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原田マハさん 『楽園のカンヴァス』

アートは私にとって、世界中、どこででも待っていてくれる友だち。そして美術館は、『友だちの家』みたいなものだったので。
                            ー本文より。

本は、私にとって、現実世界での友だちであり、夢への案内人でもあります。

授業の合間の10分間ですら、ひたすら本の世界に潜り込んで行った中学時代。あの頃、本は本当の意味で友だちでした。いつどんな心持ちで開いても、何も言わずに受け入れてくれる。ただ、そこにある世界を広げて見せてくれる。
その変わらない優しさに救われました。

夢への案内人でもある本は私に、憧れる人々との時間をくれました。警察官やスピーチライター、パン屋さん。色々な人生を生きる本の中の人々と触れ合って、夢中になって追いかけたこともあります。

そして今回。原田マハさんの『楽園のカンヴァス』を読んで。
フリーランスになって雑念が心を埋めてしまう日々の中で、何も聞こえず何も見えない深海の底へ潜るような、そんな体験をさせてもらいました。その海底は決して怖くなく、温かいのです。

さらに、美術館のキュレーター、アートに触れる職業という夢を見させてもらいました。

昔から両親の影響で、不思議な絵が実家に置いてありました。何がいいのかわからない絵もあれば、とにかくワクワクするような絵もありました。独立した今でも、ダイニングにはお気に入りの絵が飾ってあります。

私にとってアートは身近で、好きな作品を見つけ出すことに楽しさを覚えていたのは確かです。ただこの本を読んで、その想いが一層強くなるのと同時に、もっとアーティストのことを知りたい、もっと歴史的な絵画に隠されている想いを知りたいと思いました。

これほどまでに、好奇心を掻き立てられる本は久しぶり。筆者のアートへの愛が溢れかえっている文章からは、「もっとアートを見てみて。触れてみて、楽しいから」と誘いを受けているように感じます。

ニューヨークのMoMAやパリ、世界中に広がる美術館の数々。そこにある、画家の情熱をかけた作品と向き合ってみたい。

この本を読んだらきっと誰もが持つだろうという感情を、今素直に抱いています。



言葉で、日々に小さな実りを。そんな気持ちで文章を綴っています。