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小さなティール 組織 〜贈りあいと共感でなりたつチームの作り方(1)

会社や地域の中のあなたの小さなチームにおける地に足のついた運営論としての「ティール 組織」のお話。職場でも地域でも、自分がチームを持った時にはどこでもこのやり方で進めることができます(一度コツをつかんだらきっと今までの方法には戻れなくなると思います)。指示も納期もノルマも担当も、そして議論さえもいらない。コンセンサスによらないため全体会議もほぼない方法になります。生まれた余力を用いて、あらゆるやりとりが共感的なコミュニケーション(NVC)になっていきます。第一回では、私がこのスタイルを見出すに至ったシェアハウス「ウェル洋光台」の話をしたいと思います。

私がオープン間もないウェル洋光台に入居したのは2007年の初春。ウェル洋光台は、地主の増尾さんが始めた単立のシェアハウスで、きちんとしたルールがありませんでした。でも、そこが心地よかったのです。その心地よい状態を維持されていくにはどうしたらいいのか。そこから、自然にハウスの理念と言えるものができてきました。

結婚してハウスを出た私たちが、いろいろな成り行きから出戻ってきて運営を任された当初、理念型(ティール 組織の言葉だとグリーン型)で運営を進めていました。はじめは、とても有効に機能したと思います。半年もしたら、贈りたい人が贈り使いたい人が使う調味料コーナが自然に立ちあがり、掃除も料理のおすそ分けも、贈りあいが溢れるハウスになりました。

けれども、理念の影響力が強くなるにつれ、かえって理念があることで窮屈に感じる人もでてくるようになりました。そこから、ハウスはティール 組織型への変貌を進めていくことになるのです。その頃出会ったアズワン鈴鹿コミュニティがその速度をぐっと早めてくれました。

このあたりのことを話した2015年のGreenzの鈴木菜央さんとの対談記事は、ウェル洋光台は当時無名の存在だったにも関わらず1万を超えるシェアをしてもらいました。

なお、この時は、まだ、ティール 組織という言葉はありませんでした。「ティール 組織」が出版され、ウェルでやっていることはずっと人に説明しやすくなったのはその後のことです。

一方、職場(大手電機メーカー)では、アジャイル開発を調べたり自分たちでやったりしてきたこともあったのですが、どこでも失敗事例が多く、導入はなかなか進んでいませんでした。なぜ失敗してしまうのか。アジャイル開発のキーポイントは、プロセスではなく、チームの文化のほうにあるのであって、今から考えてみれば、そのエッセンスがティール 組織だったのです。

そのうち、自分のチームでの試行錯誤を通して、ウェル洋光台で学んできたティール 組織の考え方は、昔ながらの大企業の中でも十分に活かせることがはっきりわかってきました。しかも、半年で解散するような期間限定のチームでも十分に導入できるのです(もちろん効果は限定的になるのですが)。

納期もノルマも担当も、そして議論さえもいらない。指示はないがだからといって全体会議はほとんどない方法。こう書くとむちゃくちゃに聞こえるかもしれないけれども、革命的な「銀の弾丸」ではなくて、至極まっとうなやり方なんだなという印象です。だから、「成果がぐんぐんでる技術」というより、「成果を落とさず気持ちが楽になる技術」、「人間関係が育ちやすく長いスパンで見たら大きな資産が育つ技術」ぐらいで捉えてください。「扱いにくくて困っていたメンバがチームに貢献してくれるようになった」ぐらいのことはあるかもしれません。

一方で、ティール 組織に興味を持っている人たちの話題は、経営論的な大上段の視点が現状まだまだ多いように思います(僕もそうだったわけだけど、「ああ、うちはティール 組織だったんだ」みたいなやつですね)。そうなると、ティール 組織は、多くの人にはいいなと思っても自分が影響力を持てる話題ではなくなってしまいます。これは大変残念なことです。実際には、ラルーの本にも書いてある通り、ティール 組織は自分が任されている大きな組織内の期間限定のチームであっても、十分に適用しはじめていくことができる技術なのです。 

今回投稿する「小さなティール 組織」のシリーズは、2018年の冬から2019年の春にまとめたもので、少数の人たちにしか共有せず、寝かせていたものの蔵出しです。最近「ティール 時代の子育ての秘密」という素晴らしい研究本を世に出した天外さんも「F.ラルー『ティール組織』発売から2年半。ようやく謎が解けてきたぞ!」とSNSでつぶやいているし、そろそろ私がこれから書こうとしているようなチーム運営論としてのティール 組織の本も出てくるんじゃないかと思っています。

続きはまた、次の投稿で。


※ティール 組織のことを理解したいなら、まずはこの本一択です。この投稿でも、挿絵を引用させてもらっています。





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