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Hirotomusicと読書 第8回 「ティファニーで朝食を」

今日、紹介するのは世界中で愛される不朽の名作で、オードリー・ヘップバーンの主演の同名映画の原作としても有名なトルーマン・カポーティの代表作「ティファニーで朝食を」です。

この作品は、ニューヨークのマンハッタンのブラウン・ストーンというアパートに1943年に暮らしていた無名の作家が、ホリー・ゴライトリーというニューヨークの社交界で裕福な男たちと交際し、生活しているアパートの隣人と過ごした日々を回想として語っていく物語です。

ホリー・ゴライトリーという女性は自由奔放でしばし夜にニューヨークの社交界の男性たちを部屋に呼んでパーティを開いたり、鍵をなくしたと言って、真夜中に上の階に住む日系人のカメラマン、ユニオシさんや語り手の作家を呼び鈴で起こしたりするなど、とんでもない女性です。

しかし、一見すごく華やかに見える社交界で自由気ままに生きるホリーですが、心の中に誰よりも"寂しさ"を抱えています。

ホリーは改札の名前をミス・ホリデー・ゴライトリー、トラヴェリング(旅行中)とユーモアのあるものにしていますが、それは彼女の心が安住の地に落ちつかず、彷徨い続けていることを表しています。

ホリーは彼女の持つその不思議な魅力から、語り手の無名の作家を含め、たくさんの男性たちが彼女に恋をしますが、誰よりも"愛"を求めているのは彼女なのです。

私はこの本の中で、ホリーが使う"いやったらしいアカ"という表現が好きです。

「ブルーっていうのはね、太っちゃったときとか、雨がいつまでも降りやまないときにやってくるものよ。哀しい気持ちになる、ただそれだけ。でもいやったらしいアカっていうのはもっとぜんぜんタチが悪いの。怖くってしかたなくて、だらだら汗をかいちゃうんだけど、でも何を怖がっているのか、自分でもわからない。何かしら悪いことが起ころうとしていることだけはわかるんだけど、それがどんなことなのかわからない。あなたそういう思いしたことある?」

私も時々、わけもわからない不安に苛まれ、一日つぶれてしまう時もあります。秋になるとそういう日が増えます。私はこの"いやったらしいアカ"(英語ではmean reds)という表現に出会った時、自分の気持ちはまさにこれだと思いました。

それから私はそういう不安感に苛まれた日は、日記に"今日はいやったらしいアカ"に染まった"と書くようにしています。

自分はこの"いやったらしいアカ"に染まった時に曲を書いて乗り越えようとします。

私の好きなジョン・レノンの曲を聴いていると、彼は彼の"いやったらしいアカ"をそのまま表現してシャウトしている気がします。だから私はジョンの曲が好きです。

今回も最後まで読んでくださりありがとうございました。皆さんに素敵な居場所と心から愛するものが見つかりますように。

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