歯食いしばって生きる
私には食いしばりの癖がある。
#ドクターに言われた衝撃的な言葉
歯が痛い気がしたので、歯科へ行った。検査したところ、痛みの正体は親知らずだった。私の親知らずは横倒しに生えており、放置すると親知らずが健康な歯を吸収してダメにしてしまうということで、抜くことにした。親知らずよ、お前にはここで消えてもらう。光栄に思え、お前の屍は8020運動の礎となるのだ。
後日歯科へ行くと、親知らずよりも深刻な問題が見つかった。
ドクター「氷雨さん、歯の削れ方が50代の人のそれだよ。犬歯なんて、削れ過ぎてなくなっちゃってるよ。(鏡を見ながら)ほらこれ見て、この歯。これ犬歯。平らになってるでしょ。削れちゃったのよ。」
ええ!?
私はまだ20代なんだが!?50代ってなに!確かに犬歯ないなーとは思っていたが、遺伝的にないタイプの人間なのかな、なんて楽観的に考えていたよ!というか何でそんなにすり減ってるの!?
原因は食いしばりだった。言われてみれば、私はよく歯を食いしばっていた。今も、気づいたら歯を食いしばりながら書いていた。先生からは「あまり食いしばらないようにね」と言われたのだが、私も好きで食いしばっているわけじゃないんですよ。できるなら、とっくに辞めてます。
いつ歯を食いしばっているのか
それよりも衝撃的だったことがある。
それは、どうやら私は歯を食いしばって生きてきたらしいということだ。
それも、約20年間で50年分が削れるくらいに食いしばって。いったい今までの人生のどこに歯を食いしばるようなことがあっただろうか。なぜ私は30年分も多く削れてしまうまで、いや30年分多く削れてしまってもなお、歯を食いしばり続けているのだろうか。
私は特別何か頑張っているわけではない。ありがたいことに、残業は少なめだ。noteだって毎日投稿していない。世間には私より残業している人が山ほどいるだろう。noteだって、100日以上毎日投稿している人もいる。それなのに、私は一体いつ50年分の歯を食いしばったのだろう。
私は人よりも、密度の薄い時間を過ごしてきたのかもしれない。
ん?
なぜ私は、自分と人の頑張り具合を比べているんだ?体力も、キャパシティも、趣味嗜好も違うのに、どうやって比べているんだ?他人に比べて自分が頑張っていなかったら、私は頑張っていないのか?
ナンセンスなこと
親知らずを抜くとき、骨を削って歯茎を切った。術後は、顔の形が元に戻らないんじゃないかというほど激しく腫れた。水を飲むだけで傷口が刺すようにしみた。腫れと痛みで食事がとれず、口内炎が同時に3つできた。
当時、私は相当頑張って痛みに耐えていたと思う。でもそれは別に誰かと比べて頑張っていたのではない。絶対的に頑張っていた。私が頑張ったといえば、それは頑張ったのだ。
これと同じだ。自分の大変さは、自分にしかわからない。だから、自分の頑張りと他人の頑張りを比較することはできないはずだろう。これを始めると、食いしばりによって失われた30年について考えているうちに、40年目を無駄にする。まるで日本経済のように。だから、そんなナンセンスなことをやるな。誰が何と言おうと、私は今まで歯を食いしばって生きてきたのだ。
30年分の歯はどこへ消えたのか。
それは、頑張って生きてきた20年間の中に。
歯食いしばって生きてきたんだなあ。私はえらいなあ。
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