カッコいい!という話ー『十訓抄』から小式部内侍の歌人としての評判
恋多き女である和泉式部は、夫の国司としての赴任で丹後に住んでいたその頃、宮中に出仕していた娘の小式部内侍が歌合せの歌詠みに選ばれていた。
歌合せを思うと、いつも暮れに行われる紅白歌合戦を思い出してしまうが、まあ、歌をあらかじめ用意しておいて、それを提出し、当日作者が立つ横でそれぞれの詠み手がそれぞれに歌を詠ずる。それを判者がどちらの勝ちかを判断する。
もちろん御簾の中には天皇様がおられる。
その晴れがましい席に、当代きっての歌人である和泉式部の娘が召された。
それは周りも関心を持つに違いない。
あるとき、小式部内侍がいるとわかっている局の前を通ったとき、定頼中納言が揶揄いながら言った。
丹後のお母さまのもとへ遣わされた使者は帰ってきましたか?なんとも待ち遠しく心細い思いをされていることでしょうねえ・・・。
つまりは、ママに代返を?ということだろうか?
若い娘を揶揄う感じが、なんともまあ。
そしたら、局から半ば身を乗り出した小式部内侍が、定頼中納言の袖をつかみ、
大江山いくのの道の遠ければまだふみも見ず天の橋立
というなんとも、歌枕あり、二つの掛詞あり、体言止めありの素晴らしい歌を読んだので、定頼は、袖を振り切って、返歌もしないで逃げ去った、という話である。
大江山を越え、生野をを通って行く道のりがあまりに遠いので、(母のいる丹後の天の橋立には)行ってもみませんし、(母からの)文(手紙)も見ていません。
この話を昨日高2クラスの男子に語っていると、
カッコイイ話やなあ・・・。スカッとする!
と感動することしきり。
じゃあさ、もしあなたたちが、定頼卿の立場だったらどう?
と訊いたら、
カッコ悪くていたたまれない・・・。
と言っていた。
それぞれのキャラもあるので、もちろん、女性から買ったりしなそうなタイプもいれば、思い切りやりそうなタイプの子も、どっちかなあ?というタイプもいる。
そもそもDNAもものを言うだろうし、環境も環境。英才教育バッチリで、というより感性がもう、違っていても仕方がない。
かつてラジオでだったか、世界的に有名な指揮者の息子さんである俳優さんに、先輩の俳優さんかな?その方が、
○○くん、最近、俺クラシック聴きだしたんだよー!いいよー、クラシック!
とおっしゃったそうである。そして言われたご本人はなんともおっしゃらなくて、後でとんでもない思いをされた、という伝聞の話を聞いていたが、まあそういう話なのかな?(笑)
それにしても、男子たちが、カッコイイ!と感動してくれて、嬉しかったなと思う。
おかげで和歌の修辞法も十分話すことができた。
楽しかったな。
こういう話に感動できるなら、なかなかに有望有望。
もちろん大学受験についてもそうだけど、それよりなにより素敵な大人の男性になってくれそうで。
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