不等式

もったいないとある友人は言った
あれだけの仕事をしておいて実は
仕事よりも恋愛優先だったなんて
仕事優先にしていたら実際よりも
さらに大きな成果を残せたのにと

だけど私にはそれができなかった
もっと出来ることはあったと思う
出来なかったことを悔しくも思う
私が去る表向きの理由はひとつで
その裏にある別の理由は彼だった

仕事は好きで楽しかったけれども
彼のことを好きな気持ちのほうが
そのまま近くで働き続けることを
難しく苦しいものにするだろうし
私には無理だろうと覚悟していた

きっとあのまま仕事を続けたなら
もっと成長できる分野が増えたり
評価も高いままに安泰だったろう
でもあのタイミングで辞めたこと
自分では後悔はないと思っている

仕事よりも恋愛を優先したことも
私らしい選択だったと思っている
私は彼を本当に大切に感じたから
彼がぴりついた気持ちで毎日毎日
過ごすことなど望まなかったから

最初から分かっていたことだった
彼とそうなったあの頃からずっと
自分のせいで辞めるなんてことが
ないようにと彼は言っていたけど
私には言えなかったことが山ほど

彼とそうなったときにはもう既に
私の心は決まっていたのだと思う
言いにくいことがたくさん出来て
彼を嫌いになってしまわないよう
その前に去らねばならないのだと

だって私は仕事<恋愛なのだから
今も私はきっと仕事<恋愛だから