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ひさのメモ④実態や関係を知る:観察研究(調査的研究)の基本的方法論

リハビリテーション・作業療法領域において,対象者の実態や変数間の関係性を知ることを目的とした研究は良く行われる.この時の研究デザインは観察研究(調査的研究)などと呼ばれる.

観察研究とは,介入を行わず対象者の通常の生活を調査・観察する研究をいう.さらに,観察研究は記述的研究(症例報告)と分析的研究(生態学的研究,横断研究,症例対照研究,コホート研究)に分類される.

本書では,観察研究の細分類である分析的研究に該当する研究デザインを取り扱い,サンプリングと主な統計解析手法となる記述統計,分割表検定,リスク比とオッズ比,相関係数と回帰分析などについて以下の構成でまとめる.記述的研究に該当する症例報告(事例報告)については別に解説する.

1.観察研究(調査的研究)とは
2.観察研究(調査的研究)の分類
(1)研究スタイルによる分類
(2)時系列による分類
(3)疫学研究による分類
3.サンプルサイズ(標本の大きさ)の決め方
(1)母集団の数からサンプルサイズを決める方法
(2)信頼水準や標本誤差の数値からサンプルサイズを決める方法
(3)行動観察のサンプリング
4.記述統計と分割表検定
(1)記述統計
(2)名義尺度の仮説検定と効果量
5.相関係数の検定と効果量
(1)相関係数の検定
(2)相関係数検定の選択手順
(3)散布図の作成
(4)相関の強さ
(5)正の相関と負の相関
(6)相関係数の信頼区間
(7)相関係数検定の効果量
(8)相関研究とサンプルサイズ
(9)評価尺度の妥当性と信頼性
6.回帰分析と効果量
(1)決定係数
(2)標準偏回帰係数(標準化回帰係数)
(3)回帰分析の結果の見かたと回帰式の作り方
(4)直線回帰と曲線回帰
(5)曲線回帰の種類
(6)回帰分析とサンプルサイズ
7.観察研究(調査的研究)の批判的吟味と論文の書き方
(1)サーベイ
(2)コホート研究
(3)ケース・コントロール研究
(4)STROBE声明
8.研究例の紹介


1.観察研究(調査的研究)とは
観察研究とは,対象の傾向と能力の状態,集団や組織の状態などを調べ,得た情報を記述する研究であり,実態調査や基準値研究(例:健常者の握力分布)などが該当する.身体測定や体力テストなどをイメージしてもらえればわかりやすいと思う.非実験的研究,仮説形成型研究などとも呼ばれる.

リサーチ・クエスチョンの例をあげると「高齢者施設の畳空間ではどのような活動が行われているのか?」のように「How・What kind of A?」と関係代名詞を使った英文で表現できるのでタイプⅡのリサーチ・クエスチョンが該当する.

また, 2つ以上の事象・現象が同時に起こる程度やその関係の仕方を検証する研究も観察研究に該当する.

この場合のリサーチ・クエスチョンの例をあげると「Barthel IndexとFIMは相関があるのか?」などである.これは「A = B?」と数学記号であらわすことができるので,タイプⅠのリサーチ・クエスチョンが該当する.

メディカル・ヘルスケア領域では,例にあげたように評価スケール得点と他の評価スケール得点に関連があるのかを調べる研究(相関研究ともいう)は良く行われており,これは評価尺度の開発において併存的妥当性を検証するときにも用いられる研究デザインである.

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