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『虐殺器官』〔新版〕

伊藤計劃いとうけいかく/ハヤカワ文庫(小説)

自分の中でSFが流行り始めてから三冊目のSF。
初の長編。
お噂はかねがねという感じの有名な著者と作品名。
「読みたい読みたい」なってたのでとても楽しく読んだ。
物知りな人が読むと違うのかもしれないけど、いい意味でラノベのようで良かった。本当に。いい意味で。

時代的には(書かれた当時の)少し先の、技術的には今より進んで(色々実用化されて)いる、そんな未来のお話。
軍人である主人公は、内戦や大量虐殺の陰に見え隠れするある男を追う。
技術によって色々な感覚が麻痺し、小さな肉片になるまで戦えそうな兵士や、軍隊に利用される子供たちの描写などもあり、気持ちの悪い戦争の物語でもある。
胸のすくようなことは起こらないし、この人かっこいい!と憧れるようなヒーローも出てこない。
でも結構ラブストーリーだと思った。
以前に読んだ二冊のSFにも「これは愛の話だね」と思うエピソードが結構あったので、SFってそういうものなんじゃないかと感じている。
いうてもファンタジーもSFも似たようなものだろうと、過度に身構えないよう自分に暗示をかけながらSFを読みはじめたけど、SFはロマンチックなラブロマーンス的な感情や思考が、登場人物の行動の動機になったり、判断を狂わせたりしている印象。
恋愛ものはややニガテだけど、物語のいち要素として、恋する登場人物がいるのはすきなので、SFちょうどいい感じだ。

『虐殺器官』の感想じゃなくなってしまったな。
でも随分と女の尻を追っかけてる話だったんです。
そしてそのさまを、一途で好もしいと思ったんです。

装丁もかっこいい。黒いからちょっと聖書みたいだ。

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