
この熱気の中でしか 澄ませない氷の島がある

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そこにはcatsらの魂がいて
あっちでゴロゴロ
こっちでフーフー
そこかしこでニャンニャンニャン
来世の出番をまっている

床の盥(さら)にはビールが波々
ひと舐めしては苦い顔
ふた舐めしても苦い顔
チビチビ・ジョビジョバ
やがて器と入れ替わる

酔ったcatsらの千鳥足
こっちへフラフラ
あっちへブラブラ
そこかしこでラブラブラブ
不意に姿をくらませる

そこは「何も有ること無しの郷(無何有郷/むかゆうきょう)」
場所ではなく
時間でもない
生命の心の在り方のような

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ああ君よ 私の生徒よ。
超えて行け 私の影を超えて行け。

教師の私を 超えて行け。

▼ 詩せる死人の酒場『バッカナール』
http://www.21styles.com/mybbs/pandemo/

ゲヘナ
2020/05/22:灰色の夢:ベレス
2020/05/29:隣り合わせの灰と教壇:男B
ベニー松山『隣り合わせの灰と青春』
2020/06/06: 色の夜明け:ベレス

himaring
2020/05/26:レインボーアッシュ:パトリムパス
2020/06/04:コムニタスウニベルシタス(communitas universitas/全人的に全対峙):オピオン
川瀬 雅也:コムニタスと開かれた文化 (小特集 間文化性と宗教)
2020/06/06:ねこたましい:少女B:夏目漱石『吾輩は猫である』

ローロー
2020/05/31:暑い季節:ハウレス
2020/06/05:己を通せば、外界は反転し背後に抜ける:サタン

TVアニメ『ドロヘドロ』ノンクレジットオープニング映像 (K)NoW_NAME
「Welcome トゥ 混沌(カオス)」

掲示板で使えるモンスターアイコンが増えるよ。