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[小説]ギフト〜サッカー部〜

 この中学に帰宅部はない。みんな何かしらの部に属さなければいけない。入学してしばらくすると仮入部の申請ができる。おれは小学校の頃からサッカーをやっていたから、サッカー部に入ろうと思っていた。

 仮入部の申請を出しにいざサッカー部のグラウンドに行くと、あいつがいた。内心、チッと思いながらもどうやら仮入部の人数は30人を超えてる。あいつと関わることはそうないだろうと思った。

「ゆーうと!!」

誰かが突然後ろから飛びついてきた。首から上だけ振り向くと色黒の肌に真っ白い歯のまゆげの薄い顔が満面の笑みでこっちを見ている。

「やっぱおまえもサッカー?オレも!また一緒にやろ〜ぜー♪」

同じ小学校の同級生で、一緒にサッカーをしていた祥太だった。

「おー」

やる気のない返事をする。

「何?元気ないね?どした?」

祥太はおれの横に並び、少し顔をのぞきながら聞く。おれはチラッと祥太を見て、

「別に。なんでもねぇよ」

と、返した。ホントに何でもねぇし。ただちょっとあいつの顔見てイラついただけだ。大したことじゃない。

「あ!高橋先輩だ!」

祥太がおれの顔から目線を前に向けた瞬間、声を上げた。

「だれ?」

同じ方向を見て聞く。そこには何人かの先輩たちが固まっていて誰が誰だかわからない。

「ほら、あの一番背が高い人!あの人めっちゃうまいんだ!オレ兄貴の試合見に来た時にあの人のプレー見てマジ震えたもん!マンガみたいなんだよマジで」

祥太はエアドリブルしながらエアシュートを決めた。そこで笛が鳴った。

「仮入部希望の1年生はこっちに集まって!この用紙に名前とクラスを書いて出してください」

みんなはキレイに並んで順番に書き始めた。すると長テーブルの一番端の方がざわついた。

「あ!もしかして高橋先輩の弟?!」

仮入部の対応をしていた2年生があいつの名前を見て言った。

「そうです....」

少し気まずそうに、あいつは頭を軽く掻いて答えた。

「高橋先輩の弟ってことはサッカーうまいの?」
「休みの日弟といっしょにサッカーやるって言ってたもん、うまいんじゃない?」
「もしかして1年でレギュラー入りとか?!」
「あるんじゃねーの〜?ッフーーー!」

2年生たちは急に大盛り上がりだ。

 まただ。あいつの満更でもない顔。マジムカつく!マジなんなんだよ!と、イライラしていると隣で祥太が目を輝かせながら

「へぇ〜!高橋先輩、弟いたんだ!しかもタメ!何組なんだろ?!」

祥太は興奮が抑えられないでいた。

「...俺と同じ。1組」

ボソッと答えると、祥太は勢いよくおれの方を向き、

「マジで?!いいなぁ!」

と、おれからしたら意味のわからない「いいな」を言われた。

 なんとなくめんどくさくなりそうな雰囲気。でもとりあえずサッカー部に仮入部届は出した。


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