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資料(Esoteric & punk)

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主に(ポスト)パンク、ヨーロッパ的秘教音楽。忍冬資料室 https://atochietebura.com/DATA/esotericindex.html の転載。
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#電子音楽

Music Is Myth : The Incredible String BandとBoards Of Canada

Music Is Myth : The Incredible String BandとBoards Of Canada

来月発行予定の『MUSIC + GHOST』には、The Incredible String Bandによって分かれた二つの英国的ノスタルジアについて記述している。一つは将来のネオフォーク運動の呼び水となったCurrent 93のフォーク・ミュージック転向。もう一つがBoards of Canadaである。文章が長くなったせいで、当初の予定よりもチャプターを一つ増やすことにした。
今回は当該の文章

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ブリティッシュ・アヴァンギャルド・ミューザック①

ブリティッシュ・アヴァンギャルド・ミューザック①

https://note.com/embed/notes/n2abbc42d2ff

Ghost Boxのカタログやレーベルの周辺にいるアーティスト(たとえば「ビクトリア朝時代のゲーム・ミュージック」をシミュレートするMoon Wiring Club)が英国以外から生まれることは考えにくい。そこにはマーガレット・サッチャーが推し進めた新自由主義化の過程で失われた古き英国の風景があるからだ。頭の中に

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Ghost Box的憑在論・Radiophonic Workshopから英国地下音楽まで

Ghost Box的憑在論・Radiophonic Workshopから英国地下音楽まで

マーク・フィッシャーが2014年に上梓した『わが人生の幽霊たち――うつ病、憑在論、失われた未来』によって、憑在論(Hauntology)の名は音楽ジャーナリズム内に広く伝播した、という前提で話を進める。憑在論とはジャック・デリダが提唱した概念で、大雑把に言えば「すでにないもの」と「いまだ起こっていないもの」、過去と未来という不在のつがいが、現在に幽霊のような普遍性を放つ状態を説明したものである。フ

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Michael Cashmoreの帰還と変身

Michael Cashmoreの帰還と変身

 マイケル・キャシュモアが自らについて話す機会はそう多くない。30年以上のキャリアにもかかわらず、彼が単独でステージに立つようになったのはここ3年のことである。2010年代前半から突然身を潜めた彼が再び世に姿を現したのが2017年。かつてのマイケル・キャシュモアを知る人々はその変化に少なからず驚いたことだろう。讃美歌を書くようになったニック・ドレイクとでも形容したくなる男が突如として電子音楽に開眼

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