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『からだの美』

先日行った石堂書店で買わずにはいられなかった一冊。『からだの美』小川洋子著(文藝春秋)タイトルと帯の言葉で、牡牛座っぽい本だな…と惹かれ一晩で読み終えてしまいました。

章は
「外野手の肩」にはじまって
「棋士の中指」
「ゴリラの背中」
「バレリーナの爪先」……

羅列していくだけで悦に入ってしまいそう。
こらえて後半が
「ハードル選手の足の裏」
「レース編みをする人の指先」
「赤ん坊の握りこぶし」などなど。

気になって調べてみると
小川洋子さんは牡羊座生まれで
特に牡牛座に天体お持ちではなかったのですが牡牛座を太陽星座に持つわたしにとって、
いやまあともかく個人的趣味として、そこ!という共感ポイントや感動発見が詰まったエッセイ集でした。
気に入りの触感のものをずーっとすりすりしているような読書感・・・って、あえて牡牛座っぽく言ってみた。

表紙の作品は「すくう、すくう、すくう」中谷ミチコさん

さて。
16篇の随筆はどれも、肉体がなしえた業(わざ)を、空間にそのエネルギーごと閉じ込めて言語を通して眺め味わい尽くして、ふっとまた時空間に解き放ち、敬意をもって身を引くように章をとじていきます。

その眺め得た一瞬は確かに、誰かの肩や指、声やふくらはぎが作り出しているのだけど、その「物質」たちをそうさせた「意識」が実在していた。とはいえそれがほとんど無意識だからこそ、宇宙的な、神的な、いいかえれば野性的な、混じりけのない「真実」や「力」が、目に見える形になって現れている。
著者はそこを確実に見ているから、文を読みながら思わず息をひそめてしまう読者体験。

矛盾と調和という言葉を、著者は何度かくりかえし書いていて、なるほどなあと思わされます。特にこの、文中での美しさの定義(まるで、そう)は、実際ほんとうに、そうと思わされます。

~理屈の上では相反するのものを対立させず、調和させるからこそ美しい~

『からだの美「ハードル選手の足の裏」』より

本来、五感を通して実感するということは、きわめて現実的に、目に見えない領域のことも体感するということなんだと思います。

目に見える/見えないという境界をいとわないともいえるし。所有できる/できないすらナンセンス。
手に触れてもいい、香るのもいい、でも目に焼き付けて、記憶するのは、表面的なものだけではなくて、全体としての佇まい。
さらにはそれを内に取り込むように体感するときに、胸の中に膨らむあたらしい感覚は記憶すら刺激して懐かしさすら発動させるかもしれない。そのとき、時間の概念はもう、飛びこえてしまいます。

その瞬間の思い出として、何か、お土産的なものを持ち帰れるのは確かに嬉しいけれども、五感というからには、豊かさというからには、ここにあるものを支える無きものの実在と、ここにあると定義されにくいものが、真実、在るのだということを見せつける。これこそが牡牛座の分野なんだと、感じさせられ。

牡牛座は五感や所有、豊かさをテーマにするサインと言われます。
そして先日から来年の5月末まで発展と拡大の星である木星が牡牛座に位置することで、太陽星座が何であれ、すべての人にとって今年一年のテーマとして、牡牛座的なものが何か一つひっかかってきますよ、そこに何かきっかけになるものがあることでしょう、というように言われたりしています。

スポーツに限らず、美しい何かが現れ出る時、たいてい矛盾が調和に置き換わっている。小説家や詩人の一文に、言葉にできない深い心の内を読み取るように、音楽家の演奏に、鳴っていないはずの音の響きまで聴き取るように、観客たちはハードル選手の走りに、極限のスピードを感じ取っている。

『からだの美「ハードル選手の足の裏」』より

レースの魅力は、編み目に光が透けて見えるところにあると思う。(略)自分の目に映っているのが、糸そのものなのか、編み目が作り出す空洞なのか、分からなくなってくる。自分はそこにはないはずの、空洞を見て綺麗だと思っているのだ、と気づく時、レースの持つ奥深さに魅了される。

『からだの美「レース編みをする人の指先」』より

こんなにもさまざまな個性を持った殻が、自然の片隅で地味に暮らしている陸貝から生まれ出ていること。しかも外の世界にある材料に頼るのではなく、自分の体に元々授けられたものだけを使って、独自の美を作り出していること。もうそれだけで、尊敬に値する。(略)芸術は別に人間だけの特権ではない。私たちが生きている世界のいたるところに、誰に評価されることも求めないまま、ひっそりと美を創造しているものたちがいる。

『からだの美「カタツムリの殻」』より


一周年を迎えたサニーデイズキッチンのスペースをお借りして、予約制の占星術セッション「ほしのね。」を始めることになりました。

営業日のうち平日(水木金)10:45~11:45~12:45いずれかでご希望日と時間枠を第三希望まで添えてお申し込みください。

西洋占星術「ほしのね。」では・・・

誕生のデータからその人の性質や傾向を読み取ります。空の星々の声からどんなメッセージが聞こえるか一緒に耳を澄ましてみませんか?

星詠みはこんな風に使えます・・・

・葛藤や悩みがどんな性質からくるものなのか
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於:サニーデイズキッチン
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(1時間のセッション終了後、お召し上がり頂けるランチ代含)
水木金の10:45~/11:45~/12:45~

お名前、誕生年月日(場所、時間(正確に分からなければ「不明」と)も)、当日連絡のつく電話番号、希望日時を第3希望まで添えご予約下さい
相性やお子さんの性質などを見る場合はその方の出生情報も。

星を詠むのは・・・
大川久乃
絵本童話作家、詩人。幼少の頃から創作を続け作家になる。日々と活動を支える大事な師としてヨガに出会い心身を見つめることと対話することを大事にしている。ヨガの先生から学び始めた西洋占星術はどこかおはなし作りにも通じ、「生き方」の実践として星詠みも開始した。

遠方の方や別日程・時間枠でのご依頼はこちらでも受け付けています

ほしのね。 | ほんとね。 (themedia.jp)



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