イギリスの大学教員生活2か月目

今田です.
9月からRoyal Holloway, University of LondonでLecturerとして働いています.なんとか2か月生き抜きました(大学の授業が始まってからは5週間).

Admin:Research:Teaching = 1:4:4
のような雇用契約をR&T (research & teaching)と言います.
この2か月でR&Tの職員に期待されていることがだいぶ明確になったので,その辺メモがてら書いていけたらなと思います.

見出しの(私)・(仕)は私生活・仕事の話を意味します.


(私)入国に失敗しました.拘留.なんで?

イギリスで働くために,70万でSkilled Worker VISAというたいそうな名前のVISAを買ったんですよね.これで5年間は安心して出入国ができるはずなんですよ.

ところが数週間前,ポーランドに週末旅行に行った帰り際,まーた入国審査で止められたんですよ.

入管「お前なにしてんの?」
私「Royal Hollowayで教員してます.明日朝一で学生指導あるから早く帰りたい(もう23時)」
入管「それは大変だね,ところでパスポートと旅券預からせてもらうわ!」

~拘留されること45分~

入管「入国していいよ!」
私「何の確認してたの?なんで拘留されたの?」
入管「わかんない」

わかんない!?!?!?!?!?

(仕)R&Tに期待されていること

うちの大学にはteaching-focusedの教員がたくさんいます.
といってもすべて教育というわけではなく,彼らが研究に割くことを期待されている時間は全体の2割です.なので週1日ですね.

教育メインの人がたくさんいる分,自分は今のところ週に2.5-3日はフルで研究に割くことができています.自分は今学期は100分授業x3回しかないので,教育業務は卒論指導がメインです.Admin:Teaching:Resaerch = 1:4:4という契約はしっかり守られています.いまのとこ.(アドミンはウェブサイトの管理.)

ただ,(質の高い授業・指導の提供はもちろん期待されていますが),R&Tは質の高い論文の出版と外部資金獲得のプレッシャーが半端ないです.

1.わけわかんない雑誌に論文ださなくていいから,時間かけてでも質の高い論文をだせ
2.外部資金とにかくだせ


1.質のいい論文を出せ
メンターとの面談の中でとにかく,「質のいい論文・プロジェクトを優先させる.そのほかは卒論・修論・RAに回す.」ということが強調されていました.つまり,どんな研究が質のいい研究か・強い雑誌に載るかが自分でわかっていないまま教員になると多分詰みます.

自分はこれまでたくさん論文を書いて,たくさんリジェクトされて,たくさん論文を読んできたので,どういう論文がどういう雑誌にでるか割と検討がつくので,この辺はなんとかなっています.とか言いながらあんまり質のいい論文がだせていないんですが,ポスドク時代から小さいプロジェクトを片付けつつ徐々に選択と集中()をしているので,長い目で見守っていていただければと思います...

2.外部資金とにかくだせ
最初の2年間はスタートアップとして年間£2000が支給されるんですが,3年目以降は基本的になしです.もちろん学部・大学レベルの内部資金には応募できるんですが,実験1つでなくなる程度のものです.学生データ・二次データを使えば論文かけなくはないんですが,自分のような実験屋さんはそれでは厳しいので,外部資金を獲得しなくてはというプレッシャーがとんでもないです.

ただ,うちの学部では
外部資金 = 学部へのコントリビューション 
と明確にフレームされているので,外部資金獲得のための学部内のサポートシステムが本当に充実していて,経験豊富なメンターの先生方から指導が受けられるようになっています.それに加え,グラントプロポーザルを書く時間がしっかり業務時間内に計算されています.
グラント獲得金額に応じてteaching業務が減るんですが,グラントがとれなくても,執筆時間に応じて減るシステムになっています(CO-PIとして獲得した場合も自分の執筆貢献時間分のteachingが減る).なのでフェアにできていますし,「みんなでたくさん獲る」という雰囲気があるので,生きやすい学部だなと思います.今年度内に大きいものを2-3つ書く予定なんですが,不安で仕方ないですね.


(仕)イギリスの大学で教える人のための資格


日本の大学教員って教員免許いらないと思うんですが,イギリスの場合教員免許のようなものを取らされます.

AdvanceHEという団体(実際なんなのかわからない)がUK Higher Education(大学)で働く人のための資格を発行しているんですね.

Associate Fellow (大学院生レベル)
Fellow(大学教員レベル)
Senior Fellow (Teaching focusedの大学教員向け)
Principal Fellow (誰向けなのかわからない)

自分が大学院生の時にAssociate Fellowをとったんですが,今はFellowをとるためにいろいろやっています.1-2時間の授業に6つ出席して,自分の授業を誰かに見てもらったり,他の人の授業をみたり,エッセイ書いたり,教育経験CV書いたり,とまぁとにかくいろいろやらされます.Associate Fellow取得のための授業は結構Pedagogyに関する学術的知見のお話が多かったんですが,Fellowのための授業は結構実践的なものが多いです.
正直本当に面倒くさいんですが,ありがたい授業もあったりします.

日本人パワハラ教員に関するニュースやツイートが散見されると思うんですが,日本もなんかこういうの導入してみたら?と思いました.

(仕)学部生RA

Research Assitant(RA)というのは,大学院進学を目指す人であったり,そうでなくてもCVに何かしらの研究経験が欲しい学生の中では割と人気のポジションのようです.うちの学部では,"35時間のRA業務に£250払う"という若干搾取気味のスキームがあるんですが,これ以外にも”ボランティアRA募集!”というもろ搾取の掲示板がたくさんたてられています.

ボランティアであろうとスキーム利用だろうと,学生はCVとカバーレターを用意して,教員は書類審査&面接を行う,という工程があるので,仕事への応募の練習という教育的な側面がありそうですし,RAをやりたい学生はRA経験をCVに載せることに意義・必要性を感じてやっている人しかいないので,そこまでひどい搾取の構造があるわけではないのかな...?とは思っています.(思うようにしています笑)

学部生RA達は結構優秀で,みんなかなり助かっているという話を聞きます.
学内共同研究のためにスキームを使って今度1人雇うのでどんな感じになるかけっこう楽しみです.


まとめ

イギリス大学教員生活,本当に楽しいんですがマジで忙しいです.
若いから何とかなってる節があります.


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