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Hirotomusicと読書 第6回 榎本まみ「督促OL修行日記」

今回紹介する本は、いつもと趣向を変えて、小説ではなく現実の世界の話を紹介します。

この作品は、作者の榎本まみさんが自身が働いてきたクレジットカードのコールセンターで支払いを滞納しているお客さんに督促をする仕事の経験をまとめた体験記です。

この作品を読んだのは僕が高校3年生の時で、僕が時々読む、元外務省主任分析官の佐藤優さんの著書でこの本がおすすめされていたのがこの本を読んだきっかけです。

この本で紹介される著者榎本まみさんのクレジットカード支払いの督促のお仕事はとても過酷で、精神が絶対におかしくなってしまうような仕事です。

大学を卒業して、会社に就職し、クレジットカードの支払いの督促のコールセンターに配属された著者は毎日のように、債務者に逆ギレされ罵倒され、日々、精神的に疲弊していきます。また同期入社の人たちや他の同僚も次々と辞めていってしまいます。

しかし、著者はそれでも負けずに仕事を続け、徐々に逆ギレしてくる債務者にお金を払ってもらうようにするコツを身に付けていきます。

それは例えば、「お金を払ってください」という前に、本当は言う必要はないですが、あえて「ごめんなさい」という言葉を置いたり、論理的に口で攻めてくる債務者は、大抵プライドが高いので、必ず腰を低めに対応するなどです。

また著者は、自分の督促のスキルアップのために動物の行動や心理学についての本をたくさん読み、それを督促に生かしていきます。

僕が印象に残ったのは、人は足元に気分が表れること、そして、人間も含めた動物界では怒鳴られると自然に固まってしまうようにできているというところです。

人は足元に気分が表れるそうで、不安になると足がそわそわします。だから著者は、逆に自分の足元を意識的に整えて、精神を安心させられると考え、例えば怒鳴られて金縛りのように固まった時は、足元に力を入れ、その金縛りを解くそうです。

このように、この本は単に督促を仕事にするOLの体験記ではなく、普段の人との関わりや、接客業の人たちにとってもタメになる話がたくさんあります。

最後に、私がこの本の中で教訓にしたいなと思ったエピソードを紹介させてもらいます。

それはわざわざカード会社まで来て、さんざん文句を言ったお客さんが帰ってすぐに、会社の外で騒ぎがあり、見に行くとそのお客さんが倒れていて、救急車を呼んだそうです。しかし、なぜか救急車が来ません。実はこの人は、病院代や医療費を踏み倒す常習犯で、その市内の病院はどこもその人を受け入れてくれなかったそうです。だから、著者の先輩たちが仕方なく行政区の境目の病院まで、その人を運んで、そこで救急車を呼んだそうです。
このエピソードを紹介した後、著者は「信用を失うことは命を失うことに等しい」と述べています。

一見、普通の業種別の体験記に見えて、さまざまな場面で教訓となるエピソードが、この本にはたくさんあります。
普通に読み物としてすごく面白いので良かったら皆さんも読んでみてください。

今回も最後まで読んでくださりありがとうございました!

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