見出し画像

映画祭日記(2007年グラナダ国際短編映画祭)

※当時書いた日記をそのまま転載しています。

今回、なぜかグラナダに行った。今まで、映画祭に招待されても、ことごとく仕事を理由に断ってきたのに。2月のクレルモンフェランでさえ行かなかったのに、グラナダには行った。日本からスペインへの直行便が無いので、まずはロンドンに入ってから、そこからライアンエアという、ヨーロッパの格安航空会社でグラナダ入り。グラナダには夜着いたのだが、すぐに映画祭の会場に向かった。映画館というよりは、オペラを上映しそうな劇場という感じの場所だ。

翌日、ホテルで地元紙のインタビューを受けた。英語かスペイン語で答えなければならず、やばいと思っていたのだが、なんと、日本から名和憲進さんという監督も来ていて、さらに英語がペラペラで通訳をしていただいてしまった。インタビューでは、グラナダと言えば?とか、スペインと言えば?とか、そういう質問が多かった。後日、記事になった新聞を見てみると、どうも、僕と名和さんが日本からはるばる来た事に興味があったらしく、しかも2人の作品が対照的で、その辺の事が書いてあったようだ。

そして、「ドロン」の上映。上映の前に、前に行って紹介された。なぜか前に行くだけで、会場が盛り上がっている。「Thank you very much.I love granada.」と言って、そそくさと帰ってきた。「ドロン」はコンペ部門での上映と、お笑い系の作品を集めた特別プログラムの2つで上映され、今回は、特別プログラムの方を見た。「ドロン」は変な間とかがあるので、どうなんだろうと思っていたのだが、その変な間でもウケていた。「ドロン」は割とウケる要素をたくさん入れて、立て続けにウケるといいなあと思って作った作品なのだが、他の作品を見てみると、5秒に1回ぐらいウケている作品もあり、かなり悔しかった。まだまだだなあと。さらに、金も時間もかかった作品が多い。アメリカならまだしも、ヨーロッパの作品でもちゃんとお金をかけて作っている。それにしても、その場で観客の反応が見れるってのはやっぱりイイ。

今回、映画祭の人たちがいろんな観光地にも連れて行ってくれた。一番有名なのが、アルハンブラ宮殿というところで、かなりでかい宮殿だった。そこを観光中に、受賞を知らされた。「ここで、受賞を知らせたかったんです!」と言っていた。絶対に受賞なんかするはずがないというか、そんな事、まったく眼中に無かったので、すごくビックリして嬉しかった。「これは明日の授賞式まで内緒だから。」と言われていたのだが、映画祭関係者に会うとみんな、堂々と「コングラチュレイション!」と言ってくる。どこが内緒だよ。

その日の夜、何かにあたったのか、悶絶するほどの食あたり。じっとりと変な汗を流し、「ああ!これで授賞式も出れず、入院、あるいは緊急帰国か?」と思っていたのだが、朝になったら治った。

授賞式の日の昼にプレス発表があった。そこで、2つの作品がグランプリを争い、「ドロン」はコメディで、もう一つはシリアスなドラマで、審査員の見解としては、コメディの方が作るのが難しい、ということで、「ドロン」がグランプリになったと言っていた。その後、海外からのゲストや受賞者でランチパーティみたいなのになったのだが、肉をガッツリ食べる系の店だったので、無理をしないように、ほとんど食べなかった。昨日の食あたりでの悶絶がまだ怖い。ライフワークとして「ガッツリ肉を食べる!」を実践するほど肉が好きなのに、食べる事が出来ず、ムチャクチャ悔しかった。

授賞式の前に、地元のテレビ局の番組に少し出た。立ったままの簡単なインタビュー。授賞式では2人のコメディアンが、サーカスの設定でコントをしている。そのコントの流れの中に、うまく授賞式が組み込まれている。だから、堅苦しい雰囲気や、厳かな雰囲気ではなく、すごくエンターテイメントが意識された授賞式だ。とはいえ、オペラをやるような劇場なので軽い雰囲気でもない。一番最後にBest International Short Filmが発表され、壇上に行き、なんと!グラナダ市長から贈呈された。まともにコメントを考えてなかったのだが、「こんな素晴らしい賞をいただけるとは思っていなかったので、英語もスペイン語も勉強せずに来てしまい、2人も介さないとコメントが伝わりません。そして、まさか受賞すると思ってなかったので、ジャージで来てしまい、こんな事になってしまいました。次回はフォーマルな衣装を持って参加したいと思います。ありがとうございました。」と完璧な日本語でスピーチした。

授賞式が終わり、そのまま舞台ではコンサートが始まり、その後、今度はディナー行くと言われ、でかい観光バスにみんなで乗り、近くの城みたいな建物に行き、立食パーティ。立食パーティにはボランティアの学生なんかも参加していて、いかにもスペインって感じの陽気なパーティだった。100人ぐらいの規模。

今回は、まさか受賞するとは思ってなく、単純に、たまには行ってみるかって感じで行ったので、受賞はホントにビックリした。そして、受賞して思った事は、映画祭の上映が決まったらなるべく行かないと映画祭の人たちに申し訳ないなあと思ったし、ホントにいい出会いが山のようにある。こういういい体験をしてしまうと、映画祭に行きたいという理由で作品を作りたくなるし、映画祭が病みつきになるのだ!

サポートして頂けたら、更新頻度が上がる気がしておりますが、読んで頂けるだけで嬉しいです!