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言葉の呪い

欲を言えば自分の好きな言葉だけで構成された世界に行きたいものだ。
だがそんなことが出来たらこんなにも苦しむことは無い。

なぜ私たちは、自分だけで満足し、自分だけを一生愛して行けないのだろう。

太宰治『女生徒』

言葉は呪いのように恐ろしい。
言葉は簡単に人を殺せる上に、生きていてもずっとまとわりついてくる。

でも案外その言葉を発した人は何も考えてない。
その先の人生なんて何も考えず、ただその場の感情のみで言葉を発して、簡単に他人の人生を狂わせることができる。
私の考えすぎてしまう性格もあるだろうか、昔の言葉が染み付いて離れないことがある。

現在は色んな言葉が蔓延っている。
例えば誹謗中傷。
分かりやすいがこれで死んでる人はこの世に何万といるだろう。
最近は誹謗中傷を意見と称してしまくっている輩がいるが正直あまりいけ好かない。

誹謗中傷ではないが
私は心から嫌いな単語がある。

[独特]

最近気づいたものだが本当に嫌いなんだと悟った。
自身のひねくれた性格や考えすぎる馬鹿な思考のせいだろう。
だが改めて思う。
嫌いだ。

「あなたの絵のタッチは独特だ」

世界を見つめて描く行為は楽しい。
木陰の色に合わせて顔に緑を入れたり、名も無き怪物を作ったり、ただ好きなものを描いてるだけ。

[独特]

あまりにも便利な言葉だ。

独特なファッションだね!
独特な絵だね!
独特の感性を持っているね!

皮肉とも受け取れる。
褒めるところがないからこれしか言えないんでしょう?
そんなことを言ってしまいたくなる。
ああ、ごめんなさい、絵が下手で。
何も面白くなくてごめんなさい。
そう謝ってしまった方がもはやスッキリするかもしれない。

自分より絵が上手い人なんてこの世に何億人といる。
そんなことは分かっている。それも楽しいと思えるのだから絵が好きなんだと思う。
でも、[独特]というたった一つの単語で簡単に心が蝕まわれ、少しだけ絵を嫌いになった。

私の世界から見えるものは独特なんだ。
そう思ってしまったら自身の描いたものから面白味が消えてしまい今まで私が描いていた絵から色が消えた気かした。

口に出して言ってみた。
「独特なんて言葉は嫌い」
大丈夫、ただの独り言だ。
誰もいない私だけの部屋で、そんな言葉かけないでと懇願した。
これがびっくりするほどにスッキリするのだ。
自分で答えを口に出せたかのような、妙な気持ちよさに少しだけ安心した。

私は絵が好きだ。
だが独特という言葉は嫌い。

そんな言葉に左右される私はもっと嫌い。

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