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順子の思い出1⃣

私が小学校を卒業するころまでの、不倫する前の順子の思い出を列記する。

原風景、最古の記憶は「ママは大黒ふ頭で身投げします」~死ぬ死ぬ詐欺は続くよどこまでも~


順子と兄

「死ねばいいんでしょう」「死んで償うよ」。
73歳になった母順子の口癖だ。自分が責められると死ぬと周囲を脅す。

私が3歳頃、兄は6歳頃、母は27歳、父は28歳だった。
夜の大黒ふ頭で母は身投げすると騒いでいた。兄は号泣していた。父は煙草を吸っていた。私は非日常を笑っていた記憶がある。それが私の最古の記憶だ。

母は「死んでやる」と騒いでいた。

毎晩スナック通います、毎晩泥酔劇場

順子と私、夜ごとのサロマの時期

昭和50年代、横浜市の鶴見区本町通りには「サロマ」というスナックがあった。20代の順子は夜な夜なそこへ通った。朝4時ごろ泥酔して帰宅する。夜中に起きて寝床に母がいなくて泣きじゃくった記憶がある。心細くて怖い夜を幾度となく過ごした。夜な夜な泥酔劇場は順子がくも膜下出血で倒れる48歳まで続いた。

男の子の恰好をした生粋の女の子

男の子のように育てる

私は18歳まで男の子によく間違えられた。順子は「お前はボーイッシュな格好がよく似合う。ピンクや赤は似合わない。髪の毛もショートカットしか似合わない」と呪文のように言い続け、私は自分でお金を稼ぐようになるまで女性っぽい衣服や髪型をしたことが一切なかった。かわいい女の子らしい洋服をいくら母に望んでも、常に「似合わない」と却下された。叔母や兄のお下がりを着て育った。髪の毛は常にショートカットだった。やっと結んでくれてちょんまでだった。「ちょんまげだけは似合うの」と母は言ったものだ。

毒親あるあるか。手もかけない、お金もかけない子育てだった。

地味な色の洋服、モンチッチカット

お下がり、お前はモンチッチカットよ

順子には姉がいる。その姉が会うたびにブランド物の華やかなワンピースを買ってくれた記憶がある。
「順子はなんで、マルコちゃんに地味な洋服ばかり買っているんだろう。おばちゃんが可愛いのを買ってあげるからね」小学6年生の時、そう話していた伯母の真意が今になってよくわかる。

毒親、あるあるなんだ。娘は地味で、あくまでも花は順子だと。
大人になると順子は娘の恋路や結婚をよく邪魔するようになる。
毒親って、本当にやばいぜ。

はじめてのおつかい

3歳くらいからセブンスターを毎日買いに行かされていた。豆腐や肉もよく買いに行った。よく母親の言いつけを守るいい子だった。パシリをしていたんだ。

ママ友の秘密は何でも娘に教えちゃう

私には幼馴染の友達みみがいた。みみは4人兄弟だ。みみの母親はやや。ややと順子はママ友だった。70代になった今でもややは手作り味噌を順子に贈ってくれる。いいママ友だ。

ややは10代のころ友達をかばって少年院にいたことがある、ややは夫が避妊しないから何度も堕胎経験がある、堕胎をしては順子のところに寄り号泣する。号泣して5時前にはママチャリで自宅に戻り、何事もなかったかのように舅、姑、夫、4人の子供たち(+時には私の分)の夜ご飯を作ったのだろう。ややの料理の腕前は天下一品だった。家庭料理の味を知らない私は時折ややの料理で涙を流したものだった。あまりにも美味しく料理するから、びっくりして涙を流したものだった。ややの夫は不倫もした。不倫相手の女にまで料理を振る舞うややだった。

そういうよその家の事情を絵本でも読み聞かせするかのように、順子はよく聞かせてくれた。小学生の時点であそこのお家はお父さんが不倫、あそこのお家はお母さんがパチンコ破産って順子は無邪気に教えてくれた。

友達のみみちゃんはそんな事情を一切知らない。40代になっても「うちは両親が仲がいいから」って。ややの我慢をみみちゃんは知らない。私は知っている。

姑は障害者よばわり、でも姑のお金は順子のものよ♬

父方の祖母八重子は私の生涯で最も信頼に値いする素敵な女性だった。横浜市鶴見区本町にひっそりと可憐に咲いた一厘の花だった。一女性として見習う事しかないような女性だった。

八重子は幼い頃の高熱で片耳の鼓膜が破れており難聴だった。難聴であることが余計に八重子を慎ましく賢く厳かな女性にしたのではないかと思っている。八重子は無駄な話は一切しなかった。生涯沈黙は金を貫いた。

そんな姑八重子の難聴を順子は「耳が聞こえない障害者だから、おしゃべりもできない。だから子供たちがみんな変。」とずっと言っていた。

最近、八重子が残した遺産を嫁の順子がペロッと使い込みしている事実が発覚した。半年で120万円ほど使いこんでいた。他にも4社くらいのサラ金業者から借金もしていた。その残務処理を私が順子とした。

残念ながら、順子はお金の計算ができない浪費家だ。

順子、この救いようのないもの。

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