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朝ご飯などの話

さて、とあるところでおいしい朝ご飯の話を読んだので、おいらも朝ご飯の話を書こうかと思い立ちました。

日本の朝ご飯は、1日3食の記念すべき1食目的に、昼食や夕食に負けず劣らずの品ぞろえで食べることになっていますね。外で食べるランチは軽食で済ませ、朝と夜にしっかり食べるスタイルの人もいるのではないかと思います。ご飯、みそ汁、おかずには魚、漬物などが並ぶのが少なくとも戦後の日本の一般的朝食のイメージだったのだと思います。

ところが、例えばイタリアでは、朝食は食事という位置付けではなく、一般家庭でもカプチーノと菓子パンのようなブリオッシュ、ビスケットなどで簡単に済ませるのが当たり前で、ヨーグルトや果物でもあれば立派な部類だと思われます。働きに行く人は、それこそ家を出るときにはちょっとオレンジジュースを飲むくらいで、どこかのBARでカプチーノとブリオッシュ(コルネットとも呼ばれるイタリア式クロワッサン)を食べておしまいという人が多いです。中にはコーンフレークやパンにジャムやヌテッラをぬったモノなどを食べて割としっかり朝食をとる人もいますが、基本朝は甘く軽いものですませるので、ハムやチーズを食べる人は少数派。

そう、日本とイタリアでは朝食に対するイメージが随分違うんですよね。思い出すのは、我が家の娘が小さかった頃、朝食にソーセージを食べて出かけた日、朝に気分が悪くなってもどしてしまったことがあります。風邪だったか何かでちょっと体調が悪かったんでしょうね。その日に大家さんとその話をしていて「朝は何か食べていたの?」と聞かれ、ソーセージを食べていたと話すと「ああ、朝にはちょっと重いかもね」と眉をひそめられたことがあります。そりゃイタリア人からすれば、朝からご飯にソーセージを食べるなんて、しかもこんな小さな子供がという話なのですよね。こういうのも文化の違いで、我が家も子供達が学校へ行くようになってからは完全にイタリア式の朝食になったような気がします。

しかしである、そんなイタリアでも、仕事で出張に行った先のホテルでは大体ビュッフェ方式の朝食が用意されているので、一応ハムやチーズも並んでいます。外国人用でもあるんだと思うけれど、それでもなおブリオッシュやケーキとカプチーノで朝食をすませる人の方がイタリア人には多いようです。

思い付く中で、そんなイタリアでもちょっと変わった朝食を食べるのがジェノヴァ。あそこはフォカッチャの本場で、オリーヴオイルたっぶりのフォカッチャジェノヴェーゼが有名なところですが、朝食にもフォカッチャを食べるのです。そして、カプチーノにビスケットを浸して食べるように、フォカッチャを浸して食べる人もいるのです。そういう場合も、イタリアではカプチーノは朝食に必須であることが確認できます。

話がそれますが、カプチーノは基本午前中の朝食仕様のカフェなので、ランチの食後からは飲むならエスプレッソだけになります。ランチや夕食の食後にリストランテでカプチーノを頼むのは基本外国人だけです。法律で決まっているわけではないので、頼みたい人は頼めばいいんですけれどね。

フランスのパリに出張に行くと、出張先の会社が取ってくれたホテルがあり、まあ、その辺のビジネスホテルだから、あまり期待しないで朝食を食べに行くと、さすがフランスという感じで、クロワッサンがやたら美味しいので驚いたことがあります。もちろん街中のおいしいお店のものほどではないのでしょうが、それにしてもおいしいのですよね。やっぱりお国柄ってあるもんだなあと思いました。

ドイツに出張に行くと、朝食のビュッフェでもやはりソーセージが出てきます。フランスがクロワッサンならドイツはソーセージ。ケルンのお気に入りの宿でも朝食には2種類のソーセージのグリルが出るのですか、朝食用にはサイズが小さいソーセージがあるんですよね。街中のソーセージスタンド、カリーヴルストを食べるようなお店では大きなソーセージが定番で、小さいのは見かけませんが、朝食には小さいのが出てきます。ハムやチーズもあります。でも、イタリアに住んでいると、他の国で食べるハムやチーズはイタリアほど美味しくないことが多いため、出来れば別のモノを試したいと思う派です。ハム類で言えば、スペインはイタリアとは違った最高においしいものに出会うことがあるけれどね。

ドイツでも、ミュンヘンに行くとまた様子が変わり、あそこは朝から白いソーセージの茹でたやつがポットに入ったのを食べるのです。ホテルで食べると、コーヒーをのみなからということになりますが、街中のお店では朝からこれを食べながらビールで朝食という人も多いようです。あの白いソーセージは、グリルにした場合はそのまま食べるけれど、茹でた場合は皮をプリっと剥いて中身だけ食べるんですよね。おいらはお皿に出してナイフとフォークでごにょごにょして皮を取るけれど、街中で見かけるビールと一緒に食べているおっさんは、片手でつまんで端っこの方をかむような感じでプリっときれいに皮を剥いていました。あれができるとカッコいんじゃないのかと思ったけれど、披露する場もないので練習はしたことがありません。

イランに行ったときは、ホテルの朝食会場には厚めの紙のようなペラペラのパンがあり、そのパンにジャムを塗るなりクリームチーズを塗るなりして、ハムなどと一緒に食べていました。別のところにも書いたけれど、イラン人の人がホテルに迎えに来てくれるついでに、焼き立ての石ころを敷いた窯で焼くという薄くだだっ広いパンを切ったものを持ってきてくれて、これがやたらとおいしくて、この時も驚いたものです。パンには石ころの後が付いて模様になっていました。多分フォカッチャの遠いご先祖様みたいなパンなんだと思いました。ペルシア文明の最盛期に洗練された食文化の残るイランは、パンもやたら種類が多く、このペルシアのパンこそがトルコからインドあたりまで広がっている似たようなパンの本家なのではと思った次第です。パンに限らず、串焼きなども多分そういう経緯で広がった食文化なのでしょう。中国くらいまではそういう系統のものがありますよね。

パンは東からヨーロッパに伝わり、ヨーロッパでは釜の発展改良に伴い、ヨーロッパならではの独自のパン文化へと洗練されることになり、フランスのクロワッサンとかに行きつくわけですね。

おいらは仕事で行く先々で、それぞれの食文化を楽しむことが大好きで、これは食いしん坊だから自然とそうなるわけですが、いつからこんなに食いしん坊なんだろうと考えると、中学校の修学旅行を思いだします。倉敷で生まれ育ったので、他の地域の人は修学旅行で倉敷に来るところもあると聞きますが、まあ地元で旅行するわけでもなく、小学校の修学旅行で京都奈良へ行き、中学校の修学旅行では広島と長崎へ行きました。そう、長崎で泊まったホテルの夕食で、食べる前に先生から歴史的な背景なども説明があって初めてしっぽく料理というものを始めて食べた時、なんじゃこりゃあ、ぼっけうめえじゃあねえかと思った感動を今でも覚えているのです。多分クラスメイトであれほど内心で感動していたのはおいらだけなんじゃないかと後から思いました。

倉敷の百貨店でフランス際的なイベントがあると、自転車をこいで出かけ、カマンベールチーズを買ってきて一人で家で味見しているような子供でした。なんでそうなったのかは分かりませんが、中学、高校の時代には既においしいものに執着する性質が芽生えていたようです。

さて、イタリアという国は食べ物がおいしいことでは国際的にも絶対的な評価があり、確かに大体何を食べてもどこで食べてもおいしい国で、秘密ということもないんだろうけれど、イタリアはローマ帝国崩壊後は都市国家としてバラバラの国だった歴史が長く、地方によりフランスの一部だったりスペインの一部だったりオーストリアの一部だったりした国なので、再統一された現在のイタリアでも、地方ごとの料理の特色が大変幅広く、それがどこに行ってもおいしい名物料理がある結果になっているみたいです。

おいらはどこの国でもそれぞれにローカルなものを食べ、それぞれのおいしさがあると思っているので、大体何を食べても満足するため、妻に言わせると「ヒロシをグルメだと思っている人は間違ってる。なにを食べてもおいしいというんだから」と笑われます。

中国、香港から深センを通り東莞市の工場へ出張けいくと、やたらと広い部屋の大そう立派なホテルへ通されます。香港へ主張へ行くようになる前に初めての中国出張で泊まり、何度か再訪しているのですが、ここでの朝食もかなり豪華なビュッフェで、中国式とヨーロッパ式メニューがどちらも充実していて、案外どれもちゃんと作ってあります。中国の点心だけの朝食にもなるし、ちょっとした中華のメニューの朝食にもなるし、選び方次第でそれこそクロワッサンとヨーグルトとコーヒーの朝食にもなります。中華粥の上にあれこれ始めて見るものをトッピングして食べるのもたのしかったなあ。連泊する時は、そうやって感じの違うメニューにして楽しんでいました。そして、ここで初めて食べたのがエッグタルトで、香港やマカウでおなじみのポルトガル起源の例のタルトです。それまで食べたことがなかったので、なんだ、このタルトはイタリアなら上に果物でも乗っていそうなやつがなにも乗っていないじゃないかと思いながら、食べてみると結構おいしい。その後香港出張の際に街中で売ってるやつを食べたらびっくりするほどおいしくて、今でもミラノの中華街で時々買います。家でも作ったことがあるけれど、まあ手軽においしいのが買えれば気が向いたときにいいよね。

出張でなく、初めての海外経験で若かりし頃に滞在したNYCでの思い出といえば、典型的なアメリカンダイナーのようなお店で、コーヒーとゼリーを頼んだ時、日本でプリンやゼリーを頼んで出てくる量を想定していたところに、お皿にドバっと、想定量の5倍くらいあるのが出てきて驚きました。確かその上にクリームを乗せるかと聞かれ、慌てて断ったはず。でも、おいしくなかった記憶はないので、あれもおいしく残すことなくお腹に収まったはずです。

さて、朝食、ブレックファーストといえばUKなのです。イングリッシュブレックファーストというくらい。その昔読んだ本では、イギリスは料理があまりおいしくないといった人に、それなら3度ブレックファーストを食べればいいと吉行淳之介だったか開口健だったか忘れたけれど答えていたというエピソードがあるくらい、朝食では有名なUK。

おいらはFIATの現行500が発売になる時、イタリアのデザイナーが15組ほど参加してアクセサリー商品のデザインをする企画があり、それに参加していたので、ミラノでのイベント後、その展覧会をロンドンのFIATフラッグシップストアでも開催するという時に呼ばれ、ロンドンのホテルに泊まりました。なにしろFIAT社の招待なので、ホテルも立派で、そこでの朝食が多分人生で一番豪華なビュッフェだったと思います。中国のホテルのも豪華ではありましたが、ロンドンのホテルの会場では、玉子やベーコン、ソーセージ、ステーキなどをその場で調理してくれるシェフがいて、みんな好き勝手な注文をして朝からモリモリ食べていました。同行のイタリア人達も、あそこではさすがにイングリッシュブレックファーストを楽しんで、クロワッサン以外にもあれこれ食べていたような記憶があります。

朝食以外にも、街中で食べたフィッシュアンドチップスもおいしかったし、パブで食べたミートパイとかも大体おいしく、なんだ、みんなロンドンはまずいまずいって言うけれど、フツーに美味しいものが食べられるじゃないかと思っていたら、イタリア人でロンドンの有名な建築家の事務所で働いていたデザイナーが「ロンドンは食事もおいしいよ。なにを食べるかによるけれど、きちんと調理してあれば食べれないほどまずいなんてことはないよ」と言っていました。それで、パブで食べた時の料理も、おいしいけれど、薄味だったんですよね。あれはお店で提供する時は薄味で、味が濃いのが好きな人はどこのテーブルにも置いてあるソースやらケチャップやら塩、胡椒を自分でかけて好みで調節するということなのかと考えた次第です。それでも、パブなどに行く時にずっと一緒にいた大の仲良しのミラノのイタリア人デザイナーはロンドンの食事はむむむ、とあまり気に入ってなかった様子でしたけれど。まあ、イタリア人は一般的にイタリア食への愛が大きすぎて、’他の国の料理はあまり褒めないんですけれどね。

朝食の思い出をあれこれ書くだけで結構長い話になってしまいました。大体が年寄りの話は長いものなんです。よいこのみなさんは長いものに巻かれないように気を付けてください。

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