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課題という存在は何か、その存在を認識しやすくする考え方を考察してみる

背景
最近、哲学者 ハイデガーの「存在と時間」という書籍を読んでます。粗い考察で恐縮ですが、UXデザインのヒントになりそうな思いつきを忘れたくないので、メモ的な意味合いでまとめてみました。

テーマ「プロダクト≒道具」と「課題認識」
普段、UXデザイナーである私は「課題を特定しましょう」「課題を認識することが大事です」などと言っていたりします。その僕自身が「課題」という存在をもっと深く理解していくことが、今後のUXデザインをブレイクスルーさせるために必要な気がしています。
※優れたデザイナーは、この課題という存在をしっかりと知覚できると思いますが、私は凡人なので、考察してみたいと思いました。

a. 道具を強く認識する「欠如」状態が招く意味
プロダクトを仮に「道具」を置き換えて、以後読んでいただければと思います。その際に、その道具が欠如した状態、取手の取れたフライパンのような状態になると、人間の認識がどのように変化するのか、ハイデガーさんの書籍によると以下3つの意味合いがあると書かれてました。
①目立つこと・・・・・いつものキッチンの包丁が壊れると、強く認識しやすくなる
②催促がましさ・・・・壊れたまな板を見ると、包丁が新しいまな板を催促する
③邪魔になるもの・・・ガラス蓋は、炒め物では邪魔だが、ワイン蒸しでは必要

b. 課題を見つけましょう、整理しましょう、そのためにユーザーの声を聞こう
改めてわたしもこのセリフをお客様に伝えてますが、そもそも「課題」とは何を示し、それはどういう角度から見ることで、課題を見つけたことになるのか、特定したことになるのか、改めて考えてみることにします。

c.では、課題を認識するとは、どういうような概念なのか?(前提条件の整理)
わたしは哲学者ではないので、この全ての事象を前提に「課題認識」状態を定義するのは難しすぎるので、ここでは「プロダクト≒道具」という領域における、課題認識に限定して考察してみたいと思います。

d.道具は基本特定用途において有用であるが、課題も有している?
包丁であれば「切る」、まな板であれば「包丁の刃を守り、気持ちよく切る補助台」のように特定の目的を達成するための存在である。

ですが、道具が有用な状態では、僕たちは当たり前すぎて、その課題を認識することは難しい。そこで「欠如」という概念装置(フィルター)を通して、物事を見たり聞いたりすることで、より課題を認識しやすくしているのではと思います。

観察したり、ヒアリングする時、ユーザーさんに対して「料理で課題はありますか?」と聞いても、なかなかスパッと答えてくださる方はほぼいない。ですが、「包丁が壊れてしまうと、どんな困り事がありますか?」と聞けば、欠如という強い状態を前提に、過去の経験や改めて世界を捉え直すため、ユーザーさんが課題の中でもより強く認識しているものをより顕在化させやすくなるという構図があるのではないかという仮説があります。

わたしが、ここで伝えたいのは、欠如状態を意図的に作り、課題をユーザーさんから引き出ししやすくする方式がある、ということを伝えたいのではなく、欠如状態ということを与えると、ユーザーさんの認識の前提に影響を及ぼし、回答に変化を与えることができる、またその変化はどのような意味合いをもつかを考察することで、より深い分析をするための観点が得られるよ、ということだけです。

e.欠如状態と課題の関係性とは?
欠如状態を与えることは、冒頭でお伝えした通り、「プロダクト≒道具」に欠如状態を与えると、以下のような観点が得られやすいという仮説があります。
まずは、欠如状態を与えると「目立つ」ため、その道具が強く担っていた役割や存在感が顕在化しやすくなります。これらを考察することで、その道具の今の限界を定義することができ、それを超えることで何かイノベーション的なインパクトに近い、新しい企画を考えやすくなるかもしれないと密かに私は期待しています。

次に、「催促がましさ」です。
その道具が単独で役割をこなすことは難しく、iphone(ハード)とアプリ(ソフト)が一対になり、特定の任務を推敲するように、その道具がどんな他の道具と密接なのかを特定しやすくなると思います。これにより、その道具を取り巻く周辺環境を引き出しやすくなると思われます。
また、その周辺環境の道具が欠如している状態を前提に質問をすれば、また課題になりうる存在に近づきやすくなると思われる。

最後に、「邪魔になるもの」です。
その道具は、使われないとき、どんな邪魔な存在なのかも知ることができます。
アプリのホーム画面エリアにあるとしても、頻度が低いアプリは、邪魔でしょう。
この邪魔という存在を認識する意味は、思い出しやすさなどに直結すると思います。
定期的に使われないものは、忘却され、「プロダクト≒道具」」として使われなくなり、ユニークユーザー数現象などの致命的な状況を招くことになる。
なので、例えば競合に近い存在が、どの程度「邪魔になっているか」を調べることで、新しく企画するプロダクトは、どの程度邪魔さを回避していればいいのか、という指標や指針を作れそう(な気がする)。

f. 終わりに
「課題認識は難しい!」。改めて課題を認識という、このとても当たり前で、僕らUXデザイナーがいつも向き合っている存在ですが、その意味を深く考えて来なかったことに、今更ながら気づきました。
もっと哲学も学び、課題という存在や意味合いはどんなことなのか、そしてそれを認識しやすくするための「導きの糸」や「概念装置」はなんなのか、そういったことを今後も緩やかに研究していこうと思います。

以上です