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マメ

平魚泳
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※試聴版。オリジナル版(04:21)は購入後に視聴可能。

この音源は、iPhoneで簡易的に録音したものです。
スタジオ録音のものはどうぞこちらから
https://note.com/hirasakana/n/n0d05e40d1706
(2021.12月に加筆)

「マメ」
この言葉は千葉の一部の地域でだけに共通した言葉みたい。
全国的には「オミソ」とかいう言葉に相当するみたいだけど、
「オミソ」にはちょっと差別意識を感じるな。
「マメ」には無邪気さを感じる。

どういう時に使うかというと、
小学生のとき、おにごっこなどをした時に
「おまえの弟は、まだちっちゃいからマメね」と言って
弟はオニにタッチされてもオニになることを免責される。という。

なんとなく、マメは特権だったように感じていたが、
じつはよく考えると仲間に入れてもらえてないのだった。

にいちゃん達も、弟たちも、幼さゆえ、このカラクリを利用することなく
無邪気に遊んだものだった。



そして、この「マメ」って曲を作ることが
音楽を始めた意味であり、音楽を続ける意味なのだと。
2年ほど前に初心を思い出したのです。



中学1年生の2学期、
思春期の入り口に差しかかる、子どもと大人が入り交じる季節。
当時、僕はいじめられっ子でした。
と言っても「どちらかというと」というくらいで。
田舎の学校だったから。みんな幼かったから。

身体の小さな僕は、同級生よりさらに幼く、
同級生がみんなお兄さんみたいな感覚だったんだと思う。
いたずら、ちょっかいを出しては捕まり、プロレス技をかけられる
みたいな。
そんなコミュニケーション。ガキな男子よねぇ〜

そして同級生に、同じようないじられキャラのK君がいました。

K君のことは好きだったんです。あたりが柔らかくて。
だからいじりやすくて。

僕はその日、K君とコミュニケーションをとっていました。
彼の上履きを取って、逃げていたんです。

通常の同級生だったら、すぐに僕は捕まって、
プロレス技をかけられる。
そんなイジメの被害者には簡単になれていたのですが、
K君は、なんと僕に追いつけなかったんです。

同級生はみんな大きかったので、
僕は「手加減をする」なんてことを考えることを知りませんでした。

K君が泣き出してしまい、僕はうろたえました。
イジメの被害者になることは想定していても
加害者になるなんて日が来るとは想ってもいませんでした。

とぼとぼと、二人は並んで帰りました。

こういう時にどうすればいいんだろう?
あぁ、こういうときにはこう言うって教わったぞ!
というくらい台本棒読みなかんじで
「ごめんね」
と言いました。

そうしたらK君、また僕の肩にすがりついて泣き出してしまったんです。


家に帰りました。
部屋に戻りました。

今日のできごとは何だったんだろう?

悪いことをしたのかな?

善いことをしたのかな?



当時の僕は、とくに音楽には興味なかった。
大人びた同級生がCDなるものを聴いて
TMネットワーク、ボウイ、ブルーハーツが流行っていた。

真似して聴いてみた。
映像も無く、聴いているだけなんて、
視線はどこにやったらいいんだろう?
マンガやアニメの方が本当は面白かった。

そんな幼い僕が、今日の不思議な体験を反芻しながら
テレビの主題歌になっているブルーハーツのアルバムをかけていた。

10曲目の「青空」という曲が流れてきて、

・・・涙が流れたかどうかは確かじゃない。
とにかく僕は幼かったから。

感動した。

感動というものは
こういうものだったんだ。

音楽って、こんなチカラがあるんだ。

〜ブラウン管の向こう側
カッコつけた騎兵隊が
インディアンを打ち倒した
ピカピカに光った銃で
出来れば僕の憂鬱を
打ち倒してくれればよかったのに〜

いい詩だ。
いいメロディだ。
今日の僕にピッタリだ。

ピッタリだ?
あれ?

何か足りない。

今日の僕の出来事と
近いような、遠いような。

痒いところを掻ききれないような。


僕は僕の「青空」を描かなければならない。
描きたい。
掻きたい。


そんな想いで、大学ノートに言葉を綴り始め、
親からギターを買ってもらったりしました。

安っぽい「青空」「青春」は描けても、
なかなかそんな簡単に詩は出来ませんでした。

ハタチを過ぎた頃、ポロっとこの「マメ」は生まれました。

歌っているうちに、あの時に創りたかった詩はこれだ!
と気がつきました。

ロックバンドでこの曲を数年は歌っていたけど、
ギターをやめて、ウクレレを弾くようになってからは20年近く、
この曲を忘れていました。

2年くらい前に「マメ」をウクレレで思い出し、弾いてみて、
想い出しました。



いろんな音楽の在り方があります。
いろんな表現のやり方があって、味わい方があります。
いろんな打ち出し方を模索しています。
いろんな技術を身につけてきました。
向き不向きがあることもわかってます。

でも、この「マメ」が歌えることを
見失わないで、ずっと音楽を演り続けたいと思っています。

******************

マメ

ぽっかりと空いた空の穴に
気をとられていたんだ
あの信号が赤に変わる前に
渡らなくちゃ

無数の足あとを残した
雪の上をとぼとぼ
誰ひとりいない広場
いったいみんなどこへ行ったの?

本当は泣き出してもよかったんだ
それでも平気な顔して歩いた
君に追いつきたかった
君にほめられたかったよ


誰ひとり僕に気付かなかった
それでも隣で笑って見てた
君は少し歩くのが早いね

あの信号が変わる前に
君に置いて行かれないように
僕は 僕はずっと頑張っていたんだよ

本当は泣き出してもよかったんだ
それでも平気な顔して歩いた
君に追いつきたかった
君にほめられたかったよ
君に覚えてほしかった
君と一緒にいたかった

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