見出し画像

同僚の死を悼む

 
きみの死を聞かされし朝の会議室集まりし我しばし黙せり

自らの命を絶ちぬ仕事場で君その日の勤務の終わりに
 
四日もの間家には帰らざりし君彷徨ひし夜の暗闇

社報見て初めて知りし君の名は「ひと」 歳三十 退職の日

人の縁薄き人なむと聞きて知る 最期を過ごせし仕事のともがら

君の未来たりへた時間ときを生くるわれ君のゐない机を見てをり
 
せめてもの願ひは君の体失の往生あらむ 無量の光

終の場所を職場に選びし君のため短歌を詠はむ君を偲びて

きつとかう動いて行くのだらう僕のゐなくなつたあとの宇宙も

桜花のつぼみは未だ硬けれど去年より高し枝の位置かな


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?