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馬洪 経済体制の改革 1979/08/17

馬洪經濟文選   中國時代經濟出版社, 2010, pp.12-27
1979年8月17日中共山西省委員会直属機関幹部会での報告 この報告は、この時点(1979年8月)での意見の違いを記録している点で貴重である。

p.12 我々の現在の経済管理体制は基本は20世紀50年代ソ連から来たものだ。早くも30年が経ったが、基本はほとんど変化していない。去年党の十一届三中全会は我々の経済体制は改革されねばならないと確定した。今年の五届人大二次会議はまた全面改革の推進を提議(提出)した。最近、北京の経済工作者、経済理論工作者は一緒に体制改革問題について何度も討論した。現在私は討論の情況について少し紹介し、考え方について説明したい。
 我々の現行経済体制の最大の矛盾は行政管理が経済の内在連携を切断していることだ。地区と部門管理、横と縦管理の矛盾、人、財、物それぞれの所管、生産、供給、消費の間が互いに連接(銜接)していない。主要には以下の4つの問題がある。
 第一の問題は上から下への実行指令性計画は、管理が過ぎていて経済を殺している。全国の産品は数十万種ある。国家の計画には入るのはわずか百余りである。その他は国家はすべてを列挙せず管理もできないが、管理しないというのはよくない、これは大きな矛盾である。こうした仕方の結果はいかなるものか?われわれの品種はいいし、区分もいいが、種類は多くなく、ますます少なくなった。誰もがこのことの影響を受けている。たとえば我々の北京の百貨大樓,その商品の種類は以前に比べ減ってしまった。去年私は日本を訪問したとき、東京で三越百貨店と呼ばれる百貨店を見た。それは大きな百貨店で、50万種の商品をもっていた。我々は香港を経由して戻るとき、中国百貨公司とよばれる香港で開いている百貨店を見た。香港では中間規模の店である。そこの商品は何種類あったか。3万あまりである。我々の王府井の百貨大樓には何種類の商品があるか。24000種である。全国で最大の上海第一百貨公司の商品もまたは3万余りを超えない。それゆえこれは大きな問題だ。たくさんのかつて人々がとても歓迎した商品が、現在は無くなっている。管理が行きすぎて多くが死んでいる、これは問題だ。
 第二の問題は、我々は行政システムに従うことで、行政の区画、行政の層次、経済管理のための行政手段は(これらは)経済の自然連携を切断し、一連の問題ときりがない浪費とを生み出している(ことである)。多くのことがらは企業(と企業)が直接会えば、問題はとても早く解決する。しかしわれわれは現在一段ずつ(役所に)お伺いを立てねばならず、数十の関門があると、その一つでも通らなければ、全体が成立しない。本来はわずかな時間でやれることが、数か月,半年かけ1年かけても、なしえない。この点で着席p.13  されている同志の皆さんは、とくに経済を担当される同志は、皆この感覚をおもちである。
 第三の問題は、企業自身が主導権を全く持っていないことである。なにがあっても上級の措置に任せ、上級の判断に任せることは企業を死に追いやる、結果として、企業はただ上級に対して責任を負い、(ただ)計画に対して責任を負い、大鍋飯を食らい、積極性を思っても積極的に動かない。我々は待つこと、頼ること、選択することに反対はしないが、現在の体制は手を伸ばすこと、自ら脳の筋肉を動かすことを、奨励している。企業はどうすれば自ら上手く動けるだろうか?
 第四の問題は企業経営の巧拙と生産者個人の物質利益が必ずしも直接結びつかないことだ。企業の経営がよいか経営が悪いかどちらでも同じ、労賃も一緒、ボーナスも同じ。企業経営がよいので労賃が少し増える、ボーナスが少し増やせるというのではない。企業経営が良くなかったが、労賃は少し増える、ボーナスも少し増えるというのだ。 
 現在誰もが改革にみな賛成している。しかし同時にまたなしがたい事情も感じている。誰もが改革を要求しているが、その意見には分岐がある。概括的に言えば、改めるとする意見は三種類。第一種の主張は経済管理体制は高度に集中されるべき、すなわち第一次五か年計画を回復すると言ったあの種のやりかたである。人々はこの種の方法を古典的(古典式的)中央計画体制とよんでいる。この種の体制を主張する人にはつぎのような(意見も)ある。例えば部を設けて、そこに権限を集めることが必要。何か不都合があれば、地方のそれであれ、企業のそれであれ、権限をすべて集める。この種に意見がある。しかし圧倒的多数の人はこの種の意見に不賛成である。このようにすれば、中央と地方の間、部門と部門の間、地方と地方の間、中央、地方、企業の間の矛盾はとても大きくなる。我々はすでに何度もそのことを経験した、誰もが深く感じているところだ。
 第二種の主張は分散管、管理を分散するという主張で、省、市、自治区が(それぞれ)自らを主とする地方計画経済を実行するもの(である)。というのはこれまで地方には権限がなかったので、何人かの同志はこのようにすれば、それぞれが本領を発揮して(八仙過海)それぞれの能力を発揮し、現在の経済管理に存在する問題をすべて解決すると考える。この種の意見を、一部の地方工作同志は賛成している。この方法については、多くの同志とくに中央の部門内部で工作している同志は反対している(不賛成)。幾つかの試行が証明したように、このようにすることは全く体制問題を解決しない。問題はどの地方においてということにある。問題はこの種の体制はなお企業の主導権問題を解決していないところにある。ただ中央集権の問題を省市の頭上に移しただけである。(中略)
p.15  第三種の意見は、企業にもっと自主権を与えて、経済規律に沿って経済活動を組織させるもの(である)。これは部門と行政区画の制限を打ち破り、行政管理系統と経済管理系統を分離し、行政管理系統は行政管理系統、経済管理系統は経済管理系統とするものである。企業を中心において、社会化大生産の要求に照らして、どうすれば経済効果が良いか、合理的に組織するにはどう組織するか。地方にある企業はその地方政府に納税する。地方政府はただ政治思想の指導と、公共事業の実施とに責任を負って、企業間の協調を進める。企業は、生産・分配・交換方面で多くの自主権をもつ。国家は企業に発展の方向と要求を指し示すが、国が計画する民生重要製品以外は、指令性計画はできるだけ減少させ、計画指導のもと、市場調節を実行する。多数の同志が考えるところでは、(この)第三種の方策が、我々の現行体制の中に存在する主要問題を解決できる。しかし(これを)実行するのはそれほど簡単ではない。理論上明らかにして、多くの細かな点を(また)明らかにするには、なお大量の工作が必要であり、多くの過渡段階を通過する必要があり、なお多くの妨害勢力と遭遇せねばならない。
(以下略)

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