夏目漱石「坊っちゃん」より/赤シャツの罠、漱石の罠
〔夏目漱石「坊っちゃん」『夏目漱石全集2』所収(ちくま文庫,1987)について、限られた視点からではありますが、切り込んで読んでみたいと思います〕
夏目漱石『夏目漱石全集2』(ちくま文庫,1987)
1 はじめに夏目漱石の凄みを感じるおそろしい作品が、私にとっての「坊っちゃん」です。
もちろん抜群に面白い小説です。坊っちゃんの眼を通して語られていくこの四国の町と綽名でしか呼んでもらえない戯画化された人物達の動きは、彼にとって何と滑稽と欺瞞に満ちており、私たち読者にとって