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アメリカの鱒釣り。ユーモアについて

 村上春樹の「風の歌を聴け」に多大なる影響を与えたリチャードブローティガンの代表作「アメリカの鱒釣り」を読みました。
書店で偶々文庫本を発見して買うことが出来ました。

 日本語訳は藤本和子さんで、翻訳の観点から見てもとても優れた作品とされています。

本書の特徴

 この作品は、「アメリカの鱒釣り」という存在について色々書かれているショートショートのような作品が4、50個ほどあるという作品です。しかし、それぞれのお話で関連性はそこまでなく、独特な比喩や情景描写、ブローティガンのユーモアによって描かれた世界が各々広がっています。

好きなお話

 好きな話は、「クールエイド中毒者」「アメリカの鱒釣りテロリスト」です。

「クールエイド中毒者」は、クールエイドという粉末を溶かすお菓子をめちゃくちゃ薄めて作る貧しい子供の話です。中毒者はワイノと読み仮名がついていて、ワイノとは安いアルコールしか買えないアルコール中毒者のことみたいです。

「アメリカの鱒釣りテロリスト」は、六年生の子供が一年生の子供たちの全員の背中にアメリカの鱒釣りと黒で書いて、それを校長に怒られるという話です。

どちらも、幼い子供についての話ですが、どこか懐かしさを感じる作品で好きです。
ブローティガンはボヘミアンでリアルな良い意味で人間らしい存在として「アメリカの鱒釣り」を作り出し、アメリカや人間の原風景をそこに投影したのだと思います。

散文詩のような不思議な読書体験

 短く、奇妙で、どこか面白くて懐かしいブローティガンの文章は、短さや関連性のなさ故に、メッセージを探し出そうと逆に読むのに時間がかかりました。
しかし、こんな読書体験は他では味わえないと思うと、凄い作家だと思います。

この作品が気になった方は、風の歌を聴けも読んでみて下さい。勿論、アメリカの鱒釣りも読んでみて頂きたいです。


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