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小さなティール 組織 〜贈りあいと共感でなりたつチームの作り方(5)

進化する目的 – 本来性に耳を澄ます

全6回に分けて投稿を予定している、会社や地域の中のあなたの小さなチームにおける地に足のついた運営論としての「ティール 組織」のお話。第五回目では、ティール 組織の3つのブレークスルーの三つ目「進化する目的」を取り扱います。理念やコンセンサスに頼らないことで、かえって意義深くなっていくあり方です。感想お待ちしています。

Wikipediaのように制作する。

すべての制作物は原則として誰でも許可なく編集することができるようにします。もし、編集合戦が起きたなら、きっと楽しいイベントになることでしょう。誰でも自由に編集できるけれども、誰でも自由に元に戻すこともできる。人の善意を信頼しあい、人の不完全さを楽しめる間柄であれば、きっと楽しく進められることでしょう。Wikipediaは誰でも編集できるけれども、個性的で創造的ではあっても統一されており品質の高い制作物が出来上がっています。その根底には、必要な対話を行い、互いの善意を信じ合おうとする文化があります。信頼が醸成されているチームであるならば、不完全であっても満足のいく作品が作られていくことでしょう。品質保証手続きは外的理由がなければ不要です。

プロジェクトや場、人の可能性を探求する。

プロジェクトはコミットした成果目標や納期を抱えています。会社や部署の秩序を重んじ、短期成果も大切にすることはもちろん重要です。一方、チームメンバ一人一人の成長を含めて、プロジェクトを通じて成し遂げていきたい長期的なテーマもたくさん抱えているのです。短期的なことにとらわれて全体を見ないのは愚かなことです。あれか、これかでなく、そのどちらも大切にできる道がきっとあるはずです。すぐには見えないからこそ、経験や直感を総動員して可能性を探求する価値があるのです。達成することが途方もなく難しいけれども、本来的であるような目標を対話や探求の中で深め、本質を絞り込み、描きだします。全員に開かれており、可能性の探求に長けた人が自然に多くを担います。

「目的」も「解決策」も固定しない。

プロジェクトの目的が明確でないのなら、成果物の仕様が明確になるはずはなく、解決策については、もっと明確ではないのです。研究や共創の分野では特に。アイデアややりたいことは忘れないよう常に書き出して、チームでそのリストを共有しておきます。チームの一員として、「今」リストの中からやるべきことは何か。各メンバの感覚センサーが敏感に感じ取り、のびのびとまっとうに取り組めるように工夫します。どうしたら早くフィードバックが得られるのか、それぞれのタスクに対して、仮説の検証に不要な無駄を削ぎ落とし、厳選した作業に取り組みます。事前に見通しを立てることは大切なことですが、立てた筋道が最善であることはわずかなはず。不要に固執することは愚かなことです。

「仕組み」を固定しない。

1、2週に1回、それぞれが静かな時間をとって、ふりかえってみる時間を設けることは良い習慣となるでしょう。けれども、心からやりたいと思えない人がいるならば、その特別さを大切に尊重します。ふりかえることは、睡眠のようになくてはならないたいせつな営みです。毎日の日会についても、そもそも、よく話し合えるために存在するので、必要な人同士が、必要なタイミングで日々何回も話せるようになって、いつかいらなくなるのが理想ではないでしょうか。習慣の力を、きちんと認識することは大切なことですが、その上で型にとらわれないことがもっと大切ではないでしょうか。「ルール」を「取扱説明書」に。対話の上で、成り立たせたい人が集まる習慣だけが自然に維持されていきます。

失敗を楽しむ。早く感じ取る。

フィードバックを早く得ることができれば、たくさん挑戦し、たくさん失敗することができます。たくさん失敗することができれば、よりよいアイデアが浮かんで、より早くより素晴らしい成果を上げることができます。みんなでたくさんの馬鹿らしいアイデアを語り合い、アホらしい失敗を重ねる中で本当に素晴らしいものを生み出します。先を見据えながら物事を進めることは当然ですが、試行錯誤し軌道修正できることがもっと大切です。重要なこともよく共感しあってから各自の直感に基づいて自由に大胆に行います。どうやったら少ない資源で早く仮説を検証し、結果を、各自が感じ取れるのか。大変重要なことなので、常に、知恵を絞りつづけ、仕事の進め方の変革のために資源を割きます。

ストーリーを用いる。

共感を中心にした取り組みをチームで進めるとき、「物語る」ことは本来の力を取り戻します。互いに感じたことを物語ることは、メンバの直感を取り戻し、「波紋を呼ぶ」ことで、議論に頼らずに、チームで成し遂げていくことがらを方向付けます。プロジェクトは、良くも悪くもハプニングがつきもので、ものがたりは意外な展開を迎えます。ものがたりは本来即興的なものです。子供が語りあい、自由に遊ぶように、仕事を進めていきます。それぞれの異なる個性と能力が意図的に引き出され、Jazzセッションのように互いに補い合いながら、全体として創造的で即効的なハーモニーを奏でます。この手引きそのものも「ものがたり」と言えます。特に大きな目標は「ものがたり」で共有していきます。

挿絵の引用元


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