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女の恋は上書き保存、男の恋は名前を付けて保存 49

 翌週理佐は、久しぶりに例のボランティアへ出かけた、前回来た時感じたように、子供の数が以前より多くなっていた。
部屋に入ると、いつもの女子中学生たちが集まって、おしゃべりをしている。一人の子が理佐を見つけると、椅子をから立ち上がり、こんにちは、と挨拶をする、それにつられてほかの子たちも一斉に挨拶をする。
理佐は、テーブルに資料を置くと、彼女たちに、前回のテキストの感想を聞く、一人の子が目を輝かせて面白かったというと、理佐は満足げに微笑んで、彼女たちに以前作成していた、次の課題をわたす。

 理佐が少し中座して、廊下へ出ると、ちょうど友里恵が事務室から出てくるところだった、友里恵は理佐をみつけると、挨拶もなしにいきなり
「川田君、先週でやめたよ」と声をかけた。
理佐は、ああ、そうなのと割と冷静に答えると、友里恵は理佐がもっと驚くと思っていたのか、理佐の冷静な反応に意外そうな目をして、
 「留学が決まったみたいで、準備があるのでやめさせてほしいって言ってきたのよ、彼結構子供たちに人気あったし、残念だわ」
友里恵はあえて、理佐と優弥の関係を触れずにそう話した。理佐は先週優弥と会った時には、ここのボランティアの話題はでなかったけれども、凡そ予想はついていた。


理佐は、廊下の長椅子に腰かけて、若い人はどんどん海外へ出ていくべきだわと返事をする。友里恵も横へ腰かけ、理佐の方を向くと、
「あなた、昔から考えが変わらないわよね・・・・・、学生のころからそんな考えだったものね・・・」
と、理佐を見ながらそういうと、今度は少し笑って、
「・・・・・・それともう一つ、理佐が昔から変わらないことがあるわ・・」
 理佐が、えっ、なに?と言って、今度は、友里恵の方をみて聞く、
「私、覚えているんだけど、あなた、大学の時、周りの男の子達に、モテモテだったでしょう・・・・今でもやっぱり、変わらずにモテモテ、なんだね・・・・私、少し驚いたわ・・・・・・」
 理佐が、その理由を聞く間もなく、友里恵は、書類を抱えて、事務所戻っていった。


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今宵も、最後までお読みいただきありがとうございました。


次回いよいよ、最終回となります。

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忘れられない恋物語

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