【短編小説】逆上がりと興奮

放課後、小学四年生の幸一は校庭で逆上がりの練習をしていた。父親と逆上がりができるようになったら好きなゲームを買ってもらう約束をしているのだ。しかし、何度蹴り上げても幸一のお腹は鉄棒に届かない。

「幸一くん、何してるのー？」

幸一の幼馴染の美代子が声をかけてきた。薄いブルーのトレーナーに黒いスカートがよく似合っている。

「鉄棒だよ、見てわかるだろ」
「鉄棒好きだっけ？」
「別に好きじゃないよ」