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あの駅で旅立つために

2023/2/14(水)、私は“あの駅”へ行こうと、グループホームから2時間、片道3000円かけて東京へ赴いた。

その駅は、私が3年前に『ここで旅立ちたい』と決めた駅だ。


しかし、今回の目的は『現実逃避』。死にたい気持ちもあるが、今回はあくまでも自殺が目的では無い。

私のことを誰も知らない、誰も否定も肯定も、干渉もしてこない、そんな場所に行き、独り『死』を想像したくなった。
だからあえて田舎の近場ではなく、グループホームから遠い都会へ行ったのだ。

グループホームは良い所で、職員さんはみんな優しいし楽しいけれど、『死にたい』と言えば『ダメ』と言われるし、『ODしたい』と言っても『ダメ』と言われる。勿論、当たり前なのは承知である。


9:20頃、グループホームを出発した。ずっとドキドキしていた。死ぬ目的ではない、けれど、もしかしたら勢いで線路に飛び込むかもしれない。もしかしたら死ぬかもしれない。そう思うと、軽い気持ちでは居られなかった。

11時頃、久々に東京の駅で乗り換えをした。池袋の構内は、まさに『都会の喧騒』そのもので、沢山の靴の音が鳴り、みんな早歩きで目的のホームへ向かい、私が何を考えていようが、もし立ち止まっていようが、誰も気には留めない空間だった。

私が久々に感じたかった『誰にも干渉されない』という環境。大学時代は近郊に住み、東京に毎日出ていたからか、そんな都会の空気感は私には逆に心地よかった。


私の目的の駅に行くには、近くまで違う線の駅へ電車で行き、そこで改札を出た後、10分弱歩いた先にある駅だった。

私はその駅の1番線ホームで死のうと、3年前に決めた。1年前に買った死ぬための服もわざわざ準備して、今回もそれを着てきていた。

今まで何度もそこで逝こうとしては、その度恐怖心に苛まれ、結果死ねなかった。警察沙汰や精神科の入院にもなった。



11:20頃、遂に近くの駅へ到着した。その駅に降りてから、暫く迷った。本当に行くべきか、辞めておくべきか。
いくらこの気持ちを誰かに伝えたいからと、目的の駅のホームに行ってから連絡してしまえば、警察に通報されたり、最悪精神科へ入院を余儀なくされてしまうのではないかというリスクを考えたからだ。

その時、就労の職員さんから電話が来た。その電話に出ると、
『どこにいるの?悪いことはダメだよ?できるだけ早く帰ってきてね』
と言われて、私はほぼ何も言えず、割とすぐ切られた。
分かって貰えず否定され、ショックで悲しくて、やっぱり死にたいと思ってしまった。

市の保健センターには前日にメールを入れていたが、この日に返信が来なかったからきっと担当の保健師さんはお休みなのかもしれないと思い、電話はかけられなかった。
グループホームにかけようにも、就労施設とグループホーム施設は同一敷地内なので、きっとその職員さんからグループホームの職員さんにも伝わってると思い、かけられなかった。
訪看には前日ある看護師さんに叱られたから、かけられる状態ではなかった。

『誰にも助けを求める場所が無い』と途方に暮れている時、今度は施設の管理者から電話がかかってきた。
東京に来た理由を全て話した。すると

『そう思っちゃったもんは仕方ない!お金はある?暖かい服着てる?せっかくだから美味しいもん食べて楽しんでおいで。色々考えたんだね。みんないるからね、ひとりじゃないからね。帰ってきてくれるの待ってます。絶対生きてね』

と言われた。

お母さんみたいな暖かさだった。笑って誤魔化したけれど、本当は泣きそうになった。守ってくれる人がいるのなら、死んじゃダメだと思った。
けどせっかく2時間もかけてあの駅に行こうとしたのに…と思って迷ったけど、友達が電話をくれて、結局カフェにだけ寄って、そのまま帰ることにした。

グループホームへ帰ると、職員さんはみんな
『おかえり!』
と明るく声をかけてくれた。
ある職員さんは、強く抱き締めて『頑張ったね』と労ってくれた。
管理者からのLINEには『帰って来てくれてありがとう』と入っていた。


往復4時間、交通費だけで5000円、就労も休んだし、カフェでは800円遣った。ここまで時間もお金もかけて、東京に来た意味は本当にあったのか。

今回のことで更に支援者には心配かけたけど、代わりに暖かい言葉を貰えたし、この気持ちにも気づいて貰えた。

行きの2時間の中で、『死ぬのは怖い』と思うこともできたし、助けを求めて生きることを選べた。

現実逃避と気分転換ができた。怖い思いもした。そして、人の優しさ、暖かさに触れることが出来た。

今回の出来事を無駄にしないように出来たら良いけど、今の私にはそれはきっと難しいから、なんでもいいからとにかく『生きる』ことだけを頑張りたいと思った1日だった。


この冒険で、私はまた1つ、成長出来たのだと思う。
前進と後退と繰り返しても、結果1cmでも前に進めていればいいのだと思う。

『無理をしない』
そして
『人に適切に甘える』。

これが私の人生の大きな課題だ。

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