『ショーシャンクの空に』と2人の顔
『ショーシャンクの空に』を初めて鑑賞したのは、私が中学3年生か高校1年生くらいの頃だった。
当時、毎週土曜の夜は父親と映画を見るのが恒例で、作品選びは毎回私が担当していた。
作品の存在は知っていたし、面白いというのも聞いていた。
その時のサブスクの〈不朽の名作特集〉のラインナップされていたのを目にして、今こそ観てみようと思い、提案した。
「これ、観たことある?」
「あー、これかぁ。うーん、なんか観たことあるような気するけど、どんな感じやったか忘れたからみよか!」
今思えば、多分この時父親は嘘をついていたと思う。
あのラストをどうして忘れることができるんだろう。
それはそうと、ショーシャンクは私にとって、初めて"カタルシス"を感じた作品だった。
〈不朽の名作特集〉の文言にも、「カタルシスがすごい!」と書かれていたのを鑑賞前に見ていた私は鑑賞後にその意味を完全に理解したわけでもないのに、「これ、カタルシスすごいな!」と父親と言い合ったのを覚えている。
その後、親友にも観ることを勧めた。
「カタルシスがすごい映画あるから一緒に観よ!」
「なんやねんそれ!言いたいだけやろ!」
そう言いつつも、2人で私の家で鑑賞した。
「「カタルシスやばっ!」」
と鑑賞後にきゃっきゃ言い合った。
その後もことあるごとに、「カタルシスがさぁ」とか「カタル指数どんくらい?」とかふざけてカタルシスという言葉を使うブームが2人の間にやってきた。
私にとってカタルシスを教えてくれた作品は、いつ観ても父と親友の顔を思い出す。
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