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卵かけご飯から考える「おいしい」の味わい方

卵かけご飯をおいしく味わう方法を考えたことがありますか?たいていの人は、次の3つを思い浮かべるのではないかしら。その1,おいしい卵を使う。その2,おいしいお醤油を使う。その3,卵かけご飯に合うお米を選ぶ。どれも正解だけど、そうだとも言い切れない。というのは…。

ポピュラーな3つの方法の共通点は、材料にこだわること。いうまでもなく重要なポイントですが、もっと本質的なことを考えてみましょうか。つまり、食べ方。例えば、生卵をほぐさずポンとご飯に乗せる?それとも、黄身と白身をしっかり溶きほぐしてからかける?これはかなりの大問題です。口の中に入ればいっしょ、なんて乱暴なまとめ方はできません。だって、そもそも口の中に入るときに、卵とご飯が均一に絡まった状態か、そうでないかでは味もテクスチャーもまったく違うから。つまり、「食べ方」でおいしさが違ってくるのです。

ある日のお昼ごはん。上でいうところのおいしいポイント3条件(卵・お醤油・お米)が揃っていたので、卵かけご飯にすることにしました。卵は養鶏場の卵直販店で買ってきた新鮮なもの。ここの卵は黄身にコクがあるだけでなく白身に旨みがあって、わたしのお気に入り。お米は佐渡の「朱鷺と暮らす郷コシヒカリ」。農薬や化学肥料を半分に減らしたお米です。お醤油は愛用の新潟県長岡市の三崎屋醸造。3アイテムとも申し分ない。

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ふと、思いました。卵もお米、どちらもとっても美味しい。ならば、それぞれじっくり味わいたい!そこで卵かけご飯にせず、卵とご飯を別々に食べることにしました。かけちゃうよりこっちの方がゼッタイ美味しい!と思って横を見たら、夫も同じことをしている。

ぷっくら盛り上がる黄身と、ぷるんと立ち上がる白身。お箸でほんの数回だけ混ぜて味も見た目もゼブラ模様になったのを、ゆっくり舌に乗せる。まったりしたコクが口の中に広がる。ああ幸せ…。お次はご飯。


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米粒がもっちりツヤツヤしているの、わかるかしら?噛みごたえのある硬さがあり、じんわりと深くて優しい甘みと旨みが広がる。目を閉じれば、美しい田んぼと青い空と海、優雅に舞う朱鷺(トキ)が見える…ような気がする。まさに心が喜ぶ美味です。
というのも、この佐渡米「朱鷺が暮らす郷」はちょっと特別な背景を持つお米なの。佐渡は住民と行政が一体となって、朱鷺と人そして文化が共生するコメ作りをしています。GIAHS(世界農業遺産)に認定されています。コレ、ものすごいことなのよー!
そんなことも知っていると、おいしさに奥行きが増すというわけ。ものすごく貴重で大変なことに、ずっと真摯に取り組んでいる人々に感謝したい。

「おいしい」の味わい方は材料の問題ではないの。その食べ物の作られ方や環境を含めた背景(ストーリー)を知って心で感じること、プラス最後はあなた自身の食べ方。おいしさは重層的な感覚によって引き出されるものなのです。

そんなわけで、かけない卵かけご飯を堪能するために、おかずは超シンプルです。筍の佃煮、焼きたらこ、ぬか漬けなど。
ごちそうさまでした。


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