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街中のおしゃれセカンドハンド・ショップとお店の未来

スウェーデンの「衣料品ビジネスと消費行動の変化について」書きました。
ポイントは
①おしゃれなセカンドハンド”ショップ”
②ブランドは”新品、中古と修理”をセット
③ファストファッションはレンタルで”罪悪感”をなくす

飛行機旅行、肉食に続き衣料の消費が減少のスウェーデン

グレタ・トゥーンベリはすごい。彼女はたった一人で気候危機を訴えて多くのスウェーデン人の消費行動を変えてしまった。スウェーデンに住む私たちは今、飛行機に乗ることを恥ずかしいと思い、肉の消費は減り続けており、さらには衣料の消費を抑えようとしている。

国連のレポートによるとファッション業界は航空業界と海運業界を足したよりも多くの炭素を排出している。衣類に関してはオーガニックコットンを選ぶことよりも、とにかく「新しいものを買わない」ことが重要だ。

業績悪化のファストファッション

H&M、Kappahl、Lindexといったスウェーデンの大手衣料品チェーンストアの業績は軒並み悪化している。H&Mほどのグローバル市場は持たないが北欧では最大手のチェーンストアの一つであるKappahlは、2019年度第3四半期(2019年3月〜5月)の売上が前年比3.3%減となった。業界団体であるSvenska Handel Stil(スウェーデン商工会・ファッション部会)がまとめたレポートでは今年に入りスウェーデンのファッション業界全体の売上は2.1%減っていることが確認できる。

しかし、この統計数字には入っていないが衣料品分野で好調に売上を伸ばしている業態がある。それがセカンドハンドのお店たちだ。

セカンドハンドってなに? ロッピスとは?

セカンドハンドとはいわゆるリサイクル店のことで、服や靴だけではなく家具、食器から古本までありとあらゆる中古品を扱っている。

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スウェーデンでは慈善団体が運営していることが多く、人々が寄付した不用品を店頭に並べて売るという方式だ(最近ではネット販売もある)。売上金は団体の慈善事業や運営費に使われる。売られているものは骨董品やアンティークではなく普段使いの日用品がほとんどだが、探せば気に入るものは見つかるし、なにしろ価格が手頃だ。お財布の心配をせずに誰でもふらっと立ち寄れるところは、日本人が100円ショップに行く感覚と似ているようにも思う。

セカンドハンドはこれまでも学生や年金生活者また子供服がどんどん必要になる若いファミリーに人気だったが、去年ぐらいからセカンドハンドでの消費者の買い物傾向が変わってきている。お店の売上も急増している。

セカンドハンドの売上は急増中

衣料品チェーンストアの不振と対比するように、例えばMyrornaという120年の歴史を誇る大手セカンドハンドチェーンでは、2019年上半期で売上は6%増えた。首都のストックホルムとスウェーデン第三の都市マルメで大型店を運営するHumanaでは同期間中に対前期比18%で売上を伸ばしている。

もちろんスウェーデンでもメルカリのようなフリマサイト、アプリも以前から根強い人気があり、さらに最近はFacebookのフリマ機能を使っている人も多い。この分野でも消費行動は活発で、老舗フリマサイトのTraderaでは今年に入ってから売上は15%増となった。

さらにスウェーデンには「ロッピス」という、主に個人が不用品を売る昔ながらのフリーマーケットがある。アンティークとしての価値があるものを扱うプロやセミプロの出店が多いロッピスから、ガラクタが山のように並ぶロッピスまでピンからキリまであるが、ちょっとした商品知識と買い物のコツに加え掘り出し物を探す根気があれば、これほど楽しいところはない。

(残念ながら店舗形態の性格上、ロッピスに関する売上統計はない……)

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空き店舗の救世主? ファッション・セカンドハンド

さて、Eコマースの隆盛もあり店舗販売の小売業は衣料品に限らず全体的に不振で、スウェーデンのショッピングエリアでは倒産や廃業により空になった店舗が目立つ。これは市街地だけでなく郊外のショッピングセンターでも同じだ。比較的最近できたショッピングモールでも、次々にお店が入れ変わったり空き店舗のままになっていることもよく見かける。

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(マルメの一等地にあった歴史ある洋品店もこの夏倒産した)

そんな衣料品店舗販売の救世主になる可能性があるのがセカンドハンドのお店だ。前述した昔ながらの慈善団体による、値段も雰囲気も気さくなセカンドハンド店が街の一等地やショッピングモールの中に店を持つことも増えているが、最新の注目株は「おしゃれなファッション・セカンドハンド」。

ラグジュアリーブランドを扱うヴィンテージショップとも異なるポジショニングで、都会のエコな心を持つファッショニスタを引きつけている。いらなくなった洋服を寄付するのでなく、自分もお金が稼げる「フリマ機能」に加えて、衣料品店がどんどん消えていく街中で、すてきな時間を過ごせるおしゃれな空間を提供している。

ARKIVET

そのの代表格が現在ストックホルムに2店あるARKIVETだ。

2017年に最初の店を、2019年3月には人気のオステルマルム地区に2店目をオープンさせたArkivetが扱っているのはAcne、COS、Dagmar、Malena Birgerなど、旬でおしゃれな人気のブランド。比較的新しめの魅力的な中古服がまるで新品のようにお店に並んでいる。

自分が着なくなった服を売ってみたい人はいつでもお店に持ち込むことができるが、Arkivetのようなおしゃれなセカンドハンドで扱ってもらうには60%の手数料を払わないければいけない(売値が1995クローナ以上の場合は手数料が40%になる)。

持ち込まれた洋服は30日間店頭に陳列され、その間に売れなかった場合は再び自分で引き取るか、もしくはお店から直接、ストックホルム市が運営するセカンドハンドストアのStockholms Stadsmissionへ寄贈してもらう。

その場合は持ち込んだ服は寄付することになるが、「こんまり」に影響をうけて洋服の断捨離に励んでみても従来のセカンドハンドに持っていくだけでは一円にもならないし、フリマアプリを駆使して売る時間もない。「おしゃれセカンドハンド」なら、あわよくばお金も稼げるし売れなくても持ち込んだ服は無駄にならない。それに店頭には自分と同じテイストの素敵な服が、心が痛まない「中古」という形で並んでおり「お店で買い物」もできる。

Arkivetを利用する客の心理はこんなところだろうか?

新しく服を買うという罪悪感」を感じることなく、きれいで居心地のいい店内でショッピングを楽しめるArkivetの人気と注目度は高く、経営者のカロリン・ハムリンのもとには、ショッピングモールや街なかの空き店舗への出店の誘いが後を絶たない。

ストックホルムにはこの他にもJuditsというハイファッションブランドのヴィンテージを扱うお店もある(システムはArkivetとほぼ同じ)。さらにJuditsは人気のFilippa Kに限定したセカンドハンドのお店も経営している。

メーカーが新品も中古も販売するファンベース基地

上のFilippa KのセカンドハンドはFilippa K本体とはアウトレット品を仕入れなどコラボはしているが、経営はあくまでもセカンドハンド専門店であるJuditsが行っている。

一方、日本でも人気のエコなスウェーデンのジーンズブランドNudieは、直営店舗で新品と一緒に中古のジーンズも並べて販売している(はかなくなったNudieのジーンスを持ち込んで新品を買うと、新品価格から20%割引してくれる)。

オーガニックコットンでしかジーンズを作らないNudieには、そのデザインと品質と企業ポリシーに熱烈なファンがおり(私もそのひとりだ)、ブランドに対する忠誠心は高い。古いモデルを探している人もいる。そして実店舗がすでにあるので、そこで新品と中古を一緒にブランド自身が販売することは、客にとっても企業側にとってもメリットが大きい。

中古品は誰が売る?

中古車、古本などプロが中古品を扱う市場は多数存在しているが、古物取扱専門業者やディーラー子会社に中古市場を任せるのではなく、製造メーカー自身が中古品も一緒に売る形態は衣類以外の分野でも今後増えることはあっても減ることはないだろう、と私は思う。

例えば、カメラのメーカーはこれまでも高品質な修理サービスは提供していたと思うが、サービスの提供だけでなく中古品も引き取り、それを新品とあわせて販売することで新たな収入源にもなるし、なにしろファンの愛着度を強化できる。そうなると次々と新しいものを買ってもらうのではなく、長く修理しながら使ってもらう製品を作る必要性も高くなり、モノの作り方自体もまた変わっていくだろう。

例えば本をとってみても、今はようやく本屋が新刊と古本を一緒に並べて販売するぐらいだが、古本を出版社が回収してまた売ることで著者にも利益の還元ができたりすると、買う方も出版社や著者へのレスペクトも表明しながら古本を買えるようになる。そんな未来が来るとちょっと楽しい。

話が少し書籍に脱線してしまったが、ともかく、スウェーデンでは衣料品をめぐるビジネス現況は明らかに変わりつつある。最後にファストファッションの例でもう少しだけ見ていこう。

修理サービスで来店してもらい、レンタルで罪悪感をなくす

上で触れたNudieでは破れたジーンズをいつでも無料で修理してくれるサービスも提供している。私も何度、マルメの直営店で修理をお願いしたことだろうか。

同様のサービスはH&Mの店舗でも始まっていて、詳細は以前ブログにまとめたので興味のある方はこちらの記事を参照してほしい。修理は「サステイナブル」な行為なのでお店に足を運ぶのは「エコでいいこと」に分類される。

そして先月末にH&Mが新たに発表したのが「洋服のレンタル」サービスの開始だ。H&Mは現在ストックホルムのフラグシップ店を改装中だが、この秋再オープン予定の大型店で、鳴り物入りで開始されるのが「レンタル」サービスだ。詳細はまだ発表されていないが、貸し出される服は「コンシャス・エクスクルーシブ」というサステイナブルな素材を使用した商品ラインであることは決まっている。

心も懐も痛まないちょっとレトロなお店の未来

スウェーデンに住む私たちも、いくら使い捨て文化のファストファッションからは距離をおくべきと頭では理解していても、手の届く価格帯の服をすてきなお店空間で選ぶ楽しみも失いたくはない。

そんな願いを叶えてくれて、心も財布も痛まない①おしゃれセカンドハンドショップ、②新品も中古も一緒に販売して修繕もできるコアファンの集うファンベース基地、③レンタルで使うファストファッションへ、今後ますますスウェーデン人たちの注目が集まるに違いない。

付記・リサイクル店だけで作ったショッピングセンター

もしもあなたがスウェーデンのレトロで未来なお店を覗きにきたら、ぜひ一度訪れてほしいのがストックホルム郊外にあるReTuna。不用品、大型ごみのリサイクル集積センターの横にあるこの「ショッピングモール」では新品は売られていない。

市民が持ち込んだ不用品を修理も施して販売するお店が数多く入っている。大型セカンドハンド店(前述のStockholm Stadsmission)を中心に自転車、おもちゃ、テキスタイルなどセカンドハンド専門店がある。もちろん自分の使っているものを修理してもらうこともできる。2015年にオープンしたReTunaの2018年の売上は1100万スウェーデン・クローナ(約1億2600万円)を超え、今、世界中からの視察者の絶えない施設になっている。

「これ以上服を買ってはいけない」禁欲生活はやはりつらい。罪悪感をもたずに、そしてお店で買物をする楽しさも提供する「ちょっとレトロなお店の未来」はもう始まっている。

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ブロムベリひろみ

スウェーデンと日本のビジネス開発コンサルタント、翻訳者、ブロガー。日本では電通、ディズニーでマーケティング。2000年からスウェーデンでIT関連ビジネス開発。ちょっと未来なスウェーデンのニュースブログを毎日更新中!https://swelog.miraioffice.com/

スウェーデンの極端な人たち

一見のんびりしているスウェーデンですが、動き始めたら驚くべきスピードで変化していく社会や人々の行動変化の兆候について書いています(以前に個人ブログで書いた記事も転載しています)。
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