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僕は雨の森には行かない!


 今日は雨をイヤなものと捉えていた男の子が雨でも活動が楽しくなったお話です。大人の関わり方によって、子どもたちはこんなに変わっていくのかと痛感したエピソードです。

○ひの社会教育センターの森のようちえんって? 

 まずは、森のようちえんの説明から。
 森のようちえんは、4歳児~小学校2年生までの子どもたちが月に1回、晴れの日も雨の日も雪の日も日野・八王子を拠点にした森で遊びます。今年で11年目を迎える活動です。

○「雨の森なんてもう絶対に来ない!」

 今年の9月、彼に決定打となる出来事が。それは雨+かなーり遠くのほうで鳴る雷です。これまでに溜めてきたものが爆発。

 午前中は森が雨から守ってくれ、ご機嫌に遊んでいたのですが、お昼ご飯を食べるために頂上へ上がった頃に強い雨とはるか彼方でゴロゴロと鳴る雷が聴こえてきました。すると彼の表情も大雨に。
「今すぐにおうちに帰りたい、「090-×××-××××」に電話して。ママを呼んで」と30分泣き続け、ママが来るまで着替えもしないしご飯も食べないとストライキ。この時、既に13:00頃。

 これまで11年間活動していて、ご機嫌ナナメになったことを理由に途中でお母さんに迎えにきてもらうことはありませんでした。そして今回もまだこのときは「迎えを呼ぶ」という選択肢はありませんでした。振り返れば私たちにも教育者として、なんとか彼にこの状況と折り合いをつけて過ごせる力をつけて欲しいというエゴもあったと思います。

 その後も、あの手この手で彼にアプローチを続けました。彼はとても頭の回転がよく、言葉の理解力もとても高いので、雷の発生メカニズムや自分の位置と雷の距離を測る方法の説明をしたり、リーダーに抱っこしてもらったり、風邪を引いても大変なので面白おかしく着替えをしてみたり、…スタッフ2人かがりで30分ほど電話の機会を遠ざけたと思います。けれど彼も電話をしないとお母さんが来ないことを忘れていません。

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 時折、「ママに電話した?」と聞かれます。
 スタッフは「したけど電話に出なかった」と答えました。しかしこれは嘘。電話したフリをしただけで実はかけていませんでした。すると「電話に出るまでかけ続けて。ママも1回じゃわからないかもしれないから」と返答。そのあとも似たようなやりとりを何度かしました。
 子どもってすごいですよね。私たちの行動を見透かしていたのかもしれません。このまま嘘つきになってもそれはそれで良くないと思い、リーダーたちも考え、彼に直接電話してもらい迎えを頼んでいい、と決断しました。
 彼が2-3回トライするとママが出てくれて、迎えにきてくれることに。この時14:00少し前。お迎えは14:50なので彼の家の距離や山の上までお母さんが登ってきてくれることを考えると、結果的には他の子と変わらないお迎えの時間になりました。彼の要求を飲みつつ、でも私たちが彼にしたアプローチは正しかったのかをそのあとも考え続けました。

 これが9月の出来事です。この活動が終わったあとはお母さんと話す機会をもち、できれば雨でも森に行けるような機会が卒業するまでにできるといいねと話しました。
 そして次の雨にもしあたってしまうことがあったら、次回は私たちスタッフが何か彼にできる働きかけは無いものかと、スタッフ一同で話し合いを行いました。


○ついに雨の予報が、、

 それから半年が経過したころ、遂に彼が来る活動日の天気予報に雨マークが出現。
これは、、と思ったスタッフは活動1週間前くらいにお母さんに連絡。
「次回しっかり雨が降りそうな予報なのですが、お休みするか、それとも来てみますか?」と話を持ちかけました。お母さんも彼のことを一番に考えてくれるとっても素敵な方で、「天気予報を事前に伝えたうえで出欠の意志を確認したことがないので、子どもと相談してみます」。という話に落ち着きその日の電話は終わりました。
 


 次の日。なんとスタッフに来たメールは「雨でも行きます!」ということでした。そしてそのメールにはお母さんとお子さんとのやりとりも記載してあり、彼が怖いと思っていること、雨の森へ行きたくない理由が今度は泣いて騒ぐではなく言語化されて書いてありました。そしてそれを解決するためにはどうしたらいいかということまで相談されていました。
 お母さんからは、「落ち着いて事実を伝えて相談しました。」と書いてありました。子どもだからと大人の考え方で動かすのではなく本人の意見をしっかり尊重してくれていました。


◯迎えた当日


 この日は気温が下がるのと前日まで雪予報も出ており、活動場所を森から近隣の公園へ変更しての活動でした。環境も変わるから渋々来たり、口数が少なくなったりして登場かと思いきや、とっても元気!
 なんと半年前は着たくないと言い放ったカッパをとっても上手に着こなしていました。雨の中の遊びも申し分なく、汚れても濡れても全く気にせず遊び込んでいました。

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まるで前回が嘘のように。

 この姿にはスタッフもお母さんもにっこり。
 彼に「雨大丈夫なの?」と恐る恐る聞いてみると「うん、平気ー」とあっさりした回答。
うん、ひとつ乗り越えたね、成長したねと思えた瞬間でした。


○子どもたちが教えてくれること

 今回のエピソードは、まるで作り話かというくらいのサクセスストーリーでした。ですが、ここにたどり着いた背景にはお母さんの子どもと真摯に向き合う姿勢、子どもの様子を気にかけるスタッフ、そして何より森が大好きと思ってくれた彼の気持ちがあったからだと思います。


 時間を置けば成長する、やってるうちにできるようになる、ということも子どものうちは多いですが、誰かに背中を押してもらったり、相手の気持ちを理解するようにとことん話しあってみる過程も何かを乗り越える時には大切なのかもしれません。子どもの世界を広げてあげるのも大人の役割なのだなと思った1コマでした。


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