【百科詩典】てんのうのどうとくせい【天皇の道徳性】

天皇の道徳性というのは、そのときどき天皇の地位にある個人の資質に担保されるわけではありません。
千年、二千年という時間的スパンの中に自分を置いて、「今何をすべきか」を考えなければいけない。
そのためには「もうここにはいない」死者たちを身近に感じ、「まだここにはいない」未来世代をも身近に感じるという感受性が必要です。
私が「霊的」というのはそのことです。
天皇が霊的な存在であり、道徳的中心だというのは、そういう意味です。

〜内田樹『街場の天皇論』