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がんと『生活の変化』

「がん」になると、今までできていたことができなくなってしまったり、できてはいても時間がかかるようになったり、長時間できなくなってしまったりしてしまうことが多くあります。
ヒトは一度身についてしまった習慣を容易には変えられませんが、「がん」にあわせて生活習慣を変えた方が良いことが多いので
がんによる「生活の変化」を受け入れて、新しい習慣をつけましょうというお話しです。
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▼食事の変化
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食事は「がん」によって一番影響を受ける部分だと思います。
「がん」には基本的に食事制限は必要ない場合が多いですが、制限はなくても、治療や症状によって色々な制限が勝手にできてしまうことが多いです。
「胃がん」で手術を受けた方は、「量」が以前の半分程度になってしまうことも多いです。1度に摂取できる量が少なくなってしまうため、1日5回くらいにわけて少量ずつ食べましょうという指導をされたりします。
食事の形態にも注意が必要な場合があります。特に腸のどこかが狭くなってしまったり、腸閉塞のリスクがあったりする場合には、ご飯をおかゆにしたり、調理の段階で材料を細かく切ったり等の工夫が必要な場合があります。トウモロコシやキノコ、海藻類などは時々便にそのまま出てくることからわかるとおり、腸の狭い部分に引っかかってしまうかもしれません。食べてはいけないということではないのですが、量は少なめが無難です。
抗がん剤治療を行うとなれば、食欲が低下したり、味覚が変化してしまったりで、これまで好きで食べていたものも食べられなくなってしまいます。食欲がない時は「好きなもの」なら食べられるだろうと用意しがちですが、特に辛い料理や脂っこい料理は普段は好きでも食欲が落ちている時は見るのもイヤとなってしまいがち。一度そういう気持ちを味わってしまうと、食欲が回復した後もあまり積極的に食べなくなってしまったりします。つまり好きだった食べ物が好きでなくなってしまい、どんどん食べられるものがなくなってきてしまう方をよく見ますので注意が必要です。
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▼体調の変化
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手術後や抗がん剤治療中は、体力が思いのほか落ちてしまっているものです。
がん治療のため仕事を休んでしまった分を取り戻そうとしても、踏ん張りがきかず頑張りきれなかったり、その日は何とかやりきっても、なかなか疲れが抜けず翌日以降が大変になってしまったりするようです。
家事なども、以前なら十分こなせたことも、一つ一つ時間がかかるようになったり、従事できる時間が短くなってしまったり。午前中はまだ動けるけど、午後になると怠くなってしまって、一度横になり、気がつくと夜なんて事もあるようです。そんな状態で、仕事で疲れてかえってきた夫から、「何だ、全然(家事が)できてないじゃないか?」「今日の夕飯もまたできあいのものか?」とか言われてしまい、できなかった自分を責めてしまう・・・そんなお話しもチラホラ。
また、風邪をひきやすくなり、一度ひくと回復するまで時間がかかるようになります。症状も強めに出る方が多いです。だからといって、外出を極力控えましょうということではありません。外出から帰ってきたら手洗い、うがいをすれば基本的にはOKです。人混みに行く場合にはマスクをしていた方が無難です。温泉は特別な理由がない限り、はいってもらっても大丈夫でしょう。
運動は疲れすぎない範囲で行った方がよいです。がん再発予防効果や抗がん剤治療の副作用軽減効果がよく知られていますので、オススメです。
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▼気持ちの変化
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「がん」と診断されて、不安になったり、眠れなくなってしまったりするのは、ある意味当然のことです。多くの方は時間の経過とともに少しずつ軽減してきて、2週間ほど経つと日常生活に支障がないレベルに回復するとされていますので、まずは焦らず自分の気持ちが鎮まるのを待つことも重要だと思います。
とはいえ「がん」であることはその後も度々自身を苦しめます。
テレビ番組を見ていても楽しめなくなってしまったり、本を読んでも頭に入ってこない感じになったりして、気がつけば「がん」のこと、「将来」のことばかり考えてしまっている自分に気がつくことが増えてしまいがち。
友人と会ったら気分が晴れるかと思って会ってはみたものの、身体を気遣われたり、心配されたりして、かえって落ち込んでしまう事もあるようです。
今まで明るく見えていた世界が、ひどくくすんだ色にしか見えなくなってしまう・・・
そのような時は「がん」だから仕方がないとあきらめず、是非我々医療者に相談していただきたいです。例え担当医(がん治療医)で対応が難しくても、病院には臨床心理士やこのようなことを専門に扱う看護師がいることが多いので、絶対に良い方向に進みます。
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▼家族の変化
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患者さんの一番近くにいる家族が変化しないわけはありません。というか、患者さんよりも変化が著しい家族の方もいらっしゃいます。
私が何とかしなければという責任感や患者さんを大切にしたいという思いから、あれやこれやと患者さんの生活に口を出してしまったりしてしまいがちです。
「もっと食べないと!」「少しでも身体を動かしましょう!」「がんばれ!がんばれ!」
診察室では、「私が言っても聞いてくれないから、先生からももっと食べるように言ってください。食べなきゃ治療できなくなるって!」と、こちらまでお鉢が回ってくることもしばしば。
すんなりと応えられたら何の問題もないわけですが、「がん」の影響でできないから言われてしまうわけで・・・
「家族があんなに応援してくれているのにそれに応えられない自分はダメだ」と、かえって患者さんが落ち込む原因になってしまうことも多いようです。
患者さん本人や周囲の人は変わりたくなくても変わってしまう現実があり、そのような中で一番近くにいるご家族まで変わってしまうと患者さんの居場所がなくなってしまうかもしれません。ですので、ご家族はできるだけ変化せず、これまでと同じように患者さんに接するのが一番良いように思います。
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▼まとめ
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「オレは『がん』になっても、一切そういうのとは無縁だ!何にも変わらずに生活できている!」という方は、それでも少し立ち止まって考えてほしいと思います。
何を考えるかというと、「そもそもこれまでの生活習慣の影響で『がん』になってしまったのではないだろうか?」ということです。
生活習慣と「がん」は密接に関連します。
食事しかり、アルコールやタバコしかり、運動不足しかりです。
折角がんを手術したのに、これまでと同じ生活習慣に戻ってしまえば、またがんが出てきてしまうかもしれません。
そうならないためにも、改めるべき習慣は改めましょう


今回も最後までお読みいただきありがとうございました。
また次回もどうぞよろしくお願いいたします。


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