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ソフィーの世界 に答えがあると思って

私が大学受験浪人していた時に出版された本で、何年かに渡り何度も挫折して、読むのを連続して中断していた本です。以下6点に分け書きます。

1.作中のたとえ話が難しかった・・・
 挫折の理由です。西洋人と私東洋人の文化の違い?年齢の違い?読解力の差?色んな要因があるかも知れませんが、作中で出してくれるたとえ話が全く馴染めませんでした。最初にこの本を手に取ったのは「現代文」を受験の得点源にしていた頃でした、のでかなりショックでした。

2.この本を読み始めたときの、あの期待!
 今は有るか不明ですが、当時私は慶応の文学部、人間関係学科を目指して受験勉強をしていました。入学して「人とどう関係を持ったら悩まなくて済むのか」その倫理を知りたいと思っていました。その悩みというか、問いは浪人中に「自分は何のために生きているのか」という内容にいつの間にか変わっていました。多分、勉強がイヤになってたんだと思います。中学生の頃、定期テストの勉強の度にそう思っていたのをこの頃、よく思い出していました。長年に渡るその問い、への答えを導いてくれる!と期待して、手に取ったものの、プラトンのイデア論の説明を分かり易くしてくれている「洞窟の比喩」で遭えなく挫折します。何度読んでもイメージが湧かない!例えば、読み流したり、読み飛ばす、後で戻る、今はまだ早かったか、という選択肢があることを十代という若さゆえになく、全部読んで理解してなければ、読書と言えないという出所不明の謎ルールに従う一択でありました。そして同じファンタジーつながりでファイナルファンタジーⅤに逃げ込んでしまうという結果になりました。

3.繰り返す期待と繰り返す挫折、それでもこの本に帰ってくる理由
 その後、大学は慶応の人間関係学科ではありませんでしたが、明治の商学部に合格できて浮かれて入学します。コロナ前であったのでめくるめく新歓コンパの予定で色んな事を忘れていきます。そうして大学三年生の就職活動のとき再び、この本を手に取ります。内定が全く取れませんでした。心配してくれる先生や友人から自己分析の反復をアドバイスされます。その度の結果として「なんで働かないといけないのか」とか「バイトではダメかい?」という解答というか問いを幾度と出し続けるという状況の中、この本の事を思い出します。正直に言うと、地元の図書館や大学の図書館でも何度も見かけました。しかし目に入れただけで、次からは見ないようにしていた記憶があります。この時も読み直しますが、130頁当たりの「少佐の小屋」という章で諦めます。660頁ぐらいある本です。かなり序盤です。色々あって就職できてからも「上司のダブルどころかトリプル、フォーススタンダードにYESもNOも言えない」自分に悩んで、思い出したかのように本書を手に取り、また「結婚しないと一人前として認められない」とか「子を残さなければ生きる意味がない」という当時は正しいと思っていた価値観を一つも実現できていない自分に悩んで、再読を試みるも改めて「少佐の小屋」辺りで引き返していました。読めないものの何度もこの本に帰ってくる理由は、読み終えた今になって初めて気づきました。この本の表紙、タイトルの下のサブタイトル、その間にあるミドルネーム、が私にはずっと見えていました。


「その悩み、哲学者がすでに答えを出しています」


※実際には書かれていません。見えていた、という私の思い込みです。

4.例えば、私の悩み「何のために生きているのか」の答え
 作中、「実存は本質に先立つ(サルトル)」という名言がヒントになって、自分なりの答えを持つに至りました。人間は前もって使命が決まっている訳ではなく、使命を持ちたいなら自分で考えましょう、という事がこの名言から私宛てに届きました。シャーペンは文字を書くために作られましたが、人間には「万人に共通する」「普遍的な意味」での生きる理由はないと思います。私は何かをするために生まれたわけではなかった。とすると、私の人生には意味がない、とも言えそうです。一方で、これから意味を作っていく自由、もあります。また、ヘーゲルは古代から続く哲学者達の答えには、誰の答えも間違いはなく、ただ人は次々と新しいことを思い付くと語ったらしいです。それゆえ、自分が何者か?という問いは哲学史の最初の方からあるにもかかわらず、色んな哲学者が色んな解答をしています。もし「どう生きるべきか?」の問いに対して絶対の解答があれば、その答えに沿って生きれば良いので楽な感じはしますが、その答えが自分に合っていなければ苦しいですね。どう生きるべきか?の答えを「各自が自由に決めて良い」としたら、決めるのは大変そうですが、合わない答えを「正解だ」として思い込んで生きるよりは、楽(たの)しそうかも知れない。

5.ちなみに、サルトルが出した答え ※主観による引用です

 「頼りになる永遠の価値も基準もない」

 「自由は人間にとって運命なんだ」

 ヨースタイン・ゴルデル ソフィーの世界 哲学者からの不思議な手紙 NHK出版 2002年4月1日第87刷 581頁と582頁


6.備考
①ソフィーの世界と併せて以下の本を読むと面白いかもです。

 その悩み、哲学者がすでに答えを出しています 

 小林昌平 2018年7月6日第4刷 文響社

②ソフィーの世界の小説としての特徴で、中盤の「バークリ」という章で哲学史とファンタジーが混在する物語が始まり、全体としてここから変調します。

③あらすじや解説をしているサイトを検索してみましたが、私好みのサイトは見つけられませんでした。本書の目次を見ると、ほぼ哲学者別に章立てされているので、興味がある哲学者から読んでみるのも良いと思います。

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