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データでみる前半戦①サガン鳥栖(2022)

試合データでみる、サガン鳥栖の前半戦まとめ

  2月19日(土)に開幕した2022年の J1 リーグは、6月18日(土)で第17節を迎え、前半戦が終了しました。ここまでのサガン鳥栖の戦績は 5 勝 3 敗 9 分けの勝点 24 です。17試合のうち、勝点を取れなかった試合が 3 試合という結果は、上々の前半戦であるのではないでしょうか。これまで、試合後に上がってくる試合スタッツを SNS 等でご紹介してきましたが、これらデータをまとめ、前半戦の総括をしてみたいと思います。

使用データ

  データは SPAIA 様、Football LAB 様の HP から引用させていただきました。また、統計は対応のない2標本t検定で行い、有意水準5%の両側検定で実施しました。

前半戦の結果

1)ボール支配率とパス数

図1 勝負別ボール支配率
図2 勝負別パス数

  ボール支配率は、勝ち試合で 47.78 %、引き分けの試合で 54.09 %、負け試合が 61.53 %でした。勝ち試合のボール支配率に比べて負け試合のボール支配率が有意に高いことが認められます( $${P}$$ = 0.0123 )。勝つときにボール支配率は低くなり、負けるときに高くなるということは、統計的に正しいことになります。

  パス数は、勝ち試合で 444.60 回/試合、引き分けの試合で 529.00 回/試合、負け試合が 665.67 回/試合でした。こちらも勝ち試合のパス回数に比べて負け試合のパス回数は有意に多くなっていることが認められます( $${P}$$ = 0.0154 )。勝つときにパス回数が少なく、負けるときにパス数が多くなることは統計学的に正しいといえます。

2)シュート数と枠内シュート数

図3 勝負別シュート数
図4 勝負別枠内シュート数

  シュート数は、勝ち試合で 12.40 回/試合、引き分けの試合で 9.56回/試合、負け試合が 9.33 回/試合でした。バラつきがあるため有意差はでていませんが、勝つときにシュート数が多くなってます。

  枠内シュート数は、勝ち試合で 4.40 回/試合、引き分けの試合で 2.44 回/試合、負け試合が 2.67 回/試合でした。こちらも有意差はありませんが、勝つときの枠内シュート数は、引き分けや負けのときの約 2 倍の数値がでています。

3)ドリブル数とドリブル成功率

図5 勝負別ドリブル数
図6 勝負別ドリブル成功率

  ドリブル数は、勝ち試合で 7.60 回/試合、引き分けの試合で 9.56 回/試合、負け試合が 10.67 回/試合でした。有意差はありませんでしたが、勝つときにドリブル数がしくなく、逆に負けるときにドリブルが多くなります。

  ドリブル成功率は、勝ち試合で 51.42 %、引き分けの試合で 35.58 %、負け試合が 41.67 %でした。引き分けのときのドリブルは成功率が低くなりました。一方で勝つときには、ドリブルは 2 回に 1 回は成功してることになります。

4)タックル数、タックル成功率、クリア数

図7 勝負別タックル数
図8 勝負別タックル成功率
図9 勝負別クリア数

  タックル数は、勝ち試合で 18.20 回/試合、引き分けの試合で 21.00 回/試合、負け試合が 17.67 回/試合でした。有意差はありませんでした。

  タックル成功率は、勝ち試合で 59.78 %、引き分けの試合で 66.31 %、負け試合が 57.00 %でした。こちらも有意差はありません。

  クリア数は、勝ち試合で 22.80 回/試合、引き分けの試合で 19.22 回/試合、負け試合が 12.33 回/試合でした。有意差はつかなかったものの、勝つときにクリア数は多く、負けるときに少なくなる傾向があります。

5)セーブ数

図10 勝負別セーブ数

  セーブ数は、勝ち試合で 1.40 回/試合、引き分けの試合で 2.11 /回、負け試合が 2.00 回/試合でした。有意差はありませんが、勝つときにセーブ数が少なくなってます。

6)オフサイド数、フリーキック数、コーナーキック数

図11 勝負別オフサイド数
図12 勝負別フリーキック数
図13 勝負別コーナーキック数

  オフサイド数は、勝ち試合で 0.80 回/試合、引き分けの試合で 1.00 回/試合、負け試合が 2.00 回/試合でした。負け試合全てで 2 回( 3 試合)となりました。勝ち試合と引き分けの試合ではバラつきが多いものの、勝つときにオフサイド数は少なく、負けるときにオフサイド数は多くなります。

  フリーキック数は、勝ち試合で 12.00 回/試合、引き分けの試合で 11.00 回/試合、負け試合が 13.67 回/試合でした。有意差はありません。

  コーナーキック数は、勝ち試合で 5.40 回/試合、引き分けの試合で 5.44 回/試合、負けの試合で 5.00 回/試合でした。有意差はありません。負けるときにコーナーキック数は少なくなります。

7)ファール数、警告(イエローカード)数

図14 勝負別ファール数
図15 勝負別警告(イエローカード)数

  ファール数は、勝ち試合で 16.00 回/試合、引き分けの試合で 14.44 回/試合、負け試合が 10.00 回/試合でした。勝ち試合のファール数に比べて負け試合のファール数で有意差が出ています( $${P}$$= 0.0017 )。勝つときにファール数が多く、負けるときにファール数が少なくなることは、統計学的に正しいことになります。

  警告(イエローカード)数は、勝ち試合で 1.20 回/試合、引き分けの試合で 0.89 回/試合、負け試合が 0.67 回/試合でした。こちらは、ファール数とは異なり、有意差はありませんでした。しかし、傾向はファールと同じように勝つときに警告数は多くなり、負けるときに警告数は少なくなります。

考察①

  通常、速報として上がってくる対戦スタッツは、これら15項目に加えて走行距離、スプリント数の 2 項目となってくるかと思いますが一旦、ここまでのデータからの考察をしていきたいと思います。

  ボール支配率は、勝ち試合では 50 %を下回り、負け試合では 60 %を超えています。勝ち試合のボール支配率に比較して負け試合のボール支配率は有意に高いことが認められました。ここで $${P}$$ 値の説明をしますと、 $${P}$$ 値とは統計学でいう「仮説通りにならない確率」のことです。$${P}$$ 値が【 0.05 】 未満であれば、想定した仮説が正しいということになります。上記で示した通り、この時の $${P}$$ 値は 0.012 でしたので、勝ち試合に比べて負け試合のボール試合率は「異なる」という仮説が成立することになります。ボール支配率にみられる傾向として、負けているときはボールを保持して攻撃時間を増やそうとする意図が強く表れていると考えていいでしょう。もちろん、相手は勝っている状況となるので、守備に重心を置いて戦っている、ということもこの傾向に大きな影響を与えている可能性は考えられます。 

  パス数はボール支配率と同様に、勝ち試合では約 400 回台/試合ですが、負け試合では約 600 回台/試合となり、その差は 200 回以上となっています。勝ち試合のパス数に比較して負け試合のパス数は有意に多く、これはボール支配と非常に似た傾向をしています。そこで、ボール支配率とパス数の相関性をみると、相関係数 R$${^2}$$ は  0.996 と非常に高い相関性があることがわかります。サッカーとはパスをつないでゴールをするスポーツですので、ボールを保持すればそのほとんどの時間がパスに費やされるのは想像できます。

  ボールを保持し、パスも多いにもかかわらず負けているのは、どうしてでしょうか。上記のように外的理由として相手の守備がゴール前を固めて強固なディフェンスをした、引いて守られていたなどの要因も考えられますが、ここでは内的理由に絞ることにします。まず、試合に勝つためには「得点」が必要です。得点は周知のように「シュート」を打たないといけません。さらに「枠内にシュート」を打ててないと得点の機会はかなり低くなります。

  そこでシュート数をみると、勝ち試合では約 12 本/試合のシュートを打っていますが、引き分けの試合と負けの試合ではいずれも約 9 本/試合となってしまい、勝ち試合のときの 6割とシュート数は減ってるのがわかります。これらは、ボール支配率やパス数の傾向とは逆となっています。

  また、枠内シュート数も勝ち試合では約 4 本/試合ですが、引き分けの試合や負け試合では約 2 本/試合で、勝ち試合の枠内シュート数の半分しか、引き分けの試合や負けの試合では枠内シュートが打てていないことになります。枠内シュート率を計算すると、勝ち試合で 35.48 %、引き分けの試合で 25.52 %、負け試合が 28.61 %です。引き分けの試合や負け試合では3割を切ってしまっています。

  後半戦に向けて「勝ち試合」を増やしていくためには、シュート数や枠内シュート数を増やすことは『必須事項』と言っていいでしょう。相手の守備もあっての上ですから、かなりのリスクを取ってでも積極的にシュートを打っていく姿勢が強く求められると思っています。

  ドリブル数は、鳥栖が戦術手的にパスを多用するチームであるため、試合中ではあまり多用されることがないですが、ボール支配率と同様に勝つときはドリブル数は少なく、負けるときに多い傾向がありました。勝っているときはパス中心に、負けているときは攻撃のバリエーションを増やすためにドリブルも多くなると考えられます。

  一方でドリブル成功率では、勝ち試合で 50 %以上となりますが、引き分けの試合では 40 %を下回ってしまいます。負け試合ではややもち返し 41 %まで上昇します。前述しましたが、負け試合では交代選手にドリブラーを投入して攻撃のバリエーションを増やす意図が、ここに反映されるのかもしれません。

  タックル数、タックル成功率はいずれも引き分けの試合で高くなりました。有意差はないのですが、ボール保持率とクリア数をから考えると、勝ち試合では守備時間が多くなるためクリアが多くなる。対して、負け試合はボールを持って攻めているのでクリア数は少なくする。そして、引き分けの試合ではそのバランスが対戦相手と拮抗するため、リスクを冒してボール奪取する傾向が強くなるからではないかと推察します。

  セーブ数は、勝ち試合でやや少ないですが、セーブ数自体がもともと少ないので、これに関してはなんともいえません。ただ引き分けの試合や負け試合では多くなるということは想像ができます。個人的にGKに関しては得意分野ではないため、GK出身者からのご意見をいただけると嬉しいです。

  オフサイド数、フリーキック数、コーナーキック数は、勝ち負けで影響があるということはありませんでした。ボール支配率との相関性もほぼゼロ。ただ、オフサイド数が負け試合で、勝ち試合や引き分けの試合の約2倍となるのは心情として理解はできます。また、今シーズンはセットプレーからの得点が多いことを考えると、もう少し違うアプローチでこの項目を評価する必要性があると考えます。

  ファール数は勝ちい試合で多くなり、負け試合で少なくなりました。勝ち試合のファール数に比較して負け試合のファール数は有意に少ないことが認められでいます。これはボール支配率と関連し守備の時間が長ければその分ファール数は増えていきます(負の相関性あり。R$${^2}$$ = -0.990)。

  警告(イエローカード)数はファール数と似た傾向はありますが、ファール数との比率を計算すると、勝ち試合で 7.5 %、引き分けの試合で 6.2 %、負け試合で 6.7 %であるので、ファールは、約 6~7 %の確立でイエローカードをもらう危険性があるということとなります。

さいごに

  前半戦の15項目のデータについて勝ち試合、引き分けの試合、負け試合に分け比較しました。そこから以下のことが分かりました。

 ・ ボール支配率、パス数では勝ち試合に比較して、負け試合で有意に高値になることが認められました。
 ・ドリブル数、オフサイド数などは勝ち試合より、負け試合で高値になる傾向がみられました。
 ・逆に、ファール数では勝ち試合に比較して、負け試合で有意に低値になることが認められました。
 ・シュート数、枠内シュート数、クリア数、警告(イエローカード)数などは勝ち試合より、負け試合で低値になる傾向がみられました。

 前半戦の勝ち試合ではやや大量得点の勝利もあって、データ的には偏りが多い結果であるという懸念はあります。また、これ以外の外的要素も関与していますので、考察はあくまでもデータをみたうえでの考察です。反論やご意見も歓迎しますので、SNSでコメントやDMをいただけるとありがたいです。
 
 まだ試合スタッツはデータ項目がたくさんありますので。次回『データでみる前半戦②』ではそれらのデータを紹介し、さらに深堀をしてみようと考えています。

  長い時間お付き合いいただきましてありがとうございます!!  

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