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【基本的生活習慣特集5】睡眠について

今回は睡眠についてお話しします。
これまでの基本的生活習慣に関する記事はマガジンにまとめています。

みなさんは睡眠についてどれほど関心があるでしょうか?

 身体が疲れているから寝る、眠たいから寝る…など目的ではなく手段のような扱いになりやすい睡眠。お子さんの眠りの質について質問しても、いまいちピンとこない方も今まで多くいらっしゃいました。
今一度、振り返ることで眠る目的を改めて見出しましょう。

厚生労働省が

「健康づくりのための睡眠指針2014」


という睡眠対策を掲げています。より充実した睡眠についてのわかりやすい情報を提供することを目的に策定したものです。  

健康づくりのための睡眠指針 2014
~睡眠 12 箇条~

1.良い睡眠で、からだもこころも健康に。
2.適度な運動、しっかり朝食、ねむりとめざめのメリハリを。
3.良い睡眠は、生活習慣病予防につながります。
4.睡眠による休養感は、こころの健康に重要です。
5.年齢や季節に応じて、ひるまの眠気で困らない程度の睡眠を。
6.良い睡眠のためには、環境づくりも重要です。
7.若年世代は夜更かし避けて、体内時計のリズムを保つ。
8.勤労世代の疲労回復・能率アップに、毎日十分な睡眠を。
9.熟年世代は朝晩メリハリ、ひるまに適度な運動で良い睡眠。
10.眠くなってから寝床に入り、起きる時刻は遅らせない。
11.いつもと違う睡眠には、要注意。
12.眠れない、その苦しみをかかえずに、専門家に相談を。

引用:健康づくりのための睡眠指針2014(平成26年3月)

 主に大人へ向けられたものが多いことがわかると思いますが、大人自身の睡眠に関心が低いことが感じられると思います。

 日中うとうとしたり、活動量が少ない様子があると睡眠が足りないのでは?と思う方が多いと思います。
しかし近年の児童の発達についての講義に参加すると、日中の過活動が見られる子の方が睡眠が足りていないと言う先生が多くいます。実は日中の眠気事態にはさほど差は現れていないようなんです。

ではなぜ、

日中にたくさん活動しているのに夜の睡眠が足りないという生活になるのでしょうか?

考えられる要因をピックアップします。

1.感覚過敏

 なんの感覚が敏感なのかというところだけでも様々な種が考えられます。

〜 光 〜
 光を強く感じてしまうことで覚醒の時間が続いてしまうことや、交流電流をチカチカしたように感じてしまう 隙間から漏れる光が気になる など

~ 皮膚の感覚 ~
 汗をかくと感触に耐えられず起きてしまう、室温に対する敏感さ、衣類に対する不快感 など

~ 音 ~
 時計の針の音が気になる 待機中の家電の電子音 など

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 これはごく一部の例なのですが、それぞれによって感じ方や気になる点が違ったりするため”何に”対する過敏さに気づくのが難しいというのが、養育者・支援者の困り感であります。

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2.無呼吸症候群

 舌の位置が常に上顎に無い子が多い傾にあります。舌が下顎についていると、喉の奥が狭くなり無呼吸症候群になりやすくイビキをかいたりするようになります。
 また、無呼吸症候群の子の日中の落ち着きのなさが目立つと言う医師もいます。時間的にはしっかり寝ているようで、実は質は低いということもあります。寝返りが多かったりするのも眠りが浅いと見なされるようです。
 大人だけの問題と思われがちな無呼吸症候群ですが、よく注意して見てください。

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3.日の光を浴びていない

 日照時間も睡眠と非常に関係があります。冬に朝暗い中起きるのはとても大変だと感じる人も多いのではないでしょうか。光を浴びることで覚醒するように身体はできています。
 室内におる時間が多い生活環境が続くと、日中の覚醒が低く、夜の眠りの質を低下させてしまいます。そして夕方になって暗くなると昼寝(夕寝)をしてしまったりしてさらに悪循環へ。
 お昼寝は15:00までに済ませておくことがベストです。

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4.飲料に入っているカフェインを見落としがち

 家庭でもペットボトルのお茶を日常的に飲んでいる方も多いでしょう。しかし、水出しや急須で入れたお茶はがぶがぶ飲めないのに ペットボトルのお茶はなぜかたくさん飲めてしまうことありませんか。これにより多くのカフェインを摂取している可能性があります。
 また、似たようなお茶の種類でもカフェインの量は違っています。ラベルを気にして飲むなどの配慮が必要です。元気ハツラツ!でおなじみの飲料等も多く含まれているので、大人の方も気を付けて飲むと睡眠が改善されることがよくあるようです。
 妊娠期や授乳期もコーヒー3杯までと言われている方が多くいると思います。コーヒー5杯以上になるとお子さんが活発化したりするケースもあるようなので注意しましょう。

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眠りの質が改善されるとどんな利点があるか

1.イライラが軽減する
2.食欲が安定する
3.睡眠潜時(就床時刻から睡眠開始までの時間)が早くなる
4.記憶が整理され、定着しやすい
5.体温の調整や体内の修繕により身体が回復する
6.生活リズムが整う
7.生活習慣病にかかりにくくなる
8.免疫機能が高まる ・・・など

細かく上げると更に、他方面へ良い影響を広げます。
子どもにとっては成長ホルモンを分泌する大切な時間でもあります。入眠してから約3時間してからホルモンが分泌されると言われているので、頻繁に起きないことが成長の条件の1つです。

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睡眠不足による経済的損失


 精神・神経科学振興財団日本睡眠学会の共同研究によると、睡眠不足からくる生産性の低下で約3兆円、欠勤、遅刻、早退、交通事故や産業事故などで約5,000億円、医療費も加えると総計約5兆円の経済的損失があると推計されています。

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 大人ですら損失の大きい睡眠不足問題。子どものうちから気を付けたいものです。

今から出来る睡眠への支援・アドバイス

1.寝室の室温や寝具、パジャマを改めてみる
 夏はエアコンや扇風機などの調整、寝具も気温に合わせて毛布やタオルケットを選ぶなどしてみると良いでしょう。
 見落とされがちなのがパジャマです。子ども向けのパジャマは厚手のものが多いです。生地は薄く汗の吸いやすい素材、少しオーバーサイズなくらいが寝返りをしやすいです。紙おむつをしている子は布に比べて湿度もこもりやすいので、暑く感じることでしょう。子どもは大人よりも体温が高いため、汗もかきやすいです。大人よりも薄着を意識すると良いでしょう。

2.カフェインを控える
 近年では「ノンカフェイン飲料」も表示が目に入りやすくなりました。過敏になりすぎず、しかし少し気にしてみると良いでしょう。

3.日を浴びる時間を昼に意識する
 最近の保育園や幼稚園・こども園でも習い事系の取り組みが増えていることで、外遊びの無い過ごし方も増えています。冬は特に外にいても日を浴びることが難しいこともある地域もあるでしょう。暗い時間の起床時には昼白色ランプを付けて、起きるなどすると良いでしょう。
 外へ出なくとも、窓から日の光を入れるだけでも変わります。日中に太陽光を浴びてセロトニンというホルモンをつくっておくと、それを原料として十数時間後にメラトニン(睡眠ホルモン)を分泌させます。数時間かかることから午前中や昼の外活動が必要というわけです。

メラトニンについての厚生労働省の説明です↓

4.お昼寝の時間
 お昼寝は体力が発展している子どもにとっては必要なものです。夜寝られない方お昼寝はしないでほしいと思う方もいるでしょう。しかし、お昼寝をしなかったことで夕方寝てしまい夜ご飯が遅くなったり、夜寝られなくなったりする子は非常に多くいます。ご飯の準備の際に寝ているとラク…と言う方もいました。
 幼稚園だとお昼寝がないところも多いので、尚のこと夕寝してしまうケースが多いのです。バスの時間が変動すると起きる時間が変わるという方もいて、それでさらに夕寝の誘発になることもあります。
 なるべくお昼寝は15時までに済ませることです。また、年齢によっても時間を変えてみるのも良いでしょう。

0歳  ・・・2~3時間  程度
1、2歳・・・1~2時間  程度
3、4歳・・・30~1時間半 程度
5、6歳・・・30~1時間 程度

 年齢によって区切られていますが、活動内容によっても必要な睡眠量が異なるため時間の幅が広くなっています。遠足の日などは日頃より多くとる場合や、その子の体力に合わせて考慮することが最も大切です。

5.入浴はご飯前に済ませる
 夕方寝てしまう子に特におすすめなのがご飯前の入浴です。入浴は体を温めるため1度身体を覚醒させます。また、入浴することで食欲を落ち着かせる効果もあるため、食事の際に必要以上に食べてしまうことを防げるのです。入浴後2時間以降に体温が落ち着き、眠りを誘うという効果もあります。満腹+体温が下がることで眠る準備が整うというわけです。

6.寝室にスマホやタブレットを置かない
 ブルーライトについてはご存じの方も多いでしょう。リビングで使用するものというルールを定着しておくと入眠時に苦労することも減るはずです。

 お子さんの眠りに違和感を感じた際には小児科や保健師への相談は正しい判断です。支援者が気づいた際には保護者へのお知らせを欠かさずに行うことで生活習慣病の防止や日中の落ち着きのなさへの治療へ向かうこともあります。

 ご興味があれば、以前「子どもの睡眠問題」に関してセミナーに参加した際のまとめもご覧ください。

お掃除係の実習を体験した保育士さん、きちんとした指導・教育を受けられずも頑張る支援者さん…など現場に困り感を持っている方へサポートすることで、子どもたちに還元されるものがあるのではと信じています。よろしくお願いします。