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「星宿海への道」宮本輝さん(読書感想文)(*ネタばれ注意)

星宿海(せいしゅくかい)って、
黄河の源流を意味するらしい。

いやー、素晴らしい長編だった。
宮本輝さんの、世界的視点、そして
個々の人間に対する愛のある視点。
神様より現実的で温かい。

50過ぎて、主人公、雅人は
中国の砂漠で行方不明になる。

雅人は、盲目の物乞いの
母親「せつ」のもとで
6年暮らす。
昭和30年頃の混乱期。
せつ亡きあと、雅人は瀬戸家の
養子となる。

瀬戸家の息子、紀代志は
二歳年下の弟となる。

50過ぎた雅人の子を妊娠した
千春に、雅人は女の子が
生まれたら「せつ」と名付けて
欲しいと言い残す。

星宿海のような光景の
瀬戸内の島々。
そこに旅館を立てようとする
力強い千春。

紀代志から聞いて
初めて、そこが雅人の母せつの
故郷と知る。

生まれてくる子供より
死んだ母せつを選んだ雅人。

その波乱の人生には
人に言えない母子愛が
あったのだろう。

子供が娘なら、母のせつとして
生まれ変わらそうとした
雅人、そして、千春。

雅人は行方不明のまま終わるのだけど
希望に満ちた小説だった。



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