「迷宮」
『迷宮〜愛する人と過去を共有することについての思考』
いよいよだ。
僕は彼女の心の迷宮に足を踏み入れた。
全てを受け入れようと決めたからだ。
その迷路の出口は一つしかない、おそらく。
【しかし、入口はいくつも存在する】
一つの入口からは、他の入口は見えない。
入口から入った僕は、未来への希望の光を松明にしながら、一歩一歩前に進んでいく。
いくつもの曲がり角があり、いくつもの十字路があった。
僕は手探りで進んでいく。
一瞬、出口から射す光が僕の目に止まる。
僕は急いで出口に向かう。
希望の光に包まれた出口へ、、、
しかし、それは出口ではなかった。
【それは、いくつあるのかもしれない、無数の入口の中の一つだった】
やれやれ。
深いため息をついた。
でも、僕は諦めずに【出口だと思った入口】から再び迷路の中に入っていく。
迷路の中には、様々なものが落ちている。
断片的な記憶の欠片。
僕は注意深く記憶の断片を拾い集めながら、僕の記憶の容れ物にしまっていく。
【分類、整理しながら】
まるで、考古学者みたいだな。
迷路に落ちている記憶の断片は、僕の頭の中で新しい記憶となって集積されていく。集積された新しい僕の記憶は、まるで、昔からそこにあったもののように僕の心に心地よく収まってゆく。
そう、
【とても、自然に】
僕は、最初、出口を探すことだけを目的にしていた。でも、それはきっと、間違っているんだと気付いた。
僕は、彼女の心の迷宮、そのものを受け入れなければならない。そのためには、出口を探すのではなく、
【すべての入口を探す必要があるのだ】
全ての入口を探し出し、全ての記憶の断片を集め、その全てを受け入れる。
迷路は複雑に入り組んでいる。
しかし、僕は決してあきらめない。
ただひたすら歩く。
一歩一歩、着実に。
彼女の記憶の断片を集めながら。
いくつあるやもしれぬ
無数の入口を求めて。
全ての入口が発見できたとき、出口に向かう秘密の通路がきっと僕の目の前に現れる。
その通路はまっすぐ出口まで伸び、
僕を幸せな場所に、導いてくれるだろう。
出口に向かう秘密の通路。
それは
あなたが
僕の全てを
受け入れてくれた
証【あかし】
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