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判事の家

 松川事件を基に創作された小説を紹介します。
 松川事件は日本がアメリカの占領下にあった1949年に起きた戦後最大の冤罪事件であり、現在でも真犯人の特定はされていない。この未解決事件の真相を追及したノンフィクションや小説は数多いが、本書はそれらとは一線を画する。
 著者の橘かがり先生は、あとがきで、登場人物についてはフィクションが多分に入っている旨を述べられています。
 事件の真相に迫るのではなく、最後まで有罪・死刑を主張した最高裁判事の一家の精神的崩壊を、判事の孫である亜里沙の視点で描くヒューマンドラマ。亜里沙は、逆転無罪確定から43年後(2006年)元被告と面会する。
「そのとき(国家賠償訴訟における国の敗訴)から一家の崩壊が始まった。大きな歴史のうねりにもてあそばれた家族と言えるかもしれない」
 実に考えさせられる小説だった。

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