失敗作

いろんなしがらみをぶった切って
家を出ることにしたとき
子育てに失敗したと何度も言われたの
もういい大人になっていたのよ
いまさら言われてもって思ったわ

大学に行かせなければよかった
仕事をさせなければよかった
失敗したと思うことを繰り返し
泣きながら話す両親の姿を見ても
正直あまり胸は痛まなかったわ

だってそのとき気づいてしまったの

自分たちが勧めたことは何ひとつ失敗と思っていないんだと
私が自分で決めたことはことごとく失敗で
自分たちが押し付けた決定は何ひとつ失敗じゃなかったと
彼らは思っているんだと気づいてしまったの

いつまででも失敗作だと思っていればいいわ
無能だから社会に出てもどうせやっていけない
ほら見ろビョーキになって戻ってきたじゃないか
そうやって失敗作だと思っていればいいわ

あなたたちが失敗だといったその娘は
仕事ではいつもどこでも高い評価を受けて
人間関係では人当たりが良いと褒められて
自分の稼ぎで自分の暮らしを十分に保ってきたのよ

それでもビョーキになったことは
自分にとってそれほど驚きではなかったわ
要因は家を出た時点ですでに積み上げられていたから
いつなってもおかしくないとどこかで思っていたから

あなたたちはきっと考えを変えやしないから
いつまででも失敗作だと思っていればいいわ
そうやって自己憐憫に浸っていればいいのよ
あなたたちの作った失敗作を前に嘆きながら
いつまでも自己憐憫に浸っていればいいのよ