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【まいぶっく25】こそあどの森に住むのなら ~「こそあどの森の物語」シリーズ

この森でもなければ
その森でもない
あの森でもなければ
どの森でもない

こそあどの森 こそあどの森
「こそあどの森の物語」
全12巻 
 岡田 淳 作 理論社
 発行 1994~2017年
1998年、1巻から3巻が
  国際アンデルセン賞オナーリスト に選定される。 

 
「森の中で、不思議な音・声がきこえてきた。いったいどこから?」
「大昔からやってきた少女。彼女は『いけにえ』に されるところだった。」
「夜の森で 木が光り出す。それは42年に一度の光景だ。」

本を読んだり、星をながめたりするのが好きなスキッパー、大工のギーコさんとハーブにくわしいスミレさん、もてなし好きのポットさんトマトさん、木の上の 屋根裏部屋に住んでいるトワイエさん、しょっちゅう名前が変わるふたごたち・・・。

「こそあどの森」に住む 個性豊かな人々の 「不思議」と、「どきどき・わくわく」が たくさんつまった物語。

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「緊急事態宣言に伴う 図書館閉館は、もう一度読みたかった本を 読むチャンス。」ということで、9月末から、「こそあどの森の物語」シリーズを再読した。

「1日2巻ずつ読んで、1週間もあれば 12巻全部 読めるだろう」と 思っていたが、1巻1巻味わい深いため、すぐには 次のお話に 手を伸ばせなかった。
さらに 全部読み終えてしまうのも もったいなくて、 12巻読むのに、結局2週間ぐらい かかってしまった。

1なんといってもスキッパー

12巻すべての表紙には、スキッパーが描かれている。
ひとりで暮らすことが多く、他人とはあまりかかわってこなかったスキッパー。
他人とうまくしゃべられないスキッパー。言いたいことはあるのに、言葉が出てこないのだ。

でも、送られてきた「ふしぎな木の実」の 料理法を聞くため、こそあどの森の住人たちのところに しぶしぶ出かけることになる。
1日1件ずつ、みんなの家をたずねる。事情を説明した(うまくしゃべれてはいないけど)のに、料理法はわからない。

料理法はわからなかったが、家をたずね、他の人と会うことを重ねたスキッパーに変化が。
あんなに 他人とのかかわりが苦手だったのに、みんなとすごした時間を しばしば思い出すようになってしまう。時には、「たずねて行こうか」なんて思ってしまう。

スキッパーが、世界を広げることになる記念の1巻目。

このお話で、「うーんなるほど、いいなあ。」と思ったところ。
それは、一人でいるのが好きなスキッパーが 他人とかかわることの楽しさを覚えたあとも「みんなといっしょがいいね」とだけにせずに、「みんなといっしょもいいけれど、一人で過ごすのもいいね。」という しめくくりだったところ。


4巻目(「ユメミザラの木の下」)では、「かくれんぼ」をしたことのないスキッパーが描かれる。
本で読んで、遊び方は知っている。でも、かくれんぼで かくれているときの「わくわく」が わからないという。今まで他の子と遊んだことがないのだ。
ちょっと胸が痛む場面。

その後、初めて(不思議な)子どもたちと、かくれんぼをする。
スキッパーがオニになり、みんなが かくれたときの様子。

目をかくす前は、自分をいれて八人いたのに、この林のなかで たったひとりに なってしまったように 思えました。一瞬、みんな どこかへ いってしまったんじゃないか、という気がしました。

ああ、わかるなあ、この気持ち。


そして11巻目(「水の精とふしぎなカヌー」)。初めて、(なんだかわからないものから)拒絶される経験をしたスキッパー。

「胸の中がつめたく」なり、「はしごをつかむ手も 自分の手ではないよう」に思える。

ひとり、家に帰ったスキッパーは、こそあどの森のみんななら、どうアドバイスしてくれるかを考える。

トマトさんなら きっとこういう。
「スキッパー。そういうときは、なにか食べなくちゃ」
スミレさんなら、きっとこういう。
「ハーブティーを まず 飲んでみたらどう?」

「スキッパーのなかの、みんな」に、話を聞いてもらったスキッパーは、大事なことに気づき、行動に移す。

思わず、「うーん、スキッパーえらい」と 声に出しそうになった。
今まで いろいろなことがあった こそあどの森。スキッパーは、 「こそあどの森のみんなと これだけ結びつきを強めたんだなあ」と感じた場面でもあった。


2いつまでもながめていられる その家

スキッパーの「ウニマル」
(船の上に とげとげのウニがのっているような家)

トマトさんとポットさんの「ゆわかしの家」
(そそぎ口を上にして 半分地面にうずめた ゆわかしの形の家)

ギーコさんとスミレさんの「ガラスびんの家」
(大きなガラスびんが 小さな山にうもれている家)
など、出てくる家がどれもすてき。

岡田淳さん自身が 描いていている それらの家の見取り図、きっと夢中になってしまう子ども(大人)も、多いのではないか。
当然、私もあこがれてしまっている。
 
特に、スキッパーが住むウニマルの地下の食料庫がわくわく。いつも食べ ているかんづめびんづめが びっしり入っているというその棚。実物を見てみたい。


3舞台での こそあどの森

岡田淳さんは、演劇をやっていらしたという。
2000年に、初めて岡田さんの講演会を聞いたとき、子どもたちが演じた演劇の様子を語ってくださった。
ひとつひとつのセリフを言い、状況説明をする岡田淳さん。それはもう、「講演」ではなく、「公演」で、岡田淳さんのひとり芝居を見ているようでとても引き込まれてしまった。

その際、「自分の作る作品には、演劇的な要素が 含まれているのかもしれない。だから、『作品を舞台にしたい』というお話を いただくことが 多いのかも。」
というような趣旨のことをおっしゃっていたと思う。
(なにぶん、20年以上前。記憶があやふやで、間違っていたらごめんなさい。)

昔、「森の中の海賊船」が、劇団風の子で演じられていて、「見たいなあ」と思っていた。
他にも いろいろな作品が 舞台化されているようだ。

今年、劇団四季のファミリーコンサートでは、「はじまりの樹の神話」があり、北海道公演もあった。うううう見たかったよ~.。
オンライン配信も行っていたようだが、気がついたときにはもう終わった後だった。残念。


4新しい発見がたくさん。

こそあどの森シリーズは、このnoteの記事で、「すべて読み終えているけど、あの本の世界にもう一度ひたりたい」の 仲間に分類した。

だが、読み直してみると、「私、この本、本当に読んだの?」と、全く覚えていない本多数。と言うか、自信を持って「読んだ。覚えている。」と言えたのは、12冊中の4冊ぐらい。

そのため、知らなかったこと、初めて気づいたことなど 新しい発見が たくさんあった。

その1 表紙または裏表紙に「The stories of the Kosoado woods」と英語で題名が書いてあった。全く気づいていなかった。「森といえばforestだと思っていたが、woodsなんだ。」と あわててforestwoodの違いを調べた私。

その2 1巻目以外には、巻頭に登場人物紹介のページがあるのだが、毎巻変わっていた。このページだけでも楽しい。

その3 5巻「はじまりの樹の神話」で 重要な役割を果たすホタルギツネ。実は初登場はこんなに早かったのね。

その4 姿を現すことはなかったバーバさん。(スキッパーと一緒に暮らしているが、研究のため留守のことが多い。)
でも、その手紙は、お話の節目節目で、重要な役割を果たす。

もしかしたら、1巻目の手紙には、家に閉じこもりがちなスキッパーに、他の人とふれあいをもってほしいという願いも あったのかなあ。
あっ!バーバさんが女性だったとは 今回初めて気づいたことの1つ。


※12巻のちょこっとあらすじ

1 ふしぎな木の実の料理法
ある日届いた「不思議な」木の実。この料理法を知るため、スキッパーはしぶしぶ 森のみんなを訪ねます。

2 まよなかの魔女の秘密
行方不明になったポットさん。森のみんなは 捜索をはじめます。スキッパーの前にあらわれた 1羽のふくろうの 思いもかけない秘密とは?

3 森のなかの海賊船
不思議で、悲しい 海賊フラフラの 物語。そのフラフラが かくした宝物が こそあどの森に??

4 ユメミザクラの木の下で
森の中で出会った 新しい友達。でも、遊んでいるうちに いなくなってしまった。いったいあの子たちは、だれ?

5 ミュージカルスパイス
森のみんなが、おどったり、歌ったり。ついに 無口なスキッパーまでもが・・・。  

6 はじまりの樹の神話

ホタルギツネによばれて、森に出たスキッパー。そこで見たものは?
現在と大昔をつなぐのは、大きな樹。 
                             
7 だれかののぞむもの
フーという生き物は 人の心の中を読んで、その人が会いたい人に姿を変えてしまう。それは、フーのためにはならない と こそあどの森のみんなは、なんとかフーを元のフーに戻そうとする。

8 ぬまばあさんのうた
「こどもがくると でてくるぞ つかまえられたら さあたいへん」
と 歌われる ぬまばあさん。スキッパーとふたごは 夕日のかけらをさがしに行き、そこで ぬまばあさんに 会ってしまう。絶体絶命のピンチ。でもスキッパーだけは なぜか・・、

9 あかりの木の魔法
こそあどの森に 腹話術ができる 学者イツカが やってきた。
その話術の巧みさで、すっかり こそあどの森の人気者になってしまう。
しかし、イツカは実は・・・。

10 霧の森となぞの声

ある日、森の中で 不思議な音と声を聞いた スキッパー。その声を追って、穴の中におちてしまう。さらに 子どもたちを助けてきた大人たちも 次々と穴の中におちてしまう。

11 水の精とふしぎなカヌー
<トリオトコのワルツ>
怪我をして スミレさんの家で暮らしている トワイエさん。留守の家に ものを取りに行ってあげる スキッパー。でも、だれもいないはずの家に 何か いるような気がしてしょうがない。実は、その正体は・・・。
<ふしぎなカヌー>
ある日、豆のさやのような 小さなカヌーが 流れてきた。上流に小さな人が住んでいるかもと思い、探検にいくスキッパーとふたご。苦労してたどり着いた場所には・・・。

12 水の森の秘密
大雨が降ったわけじゃないのに、こそあどの森が 水浸しになってしまう。みんなの家も 半分くらいは水につかる。ふたごとスキッパーは 原因をさぐりにボートで湖に行く。その原因は・・・・。


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2017年、シリーズ完結記念として、理論社で

「もし、“こそあどの森”に住むとしたら、どんな家に住みたい?~イメージ画募集企画」

というのをやっていた。
入賞作品を見ると、楽しそうな家ばかり。


「こそあどの森に 住むとしたら」かあ・・・・私なら・・・う~ん・・やっぱり 本がいっぱいの家 かなあ。

外観は大きな木で、木の中にたくさんの本が置いてあって、くつろいで本を読める場所や、ちょっとコーヒーを飲める場所があって・・・・・などと、想像できることも このシリーズの楽しさのひとつ。
(全く絵心がない私なので、その様子を絵で表すことができないのが残念。)

このインタビューの中で、岡田淳さんが おっしゃってること。

いつか 誰かが この地図を元に「こそあどの森パーク」を作ってくれないかな…って(笑)。

大賛成!!!!!


読んでいただき ありがとうございました。