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半年以上かけて洋書を一冊読み終えた。

今年の2月から読み始め、ようやく最近読み終わった本がある。
Edward.J.Drea 「Japan`s imperial army  its rise and fall  1853-1945」
邦訳すると、「大日本帝国陸軍 その興亡 1853年〜1945年」といったところか。

本文は全体の6割ほどでページ数は260ページ余り、残りは付録と脚注というれっきとした学術書といえる。はっきりいって難しい本だった。
 このテーマを選んだのは偶然ではなく、むかし自衛隊にいたときから日本の軍隊について(批判的な意味で)関心を持っていたからだ。

知らない単語だらけの本で、まずKindleの辞書機能を使って調べ、それからオックスフォード英英辞典を引いて調べた。人名や地名などは当然辞書にはないことが多いからネットで検索したりした。そうやって、だいたい8割くらいの理解をめざした。
 単語をいちいちその都度調べていたら文全体の意味がつかめないことに気がついた。そこで、一文をとりあえず読み通してから、それから単語の意味を調べるようにした。また、分かりにくい表現や印象に残る表現があれば、Google Driveに文章を写して、後日読み返すようにした。

内容は、戦史や作戦の推移や人物の名前といったことももちろん大事なのだが、それ以上に日本陸軍という組織そのものにスポットを当てた本だった。
 その歴史は大まかに、江戸時代末期に尊皇攘夷をうたった薩長の倒幕勢力からはじまり、戊辰戦争をへて明治になって正式に建軍され、西洋列強との競合の中でじょじょに勢力を伸ばし、中国大陸での戦争、南部仏印進駐、しまいにはアメリカと戦争をすることになり、最後には原子爆弾を落とされて終戦となり、戦後はGHQのもとで復員省に改編されて解体となる。
 そうした歴史的事実とはべつに、軍内部でその戦略や編成、教義のあり方についてどのような思想の変遷があって、内部での対立があったりしたか、といったに力点が置かれていたように思う。
 たとえば、国土防衛に限定した小規模な軍隊のみを保有するのか、それとも対ロシア戦を念頭に大陸に進出していく外征軍をめざすのか、といった議論が初期の頃にはあった。そして残念ながら、日本は後者の選択をしてしまうことになる。

よく知られているように、一つの戦略をめぐって陸軍と海軍とでそれぞれまったく別個に動いて、最後の最後まで統合作戦というものは存在しなかった。政府との間でも情報をほとんど共有されていなかったようである。それは、陸軍の参謀本部や海軍の軍令部が、“統帥権”を盾にして自分たちは天皇を輔けているという傲慢さがあったがゆえに、政府と政治家を蚊帳の外に置かれてしまったからだろう。
 まさに、本来あるべき軍隊が国家に仕えるのではなく、国家が軍隊に仕えるようになってしまったようである。

Instead of the army serving the interests of the state, the state came to serve the army.
前掲書

陸軍が創設された当初、政府は民衆から信用されておらず、各地で暴動や一揆などが頻発していた。それが、徴兵制によって陸軍というものが民衆の教育を担うようになり、天皇を中核とした日本というあり方、その考え方を地方の隅々まで広めていったようである。
 一方、日本の軍隊の度を越した暴力性、戦争犯罪についての記述も随所に見られる。戦争中、陸軍は部内の規律の維持に力点をおいて、現地で行われた戦争犯罪、暴行や略奪、捕虜の殺害、市民の殺戮には目をつぶっていた。しかし、その同じ軍隊が第一次世界大戦ではドイツ人の捕虜を手厚くもてなしたりして、西洋諸国の模範にさえなっていたのだ。

なかなか読みにくい本ではあったけれども、日本の陸軍についていろいろ勉強になり読みごたえがあったように思う。




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