研究の面白さとはなんだろう

このnoteでは自身のテーマである「研究×起業×医療」について考えいく。いきなりテーマ全体についてまとめて考えることはできないので、各要素に分解して自分の中で抽象的に思っていることを整理してくことで、深掘りしていこうと思う。

まず最初の構成要素である研究について。第一回目の本稿ではその研究の面白さとは何かについて考えていく。私はまだ研究者と胸を張って言えるような段階ではないが、学部の卒業研究、修士課程での研究、博士課程進学試験のために読んだ専門領域外の研究、システマティックレビューのために読んだ専門領域の研究など・・・研究を行ってきた中や読んできた中で感じた研究の面白さについてまとめていく。研究の面白さはなんだろうと問われた時に、パッと思いつくものが3つある。

1.知的好奇心の追求

1つ目は、自身の知的好奇心を満たせること。研究は簡単にいうと「ある疑問に対しての仮説を立て、それを検証することで物事の仕組み・原因を明らかにすること」だと思う。なので研究は明らかにする対象となる”疑問”を持つところから始まる。研究における疑問はリサーチクエスチョン(以下:RQ)という。RQは、

①「口笛はなぜ遠くまで聞こえるの?」のように日常の中で感じた疑問から始まるパターン(ちなみに口笛が遠くまで聞こえるのは、人間に聞こえやすい周波数帯であることと振幅が大きいことによるらしい・・・)

②先人たちが行ってきた研究をさらに前へ発展させていくために、先行研究を読んだ中で持った疑問から始まるパターン

③事業など転用したい目的のために、~~が明らかになっていないとサービスの良さが主張できないよね、というように決まった目的から逆説的に設定した疑問から始まるパターン

など様々な場合がある。このうち①と②のようなパターンは自身の内から湧き出てきた疑問であるため人に投げかけられた疑問よりも、なぜだろうかという感情がより大きく感じられる。しかし、所属している研究室によっては、その研究室全体で大きなRQをすでに設定している場合があり、そういう場合は自身の疑問を自由に追い求めることは難しい。私の所属している研究室ではテーマ設定の自由度が比較的高く、①も②も③可能である。子供のように純粋に自分の内から湧き出た疑問をひたすら追いかけられるというのはとても幸せなことだと思う。苦しいこともあるがこの疑問を追いかけるプロセス自体がとても面白い。


2.最先端への競争

2つ目は最先端に触れられることである。1つ目の知的好奇心を満たせるにやや似ている気がするが、1つ目の好奇心を満たすというのは内面的なことであるが、2つ目の他の人ではなく自分が最先端に触れているという対外的な感覚なのかもしれない。

先ほど述べた研究に必要なRQをより良いものにするためにはFINERという観点が必要になるとされている。Feasible:実現可能性(その研究は本当に実施できるのか)、Interesting:興味深さ(研究に面白さがあるのか)、Novel:新規性(その研究は誰もやっていないのか)、Ethical:倫理的(その研究は倫理的な問題はないか)、Relevant:妥当性(研究を行うべき妥当性があるのか)、これらの頭文字をとってFINER。RQではこの5つの観点が重要である。この3つ目のNovel:新規性について・・・。研究は誰かがやったことを繰り返しても意味がない。誰もやったことがないこと、明らかにしたことがないことをやることに意味がある。つまり、研究の結果が出たときにその事実を世界で初めて知るのは自分である。人生で世界一(世界初)になれることはそうそうないが、研究においてはそれが可能である。もちろん、それは簡単なことではない。類似した研究を先に発表される場合や、研究計画が不十分で満足した結果が得られない場合などがある。だからこそ、研究が論文として形になった時の喜びは大きいし、疑問が解決したときの爽快感は特別なものだと思う。


3.人との繋がり

3つ目は様々な人と繋がれることである。研究者というと、ラボにこもって一人で黙々と作業をこなしていくようなイメージを持つ方もいるかもしれない。しかし、実際はそんなことはなく、研究には多くの人との交流があるし、それが必要不可欠である。

先述したように研究では新規性が重要である。この新規性を作る方法として、これまでになかったものを掛け合わせるということがある。私が現在行っている研究は遠隔リハビリについてである。この研究はリハビリにこれまでなかった通信技術を応用しようとするもので、医学×工学という全く関係ないものの掛け合わせによって行われている。このような研究では、お互いに知識の少ない相手の専門領域について理解して、感覚をすり合わせるところから始まっていく。そのため同じ専門領域内での共同研究に比べて、時間も手間もかかってしまう。しかし、理解できた時にはそこかから、相手の持っている技術・知見を自身のもっている他の知見と掛け合わせることで新たなものが作れるのではないか、というアイデアがたくさん出てくる。この瞬間はワクワクが止まらないし、新たな人との交流が与えてくれた喜びは大きい

このように、研究を計画するときには多くの人との繋がりは重要である。先述した研究のRQを持つためのパターンとして、②のように先行研究から着想を得る方法だけをとるのであれば、一人だけでもやれるかもしれない。しかし、人間ひとりの頭で考えられることには限界があり、いつか行き詰ってしまうだろう。それを防ぐためには他者との交流が必要不可欠である。この他者は研究領域が近い人も、遠い人もどちらとの交流も大切である。研究領域が近い人との話し合いであれば、より議論を深く掘り下げていくことができる。全く関係ない領域の人とは話していく中で新たな着想を得られることがあり、議論を横に広げて展開していくことができる。研究者は根を縦に深く深く伸ばして自身の専門性を追求していくとともに、枝を横に大きく広げて他領域の知見を得ていくことが重要だと思う。これは研究だけに限らないのかもしれない。


最後に・・・

研究の面白さについて考えてみると・・・・知的好奇心の探求だったり、最先端という競争だったり、人との交流だったり・・・・子供のころに感じていた喜びと今感じている喜びはたいして変わらないことが分かった。これらは人が根源的に感じる喜びの1つなのかもしれない。これが今後どのように変化してくのか、変化していかないのか、博士課程が終わる時にまた振り返ってみたいと思う。

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