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つれづれな草 ~ 『恋は雨上がりのように』

 眉月じゅんさんの『恋は雨上がりのように』という漫画があります。

 私は、「そんなタイトルの漫画があったような? なかったような?」程度でした。

 たまたまTVを点けていたとき、普段はテレビは見ないのですが……テレビは単なるインテリアと化しています……テレビアニメ版の『恋は雨上がりのように』のCMをやっていました。

 簡単にあらすじを言うと、45歳のおっさんと17歳の少女の恋愛模様という……おいおい、それ完全にダメでしょう、全おっさん連中が勘違いするでしょう、だから日本の男はロ〇コン好きと言われるんだ……と、見るつもりはありませんでした。

 が、今度は大泉洋さんと小松菜奈さんとで実写映画化されたということで(5/25から全国放映でした)、「水曜どうでしょう」からの大泉さんのファンである私も見ないわけにはいかず、しかし流石におっさんが恋愛映画を見に行くわけにもいかず、とりあえずアニメ版を見ることにしました。

 が、思っていた恋愛アニメとは違い、主人公である17歳の少女橘あきらと45歳のファミレス店長近藤正己の恋愛関係だけでなく、2人が持つ夢への諦めや親友との関わり、その周囲の人たちのそれぞれの想いが書き出された作品で、引き込まれてしまいました。

 何よりも、45歳のおっさん近藤店長が、あまりにも自分に似ているので……

 私も、近藤店長に近い年になりました。

 いえいえ、近藤店長のように女子高生にモテるわけではありませんよ。

 近藤店長は、今ではファミレスの店長をしていますが、昔は純文学の小説家を目指していました。

 その姿が、まるで自分に重なります。

 そして、舞台になっているのが、横浜や川崎……、分かる人は分かると思いますが、東急の元住吉駅周辺が良く出てきます。

 近藤店長は、そこに住んでいる設定です。

 私も、5年前までそこに10年近く住んでいました。

 元住吉駅に住吉神社、ブレーメン通り……アニメには出てきませんでしたが、川沿いが桜並木になっていて、3月中旬から道路が薄桃色に染まります。

 それだけでも充分ノスタルジックになるのですが、そこで私は前の仕事を辞め、3年近く小説家を目指して只管書きまくっていました。

 仕事もせず、6畳くらいのワンルームに籠って、只管に、只管に、デビューを目指して書き続けていました。

 それが、小説家を夢見ていた、そして自分の才能に気が付き、諦めた近藤店長と重なっているようで……

 いま掲載している小説は、ほとんどがその時に書き溜めたものです。

 いまも時々、何か書こうと思ってパソコンの前に座ったり、ときには万年筆を持って、じっと原稿を睨んだりしますが……、最近完成させた小説はありません。

 やはり自分には、物書きとしての才能なんてないのだろうと、言い聞かせ、違う仕事に打ち込んでいます。

 でも、その仕事をしていても、やはり頭には小説のことばかりで……

 そんなときに、このアニメを見たものですから、おっさんと少女の恋模様に胸をときめかせるのではなく、言葉に出来ない何かに胸が締め付けられるようで、モヤモヤした気持ちになりました。

 近藤店長は、あきらとの微妙な関係を続けるうちに、また小説を書き始めます。

 そのとき、彼はこう言います。

「守れぬ約束にまた約束を重ね、約束に苦しみ、そして約束に教えられた。ただ一つ文学に寄り添い生きると交わした自分との約束。これだけは果たしたいと思っている」

 私も、約束して、そしてその約束を破り、また約束をして……

 こうして書けなくなったいま、また約束をしようと思ってます。

 もう一度……

 まさか、そんな気持ちになる作品だとは思いませんでした。

 油断していました。

 そして、もう一度、あの町を歩いてみようかと……そうすれば、あのときの……一つのことに一生懸命だった、自分は才能があるという根拠のない自信に溢れていた、あの頃の気持ちが戻ってくるのかな………………

 今回のつれづれな草は、取り留めのない文章ですみませんでした。

 ただ、この感動というか、想いを、誰かに聞いて貰いたかったのかも……なんてね。

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