米大統領選前夜、ドナルド・トランプのうさん臭さについて

ここでわたしが書いた記事には、先入観もあるだろうし、不勉強な面もあるだろう。そこは了承願いたい。

わたしがトランプについて最初に疑いを持ったのは2020年の選挙の頃からだった。その前の2016年の時点ではまったく関心がなかったし、候補者としてほとんど注目されていなかったと思う。Netflixのドキュメンタリー(「汚れた真実」)や、著名ジャーナリストのボブ・ウッドワードの本(「レイジ 怒り」)を読んで、この人物についてだいたいのことを理解できた。

選挙戦では、トランプは口達者で攻撃的であり、対立候補をあれだけ“小児性愛者”だの“人身売買組織を運営している”だの“ドイツのサーバーを経由して選挙不正を働いている”などと、荒唐無稽なセリフを平然と吐き出していたことを覚えている。しかも、証拠をなにひとつ提示できず、すべてデマだったわけだが。こういう人間が罰を受けることさえなく、ふたたび立候補して世論の注目を集めること自体が驚きであり、呆れてしまう。トランプは典型的なサイコパスだろう。
 トランプはもともと不動産事業で成功したといっても、親の代からの金持ちであり、父親からかなりの財産を相続していたようで、親の七光りである面も強い。
 Netflixのドキュメンタリーでは、トランプ・オーガニゼーションと関わった人物はみんな口を揃えて「詐欺にあった」と証言していた。また、旧ソ連カザフスタンのマフィアとつるんで怪しげなビジネスを営んでいた、というはなしもある。トランプと個人的に関わった人々も、トランプは攻撃的で威圧的だった、ということを一様に述べている。
 トランプ政権時代には、何人もの閣僚たちが辞任していったことは記憶に新しい。ボブ・ウッドワードの前掲書では、ティラーソン(国務長官)とマティス(国防長官)の会話で、「あの男(トランプ)はおそろしく知能が低い」ということで意見が一致していたようである。どうも、社会の中で人と協調してやっていくことが難しい人間だったようである。
 また、FBIの副長官は、「トランプはロシア(プーチン)のスパイ」であり、2016年の選挙戦ではロシアがサイバー攻撃で介入した、ということを示唆していた。

それでは、現大統領のバイデンが素晴らしいかというとべつにそうは思わないし、第一高齢すぎる。この点はトランプも同じである。しかし、トランプよりかはずっと安定感、安心感が持てる。この点は、世界秩序に絶大な影響力をもつアメリカの大統領にとって、とりわけ重要な点であろう。
 バイデンは当選当時、中国に対して融和的なのではないか?と懸念されていたが実際には杞憂で、中国に対してしっかり強硬な姿勢で臨んでいるようにみえる。

ここで、ドナルド・トランプの主張を以下にざっくりまとめてみたい。
・アメリカ・ファースト、アメリカ第一主義。
 
→必然的に、日本をふくめた同盟国との国際協調は軽視されることになるだろう。
・保護貿易主義
 
→外国製品に高い関税をかけ、国内の企業と労働者を優先。
・気候変動軽視、環境問題軽視
 
→トランプの支持基盤には製造業や石油産業など20世紀型の産業が多いため、当然ながら地球環境は軽視されることになる。
・不法入国者の取り締まり強化、排除
 
→不法入国した外国人が治安を悪化させている、という考え方に立つのだろうが、そうでなくともアメリカは十分に治安悪そうですけどね。

これらは個別にみると、そう間違っていないようにもみえる。しかし、いまの時代の考え方にはそぐわない。トランプは明らかに前世紀、20世紀の時代の考え方や価値観で動いているようにみえる
 こういう人物と主張が人気を博す背景には、アメリカの労働者たちの外国企業や外国製品への不信感と鬱憤がそれだけ高まっている、ということだろうか。
 アメリカの労働者たちがトランプを支持するには一定の理があるように思えるが、日本人があえてトランプを支持する理由はまったくない。旧ツイッターにおいて、トランプ支持層が盛んにツイートを拡散している光景は滑稽なものである。

トランプのような人物しか擁立できない米共和党には疑問を感じるし、本来彼は共和党の保守本流ではないはず。なにしろ、不動産経営とアメリカ大統領の職務は大違いである。
 アメリカで高まるトランプフィーバーを見るにつけ、大衆民主主義というものがもはや岐路に差し掛かっており、民主主義の行く末に暗雲がたちこめているように思います。


 

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