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希望の風が吹いている ~ 「天狼星(シリウス)に」 さだまさし

夜行列車

夜行列車、、、、深夜、目的地へと人を運ぶ遠距離交通網。この列車を舞台にした作品は数多いですね。同じ夜行ならバスもありますが、列車とは空間の広さが違う。空間=舞台と捉えるなら、それは広いほうが物語の舞台としてはよりふさわしい。

この夜行列車、高度経済成長を遂げた日本では、東京から彼方へと向かう路線で描かれることが多い。中央から地方へ。現在の居住地から地元へ、故郷へと。といった風に、その移動の目的は種々あれど、そこにドラマやそれぞれのストーリがあることは想像に難くなく。

それぞれの物語

「津軽海峡冬景色」は、上野発の夜行列車で北へ帰ってきたわけですから。。。それも私は1人で津軽海峡を渡る連絡船に乗り込むわけです。1人で。背景の物語が浮かんできますよね。

さだまさしさんも、若かりし頃、長崎へ向かう列車に乗り込んだことがあったそうですね。この時は、辛い帰郷だったようです。バイオリンの夢やぶれだったかな。たしか。

でも、幸せな帰郷もあるはずですよね。でも「北の国から」の「帰郷」といい、どことなく、辛い悲しいイメージがつきまとっていますね。

たぶんこれは、夜行列車は、夜に出発するからのような気もします。終電間近の都会から、一気に闇の世界に、、。

天狼星(シリウス)に

さて、シリウスというのは冬の夜空にひときわ大きく輝く星。天狼星とも書きます。「夜は千の目を持つ」ではないですが、闇になる時間の早い、闇の時間の長い夜には、星の輝きは当たりを照らすと同時に希望の象徴ではなかったでしょうか。

そして、人が寝静まった闇の中を、故郷へとひた走る夜行列車の車窓から漏れる灯も、闇に浮かぶ一筋の明かりとなって、希望の象徴となると捉えることもできそうです。

この曲の歌詞を読むと、小津安二郎の「晩春」を思わせますが、お父さんよりも愛する人ができてしまったという娘は愛する人の住む故郷へと夜行列車で1人向かう。幸せな旅路ではありますが、おそらく反対を押し切って出てきたのか、お父さんのことが気がかりだったりする。

彼女は、シリウスの光と、闇を駆ける一筋の光に守られて、きっと幸せな生活を手にするはず。

この曲を収録したアルバムは『夢の吹く頃』というタイトル。込められたのは、「誰もが自分を後押ししてくれる希望の風が吹くのを待っている」という思い。

この曲の主人公である彼女には、希望を持った大いなる風が吹いてきている。そんな風に思います。


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