見出し画像

摂食・嚥下チームアシスタントレポートVol.14 「姿勢と嚥下」〜基礎編〜 頭頸部

はじめに

 明けましておめでとうございます!2022年新たな年になりましたね。

皆さまにとって摂食嚥下障害の患者さまの治療に活きる内容にしていけるよう尽力して参ります。新年も摂食嚥下チームアシスタントレポートをどうぞよろしくお願い致します!

前回は、肩甲骨と胸郭でした。肩甲骨が動くことで、どのように胸郭が変化するか?重心と支持基底面の関係性とそれに伴う筋緊張の変化が起こるかをみていきました。そのために肩甲骨の触診から運動学、評価までの視点をお伝えしました。

前回のレポートはこちら⬇

1月25日からは『姿勢と嚥下』の4回コースを開催します!ぜひ一緒に学んでみませんか?コースURLはこちら⬇

今回は頭頸部についてお話ししていきます。ご高齢の嚥下障害の方の姿勢を見ていく上では、廃用症候群による筋緊張の低下などの背景も重要な要素となります。例えば、頭部が前方にいくのを止めるために頸部が過伸展していたり、骨盤を後傾させて脊柱で止めていたり、頭部を支えられずに過屈曲している方もいます。重たい頭の位置を変えることで姿勢がどのように変化するのか、そして嚥下機能がどのように変化するのかを評価していく視点をお伝えします。

1.頭頸部の解剖学

頭頸部の解剖

まず頭頸部の解剖学についてお話ししていきます。

頚椎はC1〜C7で構成されており、C1とC2は上位頚椎と呼ばれ頭部を意味します。また①環椎後頭関節②環軸関節の動きが必要です。
一方でC3〜C7は下位頚椎と呼ばれ頸部を意味します。主に椎間関節の動きが必要です。

舌骨上下筋群

次に嚥下筋である舌骨上筋群と舌骨下筋群をみていきましょう。

舌骨に繋がる舌骨上下筋群は、舌骨を挟み上方のものを舌骨上筋群(顎二腹筋、オトガイ舌骨筋、顎舌骨筋、茎突舌骨筋)、下方のものを舌骨下筋群(甲状舌骨筋、胸骨舌骨筋、)と言います。

2.頭頸部の運動学

頸部姿勢による嚥下筋群の張力変化

ここでは円背姿勢による嚥下筋(舌骨上筋群、下筋群)の張力変化をまとめています。頭を持ち上げようと、頭頸部の伸筋群が働くことで過伸展になっている方や、逆に頭部を保つことができずに過屈曲になっている方を臨床でよく見ませんか?

以下の①〜④の流れで摂食・嚥下機能に影響すると考えます。

①頭頸部の位置変化により頭頸部の伸筋・屈筋の筋緊張のバランスが崩れる。
また、嚥下筋の起始・停止が最適長ではなくなるため働きにくくなる。
②嚥下筋群の出力が低下
③嚥下圧・反射が低下
④努力性嚥下・複数回嚥下になる。口腔内残渣や咽頭残留の増加

実際に頭頸部姿勢の違いによる嚥下反射の変化をぜひ体験してみてください♪

『軽度屈曲位』で期待される2つの効果

皆さんは顎を引いた方が嚥下に良いと感じたことはありませんか?

ではなぜ顎引き(軽度屈曲位)が嚥下機能にいいのでしょうか?ここでは期待される効果を以下の2点を上げてみました。

1つ目は、頭部伸筋群である後頭下筋群の活動が抑制されることで頸部前面筋(頭長筋・頸長部)や舌骨上下筋群が働きやすくなります。ですので、頭部が軽度屈曲位になり、支持基底面上に乗るには後頭下筋群の柔軟性も必要です。さらに、筋の張力が発揮されやすいアライメント(位置)になり嚥下圧・嚥下反射が起こりやすくなります。

2つ目は咽頭喉頭内腔の距離が狭まることで嚥下圧を高めやすくなります。

上記のように『軽度屈曲位』には2つの効果があります。一方、臨床場面では長期臥床により重力が常に頸部がベットの方向へ押し付ける形(頸部過伸展)となっている方が多いです。そのため、廃用症候群のような筋萎縮、筋緊張低下を予防する事も大切です。ベット上の評価のみでなく離床し、姿勢介入を行った上で嚥下機能評価を行う事が重要です。

3.実技

①頭頸部と重心移動(前後左右)

頭部の位置を変えることで、健常人の体幹や骨盤、肩甲骨がどのように反応するのかをみていきます。座位で両側頭部を持ちながら前後左右に動かし、支持基底面の変化と重心の位置関係を感じてみましょう。

※臨床で開口している方は頭部と合わせて下顎から支えるように誘導します。※やりにくい場合は背中に自分の大腿部を添わせて安定させながら動かしましょう。
※頭部を持ちながらも床反力を感じながら基底面への軸をイメージして動かします。


②頭頸部回旋

頭頸部を介して坐骨を感じられたら、そこから頭頸部を回旋させていきます。坐骨で上体を支持することができると抗重力筋が効率よく活動できるようになり、頸部などの嚥下関連筋も働きやすくなります。坐骨に重心が乗ったときと、姿勢を崩したときの頭頸部回旋時の筋緊張や可動域の違いを感じてみましょう。

※軸椎の運動をイメージして、回旋時に頭頚部の屈曲や胸椎の側屈がでないようにします。
※別方向?への運動をしながらも、床反力を感じながら支持基底面への軸をイメージして動かすのは基本においておきましょう。

※座位での頭頸部回旋ができれば、立位でも行ってみましょう。この時、重心が足底のどこにあるのかも意識しながら行いましょう。

まとめ

姿勢を支持基底面から、足部・骨盤・股関節、胸郭・肩甲骨とボトムアップで積み上げていくように下からみていくのは基本的な見方です。
しかし、ご高齢の嚥下障害の方の姿勢と嚥下機能を評価していくには頭部の位置がとても重要になってきます。頭部の位置を変えることでどのように姿勢が変化するのか?支持基底面と重心の関係はどうなるのか?を常に意識して介入しましょう。
その結果、初期評価時の嚥下機能が姿勢を変えた結果どのように変化するかが最も大切となります。そして患者様が一口でも多く食事を取れるよう、実際の食事場面を見る機会が増えると幸いです。

おわりに

 これからも解剖学や運動学、実技だけではなく、臨床で必要な思考過程も含めて共有させていただきます。同じ嚥下障害に悩む患者様を担当されているセラピストの皆さんに一人でも多く知っていただき、一緒に嚥下障害を治療していく仲間が増えることを私達摂食嚥下チーム一同願っております。
また一人でも多くの皆さんに知っていただけるよう、私達の活動を応援していただけると幸いです。今後も摂食・嚥下アシスタントレポートを宜しくお願い致します。

ごあんない

セミナーのご案内

姿勢&嚥下4回コースを1月25日から開催します!!

小西の学びのコンテンツ

摂食嚥下について興味・もっと深く学びたいと思った方は、脳外臨床研究会の摂食嚥下セミナー講師の小西がお送りする学びのコンテンツへ⬇

*実技動画を購入された方は、下記の有料エリアに動画が添付されていますのでご覧くださいね!これからも宜しくお願いします!

ここから先は

187字

¥ 500

今後も摂食嚥下障害で苦しむ方をサポートする為に! 皆さんの臨床で役立つ摂食嚥下の情報を発信していきますので、宜しくお願いします!