【百科詩典】へいせいのにほんじん【平成の日本人】

スマホを常時携帯しつつ、仲間の意図と自己の相対的位置を四六時中チェックしている平成の日本人は、側線を介して水流と水圧の変化を随時感知しながら、群れの中における自己の位置を永遠に微調整しているイワシに似た生き物に変容しつつある。

つまり、私ども日本人は、平成の30年を通じて、単なる個人としての自分自身にではなく、より巨大な集団の中の一員であることにアイデンティティを抱く群生動物に進化したわけですね。

なので、社会性昆虫ライクな人類である平成の日本人は、実質賃金が伸び悩んでいるみたいなことにいちいち不満は持たない。
なんとなれば、賃金もまたあまたある宿命のひとつに過ぎないから。

〜小田嶋隆『ア・ピース・オブ・警句』