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【超ショートショート】(136)~孤独な地球人とスクランブル~☆ASKA『SCRAMBLE』☆

1人の男の口の中には、
不思議なポケットが存在する。

彼は、地球人でありながらも、
実は、地球外生物ではないかと、
世界中の学者が注目していた。
もちろん彼には内緒で。

アメリカに住む医療研究では、
世界的権威を持つと言われている
コマッタリン・トーマス医学博士が、
彼の生体を調査するために、
ある秘密兵器を彼のもとへ送った。

(配達員)
「お届け物です!」

(男)
「はい。ありがとうございます!」

届いた小包を開けると、
手紙があり、読んでみる男。

~~~~~
突然お手紙して申し訳ありません。

でも私はあなたのファンで、
前からこの特別なお菓子を
お届けしたかったのです。

このお菓子を食べていただくと、
とても身体が健康になります。

食べ方は、
よく口のなかであめ玉をなめるように、
噛まずに食べてください。
~~~~~

男は、講演の仕事柄、
よく声を出すから、
特に喉には気を遣っていた。

さっそく、
今日の講演でこのお菓子を試してみた。

円形の缶に黄色いあめ玉のようなドロップを
一つ取り出し、講演の第一声の前に、
ポンと口に入れた。

そして、
あめ玉なんてなめていませんの表情で、
彼は流暢な美声で講演の最後まで話した。

その間のドロップは、
あの口の中のポケットにしまってあった。

講演に参加していた
コマッタリン・トーマス医学博士が
日本に送り込んだスパイの
シルベストン・チャップリンは、
トーマス医学博士が送ったあのお菓子から
送られてくる男の生体情報を収集した。

あのドロップには、
トーマス医学博士が開発した・・・
体内の検査をこれまでは
カプセル型カメラを使い調べたが、
これだと、被験者自身が、
そのカメラを飲んだことを
知ってしまう弱点があった。
だが、博士が開発したドロップには、
そのカメラ機能をある素材を利用することで、
被験者に知られず、
また検査データもその素材の配信機能を
利用してできた。

さて、トーマス医学博士が欲しかった
男のデータによると、
やっぱり彼は地球人ではなく、
地球外生物であった。

博士の発表した論文によれば、
彼の口の中のポケットの内側に、
地球外生物を示す刻印があった。
その刻印は
ある銀河系の星にそっくりな形であった。

なぜ彼の口の中にポケットがあるのか?
ということには、
その男自身がスパイだと、
博士は書いている。

その理由は、
ドロップの脇にあった本棚のようなスペース。
そこには、無数の極小のチップが納められていた。
実際、写真も添付されていた。

そのチップは、データの種類によって、
きっちりと管理されていた。

博士は、論文の最後に、
なぜこの男が地球に来ているのか?
という仮説を話している。

おそらく・・・・・。

トーマス医学博士の論文では、
個人を特定する書き方はしなかった。
だが、この論文が世界的権威のある
科学雑誌に掲載された翌日、
すべてのその雑誌から、
博士の記事だけが消え去った。
そして、
誰もが皆、博士の研究テーマさえ、
記憶から消されてしまっていた。
当の本人であるトーマス医学博士も、
自分の研究、論文も忘れてしまっていた。

何事もないように、
日常へと地球人が過ごすなか、
地球外生物である彼だけは、
地球のデータを取り出し、
そして、変換し、
地球人が気づかないように、
行動をコントロールしていった。

彼の本当の目的は一体何なのか?

彼は講演でいつもこんな決まった話をする。

「地球人のよいところは、
お祭りが好きなことです。
地球人のわるいところは、
孤独にある人を無視することです。」

彼の星では、
もちろん喜ぶべきお祭り事は、
みんなで喜ぶのだが、
それにも増して、大騒ぎになるのが、
誰かの孤独をみつけた時。

彼が持つ口の中のポケットには、
生まれた時に、
人の感情を察知する膨大なデータを
あの本棚に並べられる。

もし、そのデータにある孤独の人をまつけると、
皆が集まり、孤独を消しにかかる。

彼はもともと火星に向かっていた。
だが彼の口の中のポケットのデータが、
地球から発せられる孤独指数の高さを察知して、
急遽地球へと飛来した。

そして彼は、
孤独にある地球人を一人一人みつけては、
彼が講演で調教した地球人を協力して、
その孤独な地球人たちを救った。

その方法は、
ただ孤独の人のもとに集まることだった。
どんなに孤独な人が拒んでも、
集まる姿を見せることが、
彼は大切だと話した。

孤独から突然解き放たれる時があると、
彼はこれまで集めたデータから気づいた。

「ある日突然、感情のブレーカーのスイッチが
入れ替わる時がある。孤独からのそのスイッチの
入れ替わる時は、とてもつまらない会話からだ。」
と。

(制作日 2021.10.17(日))
※この物語はフィクションです。

今日は、
2012年10月17日発売 アルバム
ASKA『SCRAMBLE』
発売から今日で「9周年」になります。

そのアルバムのタイトル曲『SCRAMBLE』を
ヒントにお話を書いてみました。
はっきり言って、
今私自身が孤独の淵におります(笑)

『SCRAMBLE』の歌詞が結構詩的で、
曲のカッコいいメロディーに流されていますと、
その言葉の意味までたどり着けない、
そんなふうに感じました。

少しだけ参考にした歌詞を書いておきます。

~~~~~
まるでブレーカーが落ちたみたいに
動けなくなった
あのときに なにが消えた
~~~~~
心この体もどこもすべてが
隙間だらけだった
~~~~~
孤独より寂しいだけの ひとりの今がいい
だけど今日は やけに泣きたくて
やけに・・・
~~~~~

(ニックネーム)
ねね&杏寿
(旧ひまわり&洋ちゃん)
(Instagram)
https://www.instagram.com/himawariyangchiyan/

~~~~~~

参考にした曲
ASKA
『SCRAMBLE』
作詞作曲 ASKA
編曲 ASKA・旭純
☆収録アルバム
ASKA
『SCRAMBLE』
(2012.10.17発売)


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